問題
「それでは1つ問題です」
「ん?」
僕は唐突にこう切り出してみた。
もちろんこの先何も考えてない。
ただ、彼女と喋りたかっただけだ。
そんなことはおくびにも出さず、思いつきで続きを喋る。
「えー、貴方の瞳に映る景色、というフレーズをよく耳にしますが、この場合、観測者の瞳に映る景色は虚像でしょうか?それとも実像でしょうか?」
「…ん?何それ、どういう意味?」
「意味は特にないよ。ただの問題だよ」
「意味がないなら答えないよ」
「えー、いきなりそれはちょっと…。そこをなんとか」
まさか答えないという選択肢があるとは…
「だって半分くらい何言ってるか分かんなかったし」
…確かに、難しい言葉は使ったし、割と早口気味に言ったかもしれない。
「そこは…僕のせい?」
「ん、君のせい」
「えー」
僕が不満そうな顔をすると、彼女の顔がいたずらを思いついたいじめっ子のような顔になる。
彼女もこんな顔するんだなぁ。
若干サディスティクな傾向があるのかもしれない。
まあ、ちょっとくらいなら彼女の性格的にはあり得ることだ。
と、考えてる間に澄ました顔になった。
すると腰に腕を当て、胸を反らす。
「えー、じゃないでしょ。もっと分かりやすくするように努力しなきゃ」
「は、はあ」
努力…難しいこと言うな。
それにしても胸を反らすと、こう、どうしても胸に目が…
「ほら、もう一問出して」
なんとなく罪悪感。…って
「え、そ、そうきたか」
まさか、適当に出題したことがばれてたか…?
「今度はちゃんと分かりやすく出してね」
「えー、いきなりそんなこと言われても」
「でしょ。いきなりは難しいの」
「は、はぁ。仰る通りで」
まさか、この話の流れに持ってきたかったが故の催促!?
いやでも、ぐうの音も出ない。
ある意味完璧な証明か…
うーん、証明ね…
「じゃあ問題」
「ん、なんかあるの」
「簡単だよ。なにせ○✖️問題だから」
そう言うと、彼女が不満そうな顔をする。
「別に問題を簡単にして欲しいんじゃないんだけど?」
「まあまあ、そう言わずに」
僕のちょっとした深層暴露アイデア問題なんだからね。
「じゃあいくよ?問題」
まだ不満そうだけど一応聞いてくれそうだ。
それじゃあ早速暴露しよう。
「さっきの問題は適当に作った、○か✖️か?」
「…え?あれ、適当だったの?」
「解答は○✖️でお願いしまーす」
「…○…?」
「あはは、正解!今回は分かりやすかったでしょ?いろんな意味で」
「…やっぱり君って分かりにくいね、いろんな意味で」
「…あ、あはは。そうかな」
「そうだよ」
「あは、反省します」
「…そうだよ、ちゃんと反省して」
拗ねた顔がまたなんとも可愛いなぁ、とはどうしても言えそうにない。
そんなちょっとした淡い思いを抱きつつ、こんな平和な時間がゆっくりと、しかし、確実に流れていくのだった。