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私が魔王になる前に  作者: よしや
第一章
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雪の中の出会い

一挙更新二話目。

 毎年少しずつ雪の降る量が増えている気がする。

 昨日は家の近くに小さなかまくらと雪だるまを作った。どちらも高さは三十センチほどで、我ながらかわいく出来たと思う。今日は雪うさぎを作りたいな、と外に出る。


 雪だるまとかまくらがつぶれていないか確認すると、かまくらの中に何かいた。薄い黄緑色の髪に袖が膨らんでいる緑色のワンピース。背中にはウスバカゲロウのような羽がついている。

 ―――妖精だ!でも色からして雪の妖精だとは思えない。こんなところにいて寒くないのかな。「もしもーし」と声を掛けながら指でツンツン突ついてみるが反応はない。持ち上げて家に手のひらに乗せ、連れて帰ることにした。


「ばば様!妖精拾った。あっためた方が良いよね?」

「どれ、みせてみい。ふむ、どこから見ても妖精じゃな。取り敢えず暖房の近くへ……タオルでも掛けておくかの」


 妖精サイズの蒲団なんてないのでバスケットの中にタオルを敷いて妖精を寝かせ、上からタオルを掛けて暖房の近くに置いておく。しばらく眺めていたけれどまったく動かない。


「アリシア、そろそろおやつの時間じゃ」


 今日のおやつは甘い匂いのするアップルパイを、紅茶と一緒に頂くことにした。「妖精さん大丈夫かな?」と話しながら食べていると、タオルがもぞもぞと動き始めた。甘い匂いにつられるように鼻をクンクンとさせバスケットからひゅーと出てテーブルの上にちょこんと座る。妖精がアップルパイを欲しそうにじーっと見ているので小さめに切り分けて目の前に置くとすごい勢いで食べ始めた。

 食べ終わると物凄い勢いで話し始めるが何を言っているか分からない。


「ごめん、何言っているか分からないよ」


 妖精はきょとんとするがあーアーあーと声を出し「これならわかる?」と日本語を話し始めた。


「うん、わかるよ!」

「良かった!はあ~生き返ったー普通に春の森の中にいたはずなのに急に雪の中にいたんだものびっくりしたわよーすんごく強そーな雪だるまと雪で出来たおうちを見つけて寒さをしのいでいたんだけどうっかり眠っちゃって危うく死にかけるところだったわーあなたが助けてくれたの?ありがとうねー」


 物凄い早口で今度はこちらがきょとんとする番だった。


「どうやら転移してきたようじゃの。ここ最近は無いと思っておったが……」


 ばば様が妖精にこの世界について簡単な説明をする。


「召喚には慣れているから大丈夫なのーでも木に召喚されたってのは初めてだわーそうなると召喚主に名前を付けてもらうってのは無理そうねーこういう場合は……」


 妖精は少し考えた後、私に言った。


「助けてくれたあなたが責任を持って名前を付けてーそうすればあなたがご主人様よー」

「な、名前?ご主人様?」


 何を隠そう、前世でゲームの主人公に名前を付ける時はたっぷり時間をかけてしまうタイプである。新しいゲームに心をときめかせながらプレイし始めるものの、名前が決まらなくて二日間放置なんてざらにあった。

 妖精は目をキラキラさせながら私の言葉を待っている。むう、責任重大だな。アップルパイが目に留まった……りんご?紅玉?フジ?髪が黄緑で服が緑……ミント?フィーユ?うぬぬぬ。


「何か特定の植物の妖精だったりする?」

「そういうのはないよー」


 ヒントになりそうな答えではなかった。ふと窓の外を見ると雪がまた降り始めていた。……安直かもしれないけれど似合いそうな名前かな。


「リッカ、と言うのはどうかな?」

「ああ、なるほど、雪の異名じゃの」


 ばば様の説明を受けて妖精の顔がぱっと輝いた。部屋の中をひゅんひゅん飛びながら騒がしいくらいによくしゃべる。


「素晴らしいですわーまさに雪の中での出会いを象徴した名前ですねーとても気に入りましたわー今日から私はリッカですー」


 騒がしいのは相変わらずだけど、名前を付けた途端に敬語になった。ひとしきり飛び回った後にテーブルの上へ戻ってきて正座をして言う。


「よろしくお願いしますご主人様。よろしければお名前をお教え願えますか。差支えなければご主人様の種族も……」

「私の名前はアリシアだよ。先祖にドラゴンがいるの。よく分かったね?」

「私の得意魔法は探索や鑑定なんですよー皆から馬鹿にされていましたけどー一応種族を聞いたのは人型になれるドラゴンて私の世界では絶滅したはずなんでー」

「ちょっ……ちょっと待ってて」


 照れながら説明するリッカをおいて私は慌てて階段を駆け上がり、夏の夜にもらったペンダントを引っ張り出して一階に戻った。


「このペンダントに見覚えある?」


 リッカはよろよろとペンダントに近づいて、中央の青い石を愛おしそうに撫でたかと思うと泣きながらすがりついてしまう。


「……前の…急にいなくなったご主人様が持っていたものです……っどうしてここにあるんですかぁっ?」


 いきなり立ち上がり、怒り狂ったリッカの周りにプラズマとノイズが走っている。今までエルンストに教わったどの魔法とも違う気がして、私は恐怖を覚えた。このままでは、ばば様を巻き込んでしまうかもしれない。


「多分その人にもらったのっ。私のご先祖様だよ。話を聞いて、リッカっ」


 ふしゅるるるとプラズマとノイズを引っ込めるとちょこんと座ってキッと私をにらんだ。どうやら話を聞いてくれるようだ。ばば様はよく分からんがすごい魔法じゃったのうと胸をなでおろした。

 ご先祖の事、王家の事、私の身の上、夢での出来事を包み隠さず話した。話している途中でばば様はご飯の支度をし始める。


「ごめんなさい。奪ったり殺したりしたのかと勘違いをしました。でも、前のご主人様がいなくなったのはひと月ほど前なんですよ。」

「別の世界とは時間軸がずれているみたい。転移した人たちの話で分かったことなんだけど」


 ばば様も転移者なんだよと話すとそうなんですか……と力なく笑うリッカ。しょんぼりしながらペンダントの宝石を撫でていたが、何かを決意したような顔で私と向かい合った。


「きっと前のご主人様が、引き合わせてくれたんだと思います。改めて、よろしくお願いします。ご主人様」




「……リッカはどんなものが食べられるの?」

「なんでも食べますよーお菓子もー野菜もーお肉もーお魚もー虫もー」

「虫は私の前では絶対に食べないでね?」

「わしの前でも食べんでくれ」

「はーいりょーかーいでーす」


 ばば様と二人の暮らしが三人に増えてとっても賑やかになった。


リッカの口調は語尾伸ばしの息継ぎなしです。

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