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宮園ユキコ6

しばらくして私は武田くんと付き合い始めた。

武田くんは私をユキコと呼んだ。


そして私のことを一番に思ってくれた。


以前のように女性が集まる場所へ行くこともなくなった。


でも私はなにか違和感を感じていた。

彼は私だけを見てくれる。

私だけが彼を知ってる。


でもそれは違うような気がしていた。


私はその嫌な予感を無視していた。

彼の側で幸せだった。

彼の柔らか髪をなで寄り添っているのが幸せだった。


1年後、武田くんは係長になった。

彼は変わった。もっと大人になった気がした。


それでも私には変わらぬ優しさをくれた。


家族で会うことが多くなってきた。

私達は結婚を意識し始めた。


武田くんも同じ気持ちだと思っていた。


私は武田くんと結婚して、彼の子供を生み、彼の側で生きていくつもりだった。それは私の夢だった。



武田くんだわ。

私は会社の休憩所で武田くんの姿を見つけた。声をかけようとしたとき、ふと武田くんの表情がいつもと違うことに気がついた。

それは桜を見上げていたときと同じ切ない表情だった。


視線の先に、美しい黒髪を束ねた女性がいた。その女性は武田くんの視線に気づいていないようだった。

確か上杉カナエさんだっけ?武田くんの高校生の同級生って言っていた…


私は気持ちが焦った。二人を話させたくなかった。嫌な予感がした。


「あ、武田くん」

私は武田くんの腕に腕を絡ませた。私の声で上杉さんは私達がそこにいることに気づいたようで、その黒い目でこちらに向けた。そして椅子から腰を上げるとその場を離れた。

武田くんの視線は上杉さんの後姿を追っていた。


嫌だった。


「今日はチケットを予約する日でしょ」

私は武田くんに悟れないように精一杯の笑顔を作ってそう言った。


あの視線…

せつない視線…


私の胸が騒いだ。

今まで彼が付き合ってきた女性を見てきたけど、彼があんな視線で見ていたことはなかった。


でも私はもうだめだった。

彼がいないとだめだった。


離れたくなかった。


こんな恋したくなかった。

穏やかな優しい恋がしたかった。


でも彼に囚われた。

逃れられなかった。



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