十三段の階段
階段が十三段だと、死者が出る……。なんて噂を聞いたことがある。
マンションの階段、学校の階段。とにかく場所はどこでも良いらしい。問題は十三という数字にあるようだ。
僕の学校には、階段から落ちて死んだ生徒がいるという噂がある。北校舎の三階と四階を結ぶ階段だ。段数は、十三……。
この噂話が本当かはわからないが、先輩たちのもっと上の代から伝わっているらしい。
ここに通う生徒はもちろん、務めている先生すらその階段に近づかない。度胸試しに階段から降りようとすると、転げ落ちる。今まで何人の生徒が病院に運ばれたことか……。
その階段に今、一人の少女が立っている。
「おい、お前!すぐにそこから離れるんだ!」
周りには野次馬、それに教師の姿がちらほら。僕は後ろからその光景を見ていた。
「なんで?」
長い黒髪をふわりと揺らして振り返る少女。その目には光がなかった。
「その階段は呪いの階段だ。人は立ち寄ってはならない!だからすぐに離れるんだ!」
必死に叫ぶ教師。だが、身体は階段へ向かおうとしない。その教師もわかっているのだ。あの階段は危ないと……。
「……そう」
興味のなさそうな返事をした少女は、その場から離れた。
大勢の人集りの中、一際身長の低い少女はすぐ見えなくなった。
少しの間、その場は騒ついていた。なぜあの少女があの場所に立っていたのか、何の目的があったのかなど……。
しかし、時が経てばいつもの生活に戻っている。
あの階段には近づいていけない。度胸試しでもしたら死が待っていると……。
僕はふとした時にその階段に寄ってみた。その時はなぜかあの少女のことが脳裏をよぎったのだ。
階段の近くまで行くと、髪の長い少女が後ろを向いて立っていた。
その光景は前に一度、見たことがある。少し前に騒ぎになったからだ。
「君は、そこで何をしているの?」
気づいた時にはもう、少女に話しかけていた。
「探し物、ここに置いてきた物があるの」
その時僕は悟った。その少女はここで亡くなった生徒だということを……。