表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/83

運命の曲がり角

道路の曲がり角は運命の出会いの場。

学校に遅刻しそうになっている少女が、パンを咥えて走り、ちょうど曲がり角で出会い頭にぶつかる。そこからの恋愛に発展……。

なんてことはないだろうか?


ある日僕は学校に遅刻しそうになっていた。

朝食を食べる時間がなかったので、パンを咥えて家を出る。

いつもはゆっくり歩いてるこの道も、今日は走って通過する。

そして曲がり角に差し掛かろうとしていた。

「ちょっと待て」

僕は慌てて急停止した。

これは運命的なことが起こるのではないか?

その運命を僕が全力疾走で相手を怪我させてしまうかもしれない。

なんたって相手は女の子なのだ。

そこいらにいる男なら構わないが、女の子の身体は極めて脆い。

そう思い、僕は少し走るスピードを緩める。

もうすぐで僕が曲がるっていうのに、周りから足音が聞こえない。いや、僕の鼓動の音が大き過ぎるのだ。

まあ、僕も学校に遅れる訳にはいかない。軽く走りながら角を曲がる。


今日は危なかった。もうすぐで学校に遅刻するところだった。

朝起きるのが遅く、朝食を食べる時間すらなかった。

だが、パンを咥えて走りながら登校するということは出来た。そして結果、漫画の世界のように楽に走れるものではない。呼吸は乱れまくって、走り辛い。僕は途中から手にパンを持って走っていた。

一番重要なのがここから……。あの曲がり角での出来事だ。これは僕の一生を左右するほどの力を持っていたに違いない。だが、結果は……、少女にぶつかることもなく、というより、曲がっても僕一人しかいなかった。

現実で漫画のようなことは起きなかった。

今日の僕はただ焦って登校した普通の高校生だった。


次の日、僕はまた遅刻をしそうになっていた。

今日の朝食はご飯もの。途中で食べれるようなものはなかった。

仕方なく僕は何も食べずに家を出る。

昨日は期待をしてワクワクしていたこの道も、今日は冷静に「そんなことは起こるわけない」と呟きながら走っている。

そして曲がり角に来た。今日は少しスピードを緩めて曲がる。

理想が現実になるわけがないと考えながら。

ドンッ

「⁈」

僕は曲がった瞬間、誰かにぶつかった。

「ご、ごめんなさい」

顔も見ずに僕は謝る。そして手から落ちてしまったバックを広い顔を上げる。

「あの、こちらこそすみません。よそ見をして歩いていて……」

そこには金色の髪を風に靡かせている碧眼の少女が立っていた。

「え、い、いえ、僕が不注意だったがために……」

彼女は僕とぶつかり、横にある塀に少し身体が当たったのだろう。肩の所に少し、コンクリートの粉が付いていた。

「大丈夫ですか?」

僕は彼女に尋ねる。

彼女は全然平気ですと言う。そして学校に遅刻してしまうのでと言ってすぐにさって行った。


それから毎日僕は曲がり角に来るたびに思い出す。また、あの少女が現れてくれないかと。

あれから彼女には一度も会っていない。いや、会う方が難しいだろう。あれは偶然が重なった結果なのだ。

一年ぶりだろうか。僕は遅刻ギリギリに家を出た。理由は単純、寝坊だ。

道路を走って学校に向かう。この時僕は彼女のことしか頭になかった。また、あの角でぶつからないかなと。

ドンッ

やっぱり、僕は曲がり角でぶつかった。

「あ」

顔を前に向けるとそこには……。

「また、ですね」

ニコッと微笑んだ彼女の姿があった。

それから僕は彼女はよく曲がり角で会うようになった。僕が意識的にずらすとともに、彼女もそうしているのだろう。

少しずつ、少しずつ、時間を重ねて仲良くなった。僕は彼女に一目惚れし、また、彼女も僕のことを好きになっていたかもしれない。

僕は彼女と一緒にいる時間が一番好きだ。

僕の人生の分岐点となったのは、あの曲がり角だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ