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私が魔王になる前に  作者: よしや
第一章
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お休みの日

「アリシア、今日は授業も稽古も休みの日だぞ」

「うん、知ってるよ」


 村に着くなり、テッドに会った。この国の暦はほぼ現代日本と同じ。太陽暦で一年三百六十五日、十二か月、一週間は七日。

 でも呼び方が変わっていて、曜日は月、火、水の代わりに銀竜、赤竜、青竜、緑竜、金竜、紫竜、光竜の日となる。

 王族に関連付けたのだと思うけど、もし、日本の曜日に竜を付けただけだと土曜日が……土竜――モグラの日になってしまう。初めに考えた人、グッジョブ!で、今日は土竜……じゃなかった、紫竜の日。週休二日。


「今まで村の中ちゃんと歩いたことなかったから、どこに何があるかわからなくて。今日散歩しながら、覚えようとしてるの」

「そっか……。俺案内しようか?」

「いいの?」

「どうせ暇だからな」


 テッドはにかっと笑った。



「まず、村の入り口」


 最初に連れてこられたのは、大きな石を積み上げただけの簡素な門の前だった。それでも二メートル以上はある。門の向こう側は森に囲まれた道があって、途中で曲がって木々に隠れていた。


「外へ出るのは村のどこからでもできる。入るのは通行証を持ってここからじゃないと入れない。けっかいというのが張ってあるらしい」

「ついうっかり出ちゃって戻れなくなった人とかいる?」

「いる。目の前に」


 なんとテッドは経験済みらしい。むすっとした顔のまま「次行くぞ」と、歩き始めた。広場へ続く道の両側に家が建っていて、その何軒めかを指さして「ここ俺んち」と一言。二階建ての小さくてかわいい家。


「へえ、ここなんだ。」

「家族四人で住んでる。父ちゃん、母ちゃん、俺、妹」

「えっ妹いるの?かわいい?」

「全然。すぐ泣くし」


 母親は村長のうちの使用人をやっているらしい。家事と育児は専ら父親の仕事だそうだ。この世界にも主夫って概念はあるのかな。それとも珍しいのかな。何となく聞けなくてそのままスルーしながら広場へ向かう。

 広場には店がある。飲み屋、総菜屋、雑貨屋、金物屋等々。指をさしながらテッドが教えてくれる。村の人しか利用しないため、看板は出ていない。道理で文字を見かけなかったわけだ。

 一週間に一度行商人が馬車で来てここで店を開くこともある。手紙のやり取りなんかはその人を通じてするらしい。

 雑貨屋の二階が師匠の家。前に上がったことあるよね。


「次はこっち」


 門から見て左手側の道を進む。右側は、ばば様の家の方向だ。家と田畑が続き、途中に道場が見え、暫く進むと他の家よりも立派な建物が見えてきた。


「ここがウィルの家」

「大きいね」


 家というよりもお屋敷と言った方がしっくりくる感じ。二人で眺めていると、丁度玄関からウィルが出てきた。


「どうしたの?二人とも」

「テッドにあちこち案内してもらっているの」

「この辺で終わりかな。ウィルもあそぼーぜ」

「うん。いいよ」


 取り敢えず広場まで戻ってきた。何して遊ぼうかなんてしゃべっていると、門の向こう側から馬車が一台、物凄い勢いで走ってくるのが見える。馬も御者も必死の形相で、声を上げることもなくこちらへ向かって来る。

 門を通り抜ける瞬間辺りが光ったのが見えた。通行証を持っているからだろう。速度を落として広場に入ってきたけれど、勢いが殺せなくてグルグル回っている。


「なんだあれ」


 テッドの声に再び門の方を見ると、馬車よりも大きい牛のような生き物が走ってきていた。そのまま結界にぶつかって弾かれる。少し離れてまた突進しはじめた。またぶつかっては弾かれ何度もそれを繰り返す。


「結界、大丈夫かな?」

「師匠、呼んでこようか?」


 馬車はやっと止まった。


もぐらのひ。ドラゴンに混じって。

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