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私が魔王になる前に  作者: よしや
第一章
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秘密

「ご主人様ーどこに行かれるんですかーもう二度と置いて行かれるのは嫌ですよー前のご主人様もそうやっていなくなってしまったのですよー」


 今日は道場に行かなくてはならないのに、出掛けにリッカがまとわりついてきた。半泣きになってびゅんびゅん飛び回るので玄関から出られない。ばば様がちょっぴりうんざりした顔でため息をついた。


「アリシア、リッカも連れて行って皆に紹介した方が良いと思うが……」

「ほらほらばば様もこう言っていることですしー意地悪しないで連れて行ってくださいよー」

「別に意地悪しているわけじゃないけど、はあ、わかった。外は寒いからここに潜って黙ってて?」

「やったー」


 首に巻いていたマフラーを少したゆませると、リッカがそこへ潜りこんだ。


「これから行くところは一応集会場なんだけど、道場になっていてね。勉強や武術の稽古や魔法の授業でいろいろ教わっているの」

「学校ですかー?」

「うーん、生徒が私を含めて三人しかいないし授業は結構ゆるい感じだし。学校と言うよりは教室かな」


 歩きながら道場の事について話す。途中で村の人に在ったらどうしようとか思っていたが幸いにして誰とも会う事は無かった。村の中の事や結界が張られることなどを説明しながらテッドに案内された時のことを思い出す。あれから三年半が経つのか。私が説明する側に回るとは思わなかった。



「ついたよリッカ。ちょっと待っててね」


 引き戸を開けるとすでに授業が始まっていた。今日はみんなそろっている。


「遅かったな、アリシア。珍しいこともあるもんだ」

「ごめんなさい、ちょっと事情があって……」


 そう言ってマフラーを外すとリッカが勢いよく出てきた。


「ここが道場ですかーご主人様ー不思議な床ですねー草で編んでいるんですか―広くて明るくて暖かいですーこっちにはキッチンやトイレもあるんですねー」


 建物の中をあっちこっち飛び回って独り言を言いながら調査をしている。満足したのか、戻ってきて皆を見て叫び始めた。


「キャー思ったよりイケメンばかりじゃないですかー稽古とか言うからノームやドワーフみたいなごつくてぶっ細工なのを想像してたのに―女の子がご主人様一人って逆ハー状態ではないですかー流石ご主人様ですー前のご主人様もハーレム状態でしたー」


 村の中に同じ年頃の女の子がいなかっただけで、狙ってやったわけではない。周りからはそんなふうに見えるのかとリッカの言葉に少し落ち込んだ。そして思わぬところで出てきたご先祖様の情報。初代国王になるほどの人だ、きっと人柄も魅力的だったんだろう。


「アリシア、これ何だ?」

「妖精だよ。雪の中で会ったからリッカって名前を付けたの」


 テッドに聞かれて皆に説明する。

 ひゅんひゅん飛び回っていたリッカは急に動きを止めて言った。


「ご主人様は王女様なのに頭が高いですわ―態度を改めなさーい下郎どもー」

「……王女?アリシアが?」


 私が止める間もなくテッドにばれた。師匠もエルンストもウィルもやれやれと肩をすくめた。見ていないで助けてほしいけれど、誰も動こうとはしない。


「黙っていてごめんねテッド。でも生まれてすぐにばば様に預けられたからお城にも行ったことないんだよ」

「皆は知っていたのか?」

「師匠とエルンストは最初から知っていたよ。ウィルにはエルンストがばらした」

「会ったばかりのリッカには言うのに俺には言わないのか?アリシア」


 まずい、テッドが怒っている。……怒るのも無理はない。今まで言わなかったのは本当に申し訳ないけれどなんていって説明したらいいのかな


「私の得意な魔法は鑑定と探索なんですよーご主人様が言わなくても私は知っていましたー女が隠そうとする秘密を知りたがるなんてやっぱりお子様ですねーあなたを守るために決まってるじゃないですかー笑って許すのが大人の男ってものですよーあなたこそご主人様を信じていないんじゃないですかー?」


 自分の顔の前で静止しながら物凄い勢いでわめいているリッカを見て、テッドは目を白黒させている。

―――ふと、言い訳を考えてしまっている自分に嫌気が射した。間を置いたことで自分の本心が分かる。


「王女ではなくてアリシアとして接したかったんだよ。本当に自分のためだ。だからウィルにも言わなかった。途中でばれたけど」


 リンカのお蔭で誤魔化すことなく本音がすんなり出てきた。私はテッドに頭を下げて「ごめんなさい」と心の底から謝る。


「テッドの気持ちなんて考えていなかった。王女って言っても本当に血筋だけで自信も自覚も無いから、出来る限りは黙っておきたかったの」

「……今まで通りでいいんだよな?」

「うん、ありがとう」



 皆の紹介をしてひと段落ついたので授業が始まる。リッカは机の上にちょこんと座って意外にも大人しく授業を受けていた。ウィルは普通に授業を受けていたがテッドは気になるようでちらちらとリッカを見ている。それに気づいたリッカは、エルンストの方へ飛んで行って話をしている。あんなに小さいのに大人の対応ができる子なんだ。

 でも、エルンストの方に行ったのが心配で今度は私の方がよそ見をしてしまった。


「アーリーシーアー?」

「ごめんなさい、エルンストに変な事されていないかリッカが心配で……」


 師匠に怒られてしまった。


「変な事とは失敬な。アリシア、名前を付けて主従関係を結んだ時にしっかり契約の内容を聞かなかったでしょう?」

「えっ?契約?」

「馬鹿かっ、アリシア。妖精との契約は場合によっては命にかかわる事だぞ、リッカがタチの悪い妖精だったらどうするんだ?」


 師匠の言葉に血の気が引いていく。普通に名前を付けただけだと思ったのに。リッカは笑いながら手を振って否定する。


「大したことではないですよー魔力をちょぴり頂くとかそんな感じなんで―私が必要としているのは豊富な魔力をお持ちのご主人様には本当に微々たる量なんですー巨大な湖のうちの一滴位なものなんですー」

「魔力と引き換えに、鑑定と探査の魔法を使ってくれるそうですよ。アリシアにとっては願ってもいない契約だと思います。」

「はあ、なんだ心配して損した。いい加減授業始めるぞ」


 やっと授業が再開された。


 ―――帰り道、私はリッカに注意しておく。


「いい?リッカ、他の村の人たちにはドラゴンの事や魔王の事、王女って事は絶対内緒だからね?」

「わかりましたーごめんなさーい」

エルンストと反発すると思っていたのに意外に気が合いそうなリッカ。

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