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屋上でのトラウマ

屋上に上がれる学校は少ないだろう。上がれるにしても、教師の許可が必要だとかの制約がつく。

それは少し昔に起きた屋上からの飛び降り自殺が原因なんだろう。


「なあ、屋上に行ってみたくね?」

僕の友人Aがそう言うと、

「そうだな、高校三年間の思い出に一回は行ってみたいよな」

とBが言った。

「そう?別に行けなくても良くない?」

僕は屋上に行きたいという願望がなかった。

だって想像してみてよ、もしフェンスがなかったらとか、悪ふだけで柵を乗り越えて足を滑らしたらとかさ……。

「なんだよ、釣れねぇなあ」

Aががっかりしたように言ったが、僕は気にしない。自分の身に何かあったらと思うと、ダメなのだ。

「まっ、行くにしても先生に許可取らないとだし、絶対許可なんてしてくれねぇよ」

Bはははっと笑ってその場を流してその話を終わらした。


「おい、許可取れたぞ!」

次の日の昼休み、Aが走って僕とBが食事をしている机に来た。

「え、マジで⁈」

Bは持っていた箸をガシャンと置く。

「マジマジ、Cに言ったらするっと許可してくれて、ほらこれ」

そう言ってポケットから取り出したのは、屋上と書かれたプレートが付けてある鍵だった。

「うわ、本当なんだ……。まさか、行く……、なんて言わないよね……?」

僕は恐る恐る聞いてみた。

「いやいや、行くに決まってるだろ?屋上に入れる機会なんてそうそうないぜ?」

そう言ってAはBの肩を叩き、なあと言った。

「確かに、こんな機会滅多にない。おし、早速今から行こうぜ!」

弁当をさっさと片付けてBは立ち上がった。

「おっしゃ、そうこなくっちゃ。お前はビビってここで飯を食ってればいいさ。かんそうは俺たちが伝えてやるよ」

Aは僕に鋭く行ってBと屋上へ向かってしまった。

「ちょっと、ぼ、僕を置いていかないでよー」

僕も慌てて弁当を片付ける。

一、二分してようやく教室からバタバタと出て行くことが出来た。


この階段が屋上へのドアまで繋がっている。あと二階上がればドアがある。それを開けば屋上だ。

僕は大丈夫だ、と心に強く言ってAとBが向かった屋上へと急ぐ。

ちょうど屋上に着く一回下の階だっただろうか。バンッとドアの閉まる音が聞こえた。

僕はまだAとBは屋上のドアを開けてなかったんだと安心した。そして僕もそのドアの前に立つ。

これを開ければ屋上。ドアを開けるくらいで死ぬわけではない。何よりAにビビりと思わたままではいられない。僕はドアをギーっと開けた。

そこで僕が見たものは……。


「おい、やめろ!やめてくれ!」

「教師がこんなこと、するのかよ!」

AとBの叫び声が聞こえる。太陽がちょうど二人に被って見にくいが、あの二つがそうだろう。

ん?あと一つあるのはなんだ?

二人の手前にいる人のような形。僕たち以外にも屋上に来たやつがいるのか?

「おっ、やっ、やめろぉぉぉ!」

Aの声が響く。そして、二人の姿のうち、一つが校舎の下へと消えて行った。

「は、はあ?ぶざけんなよ!てめぇなんてぶっ殺してやる!」

Bの叫び声と共に、二人の形が取っ組み合いになる。

僕はそれがどんな状況かわからなかったが嫌な予感がした。

しかし、足はその取っ組み合いをしてる方へ勝手に動く。

「くそっ!なんだよ!俺たちが何をしたっていうんだ!」

次第にBの叫び声も大きく聞こえる。

二人のうちこっちを向いてる奴が僕に気づいたらしい。

「おい、来るな!こいつはヤバイ!お前を巻き込みたくない!助けを呼んで来い!」

その声はBだった。

しかし、僕の足は硬直して動かなかった。そして、また一つの姿が校舎の下へと消えた。


「なんだ、AとB以外にお前もいたのか。見たな、見たよな?じゃあ、お前も……」

何かを呟きながらこっちに向かって来る姿。顔は見えない。僕の足は動かない……。


それからどうなったのかは覚えてない。しかし、僕は病院のベットで目を覚まし、一言目に言われた言葉がAとBは死んだってことだった。

あの日、僕たちが屋上へ行くことを知っていた人物は一人……。あいつしかいない。

僕はそれ以来、高い建物を見るといつも思い出してしまう。

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