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私が魔王になる前に  作者: よしや
第一章
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「アリシアは最初に魔法を使った時のことがトラウマになっていますね」

「そ、そうかも……」


 小さな水の球を出そうとしてスコールになったときのことを思い出す。もしもあれが火だったら、風だったら、雷だったらと思うと時間が経った今でも体が震えるほどだ。


「それに加えて魔王になることへの恐怖感で無意識に魔力を抑え込んでしまう状態になってしまっているようです」

「そうなの?」


 私の中では魔王には魔族の王、悪魔の王、魔法のスペシャリストと言うイメージがある。魔法を自由自在に操れて勇者たちを翻弄するのだ。一対多数で戦って瀕死に追い込むほどの使い手。


「花火でも覚えますか?これならみんなを楽しませる魔法として、誰かに狼煙として知らせる魔法になります」

「そうだね……もう少し後の時期なら雪だるま造るのも良いかな」


 苦手なものを楽しめるように替えるのは勉強にも使える手だ。誰かを傷つけるよりも誰かを笑顔にする魔法から使えるようになりたい。エルンストはメガネをくいっと上げながら魔法の説明を始めた。


「無詠唱は系統がつけられない純粋な魔法なんですよ。創世の木の召喚に最も近い魔法と言われています。

水や火、雷や土、風や光や闇を召喚することが『魔法』ですからね」

「なるほど……木が呪文唱えることなんてないものね 」

「全てはイメージです。まず最初は魔法を楽しんでください」





 今年は去年よりも雪の量が多い。師匠によると段々気温が低下しているような気がするとのことだ。もしかして氷河期突入かな?


「というわけで今日の稽古は雪合戦な」


 広い田んぼに積もった一面の雪を目の前にして、物凄くいい笑顔で師匠が言う。齢三百以上生きているダークエルフでも子供心に戻るほど、この風景はわくわくするね。

 エルンストはいない。最近ずっと王都に行ったきり姿が見えないでいる。寒いのが苦手みたいだから冬籠りでもしているんだろうか。


「いやっほーーーー」


 テッドが一番乗りで雪の上を転げまわった。わんこだ。ふさふさの耳やしっぽが生えていないのが残念なくらいわんこだ。真っ赤な髪が雪によく映える。苺のショートケーキみたいだ。

 私もつられて雪の中へダイブした。


「むぎゅ」


 前世は雪の少ない地方に住んでいたから、こういうのちょっと憧れていたんだよね。手加減なしに飛び込んだら結構深いところまで沈んだ。うつ伏せで飛びこんだので起き上がれなくなっている。段々息ができなくなってじたばたしていたところを誰かが服を掴んで引っ張った。


「おいアリシア、大丈夫か」


 引っ張り上げてくれたのは師匠だった。平気だと思っていたが無意識に体がこわばる。恐怖を克服したと思ったのに自分が嫌になる。ウィルが前面に着いた雪を払ってくれた。


「雪って雨みたいなものだからね。ついたままほっておくと濡れて風邪ひくよ?」

「あ、ありがとう……」




「雪合戦ならチーム分けはどうするの」

「僕アリシアと組みたい」


 師匠に聞くとウィルが珍しく自分の希望を言った。


「まてまてまてまて、ウィルとアリシアが組んだらどちらにも攻撃できなくそっちの不戦勝だろ」

「アリシアに攻撃したくない。ウィルは後が怖い」


 テッドの本音が出た。少し青ざめた顔でいやいやと首を振る。


「なんで私に攻撃できないの?」

「寒くなると結構風邪ひくだろ」


 とテッド。納得がいかない私は反論する。


「むう、それを言ったら参加すらできないよ」

「ウィルが怖いからアリシアばかり攻撃することになるのが嫌なんだ、テッドも俺も」


 師匠が言った。それはちょっと納得。まるで意味が分からないと言うように、ウィルはちょっと首を傾げている。


「じゃあ、個人戦?」

「まあそれならいいんじゃねえか」


 ウィルの提案に師匠もテッドも納得した。


「ルールは降参するまでな。じゃ、始め!」


 師匠とテッドが距離をとって雪玉を丸めはじめる。私は足元にあった雪をせっせと丸めはじめた。五つほど作ったころ。


「アリシア、見てみて」


 ウィルが呪文を唱えて雪玉を作ってみせる。

 私も真似して一つだけ作ってみた。ウィルのお手本を参考にして雪玉をイメージする。ほどほどの硬さで当たっても痛くない様にして……。


「できた!こんな感じ?」

「そうそう。アリシア、これで師匠をやっつけよう。そうすれば師匠なんて怖くなくなるよ」


 隠したつもりがウィルにはしっかり見抜かれていたみたいだ。いたずらを考えている時の笑みで、私に悪魔のようにささやいてくる。


「エルンストがいなくたってこのくらいなら大丈夫だよ、相手は師匠だし」


 私だって克服したい。このままぎくしゃくしているのは嫌だ。周りに心配だってかけてしまう。

 出来た雪玉を投げようと顔を上げたら眼前に雪玉が迫ってきていた。避けきれずにまともにぶつけられてしまう。


「遅い!そんなんじゃ稽古にならないぞ」


 ぶつけたのは師匠だった。口調は起こっているのに満面の笑顔。してやったりと言う顔に、一人だけ悩んでいるのが段々と馬鹿らしくなってくる。

 私は空中に浮かぶたくさんの雪玉を思い浮かべる。百、二百……ううん、それ以上の数を。


「ちょ、アリシア数多すぎ……」

「師匠覚悟!吹き飛べ私のトラウマ!全弾射撃準備……ってーーーー!」


 しゅぱたたたと師匠めがけてたくさんの雪玉が飛んでいく。雪の中を逃げ回る師匠。あ、転んだ。


「アリシア俺が何をし……いやしたけども!っとうわわわわ」

「あははははは」


 ウィルが隣で大笑いしている。テッドもこちらに来てみんなで一緒に笑った。

 魔法と師匠、二つのトラウマが克服できて一石二鳥。魔法って楽しい!

アリシア「やっぱり雪の魔法って言ったらこれだよね。ありのーままのー」

テッド 「アリシア、これ何だ?」

アリシア「氷のお城……のつもり……」

ウィル 「センスないね……」

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