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プロローグ

あくまで、この事実が現実だとしても、此の事実に類似した元の世界が何処にあるのかなぞ、誰も知る由は無い。しかし、その世界は極めて"何か"に似ており、其れは不文律のようでもあった。

今日も人々は何処かへ行くために何処へ消えてしまう。藻屑となった其の跡を、1人の女は踏みつけるように影踏みをしていた。

彼女は白に近い青色の、多少長い髪が前に並ぶショートヘアで、片眼を眼帯で隠し、もう片眼も髪によって隠れてしまっているが、彼女からは髪と髪の間から視界が広がっている。謂わばしてマジックミラーのようなものの、彼女は其れをさぞ普遍的なものと信じている、寡黙な女であった。


彼女は電気問屋が立ち並ぶ町、秋葉原アキハバラの一角に姿を見せていた。

この世界では"銃刀法維持法"が可決されてからと言うもの、「自分の身は自分で守れ」と言った規範が一般化しており、会社などに向かう彼ら彼女らは拳銃などの護身用武器を持っていた。

その女は背中に鞘を背負い、その鞘には多少錆びかかった金属が燦然たる白銀の刀身を覆うような剣を鞘に納刀していた。正しく陽と陰の二極を一体化させたものと言える。新旧、新たな歴史と失われた過去、この二つの意思は剣を築く金属によって生まれている。


―――女は、自分が誰であり、自分が何者なのか、全く知らなかった。

それこそ世界の基本性、概念性、規則性は理解していたが、自己意識の中で渦巻く自分への干渉が、一切跳ね除けられている、そう言った疎外性を自己の中で作られる矛盾に、疑問を抱いていた。

この、自分の中で得られない何かを、此の世界に求められるのならば、彼女自身は追い求めようと思っていた。全く知らない、彼女の終わりなき信念。其れは何ゆえにして剣を振るうのか、洞察してみることに世界は深いのだ。


ただ、これだけは分かっていた。

――――イシュゾルデ型サーカムフレックス体"オルタナレクリプスXV"。

自身の右足の太腿に刻まれた此の捺印こそ、自己に値する名だと省察していた。

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