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私が魔王になる前に  作者: よしや
第一章
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八歳

 八歳になった。

 春に小学校で言う所の二年生になった。テッドは三年生、ウィルは四年生。授業も稽古も魔法も地道にコツコツ進んでいる。


 授業――日本語と同時進行でエルフ語を学んでいる。算数では九九が始まった。授業の要綱もほとんど日本と同じだ。でもどこにどんな異世界の知識が組み込まれているかわからないから、一応受けている。転生者だけどここでは周りの目を気にして平均点をとる必要はないので楽かもしれない。

逆に日本と違っているのは理科と社会に該当する科目。生き物に関しては生態や体の仕組みよりも出会ってしまった時の対処法を学ぶことが多い気がする。そして出現場所を特定するための地理の勉強。

 この前テッドに勉強を教えてあげようとしたらウィルに止められた。学年が一つ下だし男のプライドってものがあるんだって。集団だとそういうものも学ぶことができるんだよね。前世の学校生活と同じで、一人だと多分わからなかった。


 稽古――まだウィルみたいにエルンストを気絶させることは出来ない。最近は基礎に加えて少しずつ形を覚え始めた。

 ある日道場の近くを通りかかると、リタさんが引き戸の隙間から覗き込んでいるのを見かけた。何を見ているんだろうと思って近づくと、こちらに気付いたリタさんが人差し指を口に当てた。次いで隙間を指さす。

 見て見ろってことなのかな?そーっと覗くと師匠が空手の演武の様なものを行っているのが見えた。窓から日の光が差し込む中で、素早く無駄のない、けれど流れるような動き。あまりに綺麗で二人で見とれていたら師匠に気付かれた。


「女二人そろって覗きかよ」

「な、の、覗き?」

「師匠、すごい、かっこいい!私にもできる?」


 リタさんは顔を真っ赤にしながら反論しようとしているが、何も言い返せないみたいだった。私の言葉は助け舟になっただろうか?


「そうだな、今教えている形をきっちり覚えていけばできるぞ」


 強くなりたくはなくても綺麗な動きはできるようになりたい。



 魔法――エルンストの監視下でのみ行われている。未だに水魔法だけで、水道の蛇口を少しずつ開くような魔力の出力の調整をしている。ウィルはずいぶんと先に進んでしまっていて、炎やら雷やら派手に出している。私とウィルが授業を受けている時はテッドは剣のけいこをしている。いつか空を飛べるようになったらお姫様抱っこで雲の上に連れて行ってあげよう。


 最近分かったこと――この世界の時間は普通に進んでいるけれど召喚元の世界も並行しているわけではないらしい。ばば様が召喚された少し後に戦国時代の足軽が来ていたりしたそうだ。私とばば様の時間軸がずれているのもそういう事。本来ならば、ばば様はもっと若いはずだ。


 春には遠足も行った。飛空船の中で手紙をくれたエリーゼとは文通が続いている。師匠とエルンストによる検閲が入るので、花が咲いたとか、こんな勉強をしているよとか、書いてある内容は他愛のないものだけど貴族特有の言い回しや礼儀作法などの勉強になっている。ここの住所を書くことは出来ないので隣の村の郵便局留めにしてもらってリタさんに届けてもらった。便箋もリタさんおすすめのレースやリボンやお花の描かれた可愛くてきれいな便箋だ。

 またいつか会えると良いな。


 誕生日のケーキはチーズケーキだった。切り分けた後にレモン風味のソースをかけた。風味の良く似た柑橘系の果物があるけれど、レモン自体はこの世界には無いそうだ。元いた世界と似たようなものを探し出す職人魂はすごいと思う。もう少し大きくなったら教わろうかと思っている。


 最近、調合はお休みしている。私が調合しても使ったり売ったりすることができないので材料がもったいないからだ。薬草の知識を増やすことを優先している。


 日々を大切に生きることが魔王化対策だと思っている。死ぬ覚悟なんてとっくにできているから、生きる覚悟を決めた。でもできればこのまま何事もありませんように。

 

誕生日まとめ。

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