タバチミナウトキテ ←
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その日はとても綺麗な月夜だったから、つい遠出をした。
フリルが多めの、パニエで膨らませた、貴婦人らしいシルエットのまま出かけた。
貴婦人といっても、ラナはそんなオバサンなんかじゃない。
まだまだピチピチの12歳ですよ。
崇拝するお姉様はそんな私にこう言った。
『コード10に会うといい』 【ナンデ?】
『瓜二つの「漂うもの」を見る事ができるぞ』 【ソンナモノト瓜二ツ?】
『違いといえば、あれは不幸で、これは幸福なだけだ』 【僕ハ幸福カ?】
だから、ラナは自転車を一生懸命に漕いでいる死神に接触した。
エコな死神である。
しかし無駄足だったようだ。
10番目のお兄様はまだ目的の「漂うもの」を発見していなかった。
死神は課せられた任務を他の死神に話す事は殆どないとはいえ、多分これは事実だ。
幸福の種が無い所に、幸福などは訪れない。
10番目のお兄様が、ラナに有益な情報を持っていたとすれば、ついつい情報を漏らすはずなのだ。
ラナはそれ程にまで幸福を実現する力がある。
「コード07はいつ帰ってきたんだ?」
唐突な質問だった。
思わず舐めていた棒付きキャンディーが口から零れた。
しかしそれは地面に着く前に運よくキャッチする事が出来た。
再びそれを口に含んで、にぃ~っと笑って見せる。
「さっき」
10番目のお兄様は呆れたようだ。
そんなワケが解からないって顔をしないでほしい。
ラナなんてまだ幼女の部類に入る…はずなんだから。
もちろん、見た目の年齢ではなくて精神年齢的な話だが。
「素敵なお顔が台無しぃ~」
「10番目のお兄様ぁ~?」
ニコリと微笑んで見せた。
そして抱いていたぬいぐるみを更に強く握りしめる。
クマの顔が少々変形した気がするが、気のせいなのだ。
ヘッドドレスを揺らして踵返す。
それと同時にキャンディーをガリッと噛み砕いた。




