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私が魔王になる前に  作者: よしや
第一章
13/145

稽古

 真新しい道着を着て稽古に臨んだ。気が引き締まるね。前に稽古を見た時は、勇者ごっこになってしまったから、本格的なのは初めてだ。

 体力つけて、精神も鍛えて、あまり強くならないように気を付けて。魔王にならないように。

 指導を受けながら、テッドとウィルに続いて、見よう見まねで稽古を始める。

 外で走り込みをやって、柔軟などのストレッチをやって、受け身の練習をやって。正拳突きに回し蹴り……?あれ?


「師匠、なんか空手混じってませんか?畳の上だから柔道じゃないんですか?」

「あー、んーと詳しく話すと長くなるな。一言でいうと異種混合格闘技だと思え」


 もしかしてあまり詳しくないのかな?どうしても疑惑の目で師匠を見てしまう。

 休憩中に話を詳しく聞いてみた。


「もともとは神殿に所属していて魔法使いだったんだ。時々依頼されて冒険者の真似事もしていたな。でも体力が無くて周りの足を引っ張っていたから、神殿内で教えていた武術を学んだ。ある程度まで強くなったがダークエルフになって神殿を追い出されたんだ」


 武闘派僧侶みたいな感じかな?モンク僧とか。


「その後、この村に来て、セイイチロウに教わって今に至る。だからいろいろ混じってるんだ」


 じじ様も日本で師範とか師範代と言うわけではなかったらしい。もしかしたらそちらの方もいい加減だったかもしれないね。それだけいろいろなものが混じっているなら―――


「新しい流派とか、立てる予定は……?」

「無い。基本魔法使いのつもりだから。そこまでマッチョになりたくない」


 最後に本音が出た。筋肉はついてるけれど師匠は割と細身だ。種族的に大丈夫そうだけど筋肉むきむきのマッチョエルフって……いたらちょっとやだな。ぶんぶんと頭を振って師匠を見る。筋肉。師匠がマッチョ。いやすぎる。

 話題を変えよう。何か無いか。


「そ、そういえばこの前の師匠の魔法すごかったよねー」

「おう、最期のびかってひかるやつ!」

「うん、あれはすごかったね」


 テッドもウィルも話に乗ってきた。二人とも目をキラキラと輝かせて師匠を見ている。いいなーすごいなーと、二人によるべた褒めは止まらない。師匠は澄ました顔をしている、が口元の笑みが隠しきれていない。そのうちテッドが師匠に頭を下げ始めた。


「師匠、俺魔法教わりたい。勇者になりたい。だから剣も教わりたい。……お願いします!」

「すまん。魔法は教えるための手続きが複雑だから、今すぐは無理だ」

「じゃあどれくらい?」

「わからん」


 急にしゅんとしぼんでしまったテッド。気を取り直すと師匠に次を訊く。


「じゃあ剣は?」

「そっちも俺は本職じゃない」


 さらに落ち込むテッド。今日はかなり真面目に稽古に打ち込んでたみたいだ。私が口を挟むことではないけれど、何とかならないのかな。


「ってかテッド。教えてもらうばっかじゃなくて自分でいろいろ試したらどうだ?魔法は駄目だが剣なら自己流でいくらでも動けるだろ?」

「えっ?」

「基礎の体力づくりや体の動かし方なんかは、いつもの稽古である程度できる。しっかり型を教わるなら先生がほしいところだが、素振り位なら今からでもできるだろう」


 目から鱗が落ちたみたい。押忍っと言ってこの話は終わった。


 稽古の後、外へ出ると日が高くなっている。日中の暑さも少し和らいで、秋がすぐそこまで来ている。

 私も頑張ろうと心に決めて、家路を急いだ。

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