テッドタヲクオキ
テッドタヲクオキ
コード07は幸福である。
それは要するに、生きる上で不幸がない、不自由もない、不可能なんてない、という事だ。
コード07の瞳に映るものは全て、コード07の掌の上で踊らされているだけなのだったりする。
いや、踊らされているのではない。
お人形遊びのように、コード07が映す世界はちっぽけな模型と化し、コード07の意志によって物や人は動かされている。
コード07の瞳に映れば、自分の意思で動く事すら出来ないだ。
コード07を見つめてしまえば、自分の意志すら崩されるのだ。
「それがラッキーガールである所以だ」
「どうだ、可愛らしく嗤うパペッターだろう?」
パペッターは操り師。
神様の力のうち、最も人を狂わせる力、運命を決める異能力を授けられたのがコード07なのだ。
それ故にコード07は無意識に幸福であれと願った。
自分は生まれた瞬間に今後の人生における全ての不幸を背負ったのだと叫んだ。
そしてコード07は文字通り、幸福となった。
永遠に終わる事のない幸福。
自分の意のままに、無意識に死ねと思えば、他人が死んでしまう程に幸福だった。
コード07が壊れたのはコード07が( )として死んだ時。
制御不能の幸福によって、ラナが生まれた時からコード07は壊れた。
訪れた出来事を後から他人が手を出す事は出来ない。
過去を共有できても、受けたダメージを肩代わりする事は出来ない。
「私に会うのが遅すぎたんだ」
「過ぎた不幸を、私が背負う事は出来ないよ」
白い死神はそう言い切った。
そして無気力に座るだけのコード07を見つめる。
ただの言葉の暴力をし続けて、そして忘れるように洗脳した。
優しかった( )を、( )だけを遺して死んだ家族の事を、不幸で溢れだす涙を。
幸福である事が幸せであり、その幸福を支えるのが他人だ。
「君は何も悪くない」
白い死神はそう言ってコード07を抱きしめた。
そしてそっと耳元で囁いた。
これから待ち受ける事、君が不幸にする他人を見て悲しむのは私だ。
君が不幸と感じる事はない、私が不幸なんだ。
君は世界で一番幸福な子だ。