音楽室の噂
音楽室に飾ってある肖像画の目が動く、光る……。なんて話はよく耳にする。
実際、僕の通っている学校にもある。夜、音楽室に行くと奇妙なことが起きる……、と。
「なあ、今日肝試ししようぜ」
夏休みに入る前の終業式に友達が言ってきた。
「肝試し?別にいいけど……」
特に用事がなかった僕はすぐにオッケーを出す。
お化けなどでビビるほど僕はチキンじゃない。
「おっ、これで四人だな。何とか面子は揃ったか」
友達はうんうんと頷きながら言った。
「僕たちの他に誰がいるの?」
「そんなの決まってるだろ?夏だぜ?肝試しだぜ?女子を呼ばないわけないだろ」
友達は僕の耳元で囁く。そして、教室の真ん中にいる女子二人を指した。
「あの二人だよ。お前も少し気になってんだろ?」
ニヤニヤしながら僕に肘を当ててくる。
「なっ、なんだよ……。まあ、気にはなってるけど……」
その女子二人は、元気で明るいタイプ、何を考えているかわからないミステリアスタイプとそれぞれ性格は違うがいつも二人でいた。
特に僕は、ミステリアスな子が気になっていた。話したことはないがなぜか気になるのだ。
「まっ、そういうことだ。今日の夜十時、校門前に集合な」
肩をポンポンっと叩いて友達は行ってしまった。
夜十時か……。場所は言っていなかったが、たぶんあそこに行くだろう。この学校で唯一心霊現象が起こっていると言われている音楽室に……。
約束の時間丁度に僕は校門前に着いた。
「おいおい、レディを待たせるなよ」
着いたそうそう友達に喝を入れられる。
「ごめんごめん、でも時間ぴったしだよ」
軽く誤った後、自分が遅れていないことを少しアピールする。
「少年よ、見苦しいぞ」
すでに待っていた女子二人のうち、明るいタイプの子が変なキャラ設定で僕に言った。
「私は、別に良いけど……」
それに続いてミステリアスな子も僕に話しかける。
「はい、反省します……」
僕は何で時間に遅れてないのに……、なんて考えながら言葉を口にする。
「はいっ、やっと全員揃った所で肝試しと行こうじゃないか」
手を一回パンっと叩いて友達は言った。
「何と無く予想はついてると思うけど、今日の肝試しは音楽室に行くぞ」
なんて言いつつ、校内に入って行く友達。
それにつられて僕と女子二人も校内に足を踏み入れる。
男女二人組のペアを作ろうという友達の提案で僕はミステリアスな子とペアになった。
「…………」
「…………」
会話が……、ない。
「こ、怖くない……?」
僕は勇気を振り絞って言ってみた。それがこの言葉だった。
「怖いわけない。私、知ってるから……」
音楽室に行く途中だったが、彼女は語尾を濁した。
知ってるって何をだ?僕にはわからなかった。
「この肖像画、霊が憑いてる……」
音楽室に着くとすぐに彼女が言った。もちろん僕にはわからない。
「私、霊を見る力。いや、私が霊だから見えるの……」
少しの間僕は硬直状態になっていた。彼女が何を言っているかわからなかったからだ。
「これであなたも同じ……」
彼女がそう言った瞬間、音楽室に無数の霊が漂っているのが見えた。
彼女が僕に何をしたかはわからない。だが、僕の目に映るのは紛れもなく、この音楽室にいる霊たちだ……。