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私が魔王になる前に  作者: よしや
第一章
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勇者

お願いします、と頭を下げて、そのまま師匠の返事を待つ。長い時間続く沈黙に、私は焦りはじめた。うう、我ながら馬鹿なことをしでかしたとか、誰がそんな頼み聞くか馬鹿って言われたらどうしようとか。そんな考えが頭をグルグル回り始めたころ。


「お前、魔王になるかもしれないのか?」


 と、師匠とは違う声が聞こえたので慌てて頭を上げると、テッドとウィルもそこにいた。

 ぎゃああぁぁぁぁあ、という叫びは幸い声にならなかったけど―――やってしまった。師匠しか目にはいってなかった。テッドはポカンとした顔、ウィルは少し首を傾げて、師匠は呆れた顔でこちらを見ている。どうしよう、どうやって誤魔化そう。この子たちも危険に巻き込むかもしれない。私苛められるかもしれない。

 正座をしたままわたわたしていると、テッドの元気な声が聞こえた。


「大丈夫。もしも魔王になったとしても、その前に俺が勇者になってお前を倒すから!」


 にいーっと笑って胸を張った。

 すごい。事情もよく知らずにそんなことが言えるなあ。呆れているんじゃないよ。ほぼ初対面の人のことを信じて子供ってすごいな。


「だからお前も魔王にならないように頑張れ!」


 やれやれとため息を吐きながら、師匠もテッドの言葉をフォローする。


「ま、そういうことだ。一応、万が一の事は俺も覚悟しておくが。努力は必要だな」


 願いが聞き入れられてよかった。緊張が解け、涙がにじんで視界が霞む。師匠はぽんぽんと私の頭を叩いた。


「良かったな?」


 師匠の言葉にほっとしてうん、うんと何度も頷いた。

 その後はテッドが大興奮してはしゃいでいた。


「師匠は魔王を倒したことあるのか!すげえな、師匠!」

「ふふーん。どうだすげぇだろー」

「俺が勇者だからウィルは魔法使いなー」

「嫌だ、僕も勇者が良い」


 どちらが勇者になるかでもめて、喧嘩が始まってしまった。慌てて師匠が声を懸ける。


「おい、そろそろ稽古始めんぞ」

「うるせー師匠…じゃなくて魔王!ここであったが百年目!」

「テッド、意味わかって言ってるの?」


 あ、うまい、師匠。ごっこ遊びがそのまま稽古に入ってる。柔道と空手がごちゃ混ぜになっている感じになっているけれど。賑やかだなあ。元気だなあ。体力が有り余っている感じだ。私は隅の方に座ってその様子をみていた。

 ひとしきり動き回って休憩中―――


「テッド、ウィル、アリシアが魔王になるかもしれないってのは絶対誰にも言うなよ。男同士の約束だ」


 ふと真面目な顔をして師匠が二人に念を押した。子供って簡単に話ちゃうことよくあるからね。事態を悪化することへの歯止めは必要だろう。二人は「おうっ!」「はいっ!」と元気に返事をした。

 ―――何だか視線を感じる。テッドが私の顔をじーっと見ていた。え、何だろ?何か私の顔についている?


「っていうかお前誰だ?」

「「「いまさら?」」」


 私、師匠、ウィルの声が重なった。ウィルがため息を吐いて私の紹介をする。


「昨日話しただろ?ばば様の孫娘のアリシアだよ」

「そっか!俺はテッド。よろしくな」

「うん、よろしくね」


 私がそう言うと、テッドは手を差し出してきた。がっちりと握手を交わす。おお、なんかこれぞ友情って感じじゃない?

 


 稽古の終わる頃、師匠は私に話があると言い、テッドとウィルが帰った後。


「ロベルト!アリシアを見んかったかっっ?」


 ばば様が血相を変えて飛び込んできた。あ、村へ来るっていうの忘れてた。

面倒見のいい師匠。

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