テッドモニトモ
テッドモニトモ
ヘドロを軽くよけつつ、ラナは笑う。
邪魔になりそうなキャリーケースと踊るように、投げつけられるヘドロを器用によけた。
この「漂うもの」は、今日の午後に炎上した会社の一員だった。
いや、一員だった者達を集合させたイレギュラー。
ヘドロというのは汚れ役を被った彼らの心の叫びの具現化だろう。
「最近のやつはすごいってきいてたけどぉ~、まさか集合させちゃうなんてぇ~」
それを調査しちゃった14番目のお姉様もすごいと思うけど。
そんな事を考えながらラナは一度地上に着地する。
そしてキャリーケースを始めて大きく開いた。
硬質なケースの裏側に付けられた大きな刃と解体された柄を笑いながら組み立てる。
ヘドロ攻撃は続くが、それをよけつつ組み立てる。
このキャリーはもう良いか。
何かすごく薬品臭くて気持ち悪いもの。
ヘドロまみれになったキャリーケースを横目にラナは地面を大きく蹴った。
大きな鎌と踊るように、空中でクルクルとスピンした。
そして壁を一閃する。
薄暗い壁にへばりついているのぐらい、見抜けているんだよ。
奇声を反響させながらヘドロに塗れた4足歩行の「漂うもの」が通路に落ちる。
空いたままの丸い口からヘドロを出し、目があるであろう位置はぽっかりと空いた「漂うもの」だった。
今まで見てきた「漂うもの」の中でも断トツでトップの醜さである。
「さてぇ~、時間が来るまで楽しみましょうかぁ~?」
ラナは大きな鎌をバトンのように振り回した。
その度に刃が空気を斬る音が響き渡り、それを見た「漂うもの」が一歩引いた。
怯むだけの知能があるんだ、こいつ。
そしてまるで虫のように、地面すれすれを素早い足の動きで移動する。
ラナは首を傾げた。
何を考えているんだろうか。
とりあえず、歩いていればそのうち鉢合わせになるのは目に見えているので歩く事にした。
鎌の柄を肩に置いて、傘をさすようなポージングのまま歩く。
「まあぁ~、少しぐらいは戯れに付き合ってもいいけどぉ~?」
わざと聞こえるように声高らかに言い放った。
そしてカツカツと靴を鳴らして前に進む。
反響する音がどうにも自分を知らしめているようで気持ち悪い。
このブーツの音だって、本来のラナとは相容れないものなのに。