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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

初期掌編

蛋白

作者: 高槻全壱
掲載日:2026/08/09

ちょっとした油断が命取りになるってのは、俺の心の奥底に眠っていた。

例えば、チラッと脇見運転をしただけで重大な、生死に関わるような事故に遭ったりするのは、物心付いた人間なら誰しもわかるような極々当たり前のセオリーだ。


それと同じように俺達の周りには、人の数に比例して危険が石ころのように転がっている。そんなことは俺も重々承知だったが、退屈な毎日の繰り返しでそういったことに対する警戒心が、どっかに旅立っちまってたんだろう。


今日俺はいつも通り家に帰って愛犬の〈ポギー〉と戯れていた。風呂に入って、飯を食って、TVを見て。いつもと変わらぬ退屈を噛み砕こうともせず、飴玉のように口の中でコロコロ転がしていた。


寝る前になってからふと喉が渇いた俺は、ポギーと一緒にジュースを買いに行った。

ジュースの自販機は目と鼻の先なので、鍵は掛けてなかった。

それがいけなかったんだ。


自販機から俺の部屋は見える位置にあって、俺は家を出る際電気を消したはずだった。が、何気なく部屋を見上げると電気がついていた。

消したはずだけどなぁ。なんて思いながら、ポギーを連れて家に戻った。玄関を開けて、ポギーが勢いよく部屋の奥へ入って行くと、短い鳴き声が響いた。


ゾッとした俺はポギーを呼んだ。だが、部屋は静寂に包まれポギーの息遣いすら聞こえない。

意を決した俺は、玄関から部屋の奥へ向かった。


「誰かいるのか!?」


扉を開けると、女がこちらに背を向けて座っていた。しきりに手を動かしている。

髪は伸び放題でバサバサ、ボロボロになった服から覗く皮膚は、何か腐っているかのようにどす黒い。部屋に充満した腐敗臭もこいつだ。


「おまえ、人の家でなにして……」


振り向いたその女の顔には、赤黒い液体が飛散していた。そして、女が手に持っていたのは紛れもないポギーの足だった。


「なんてことしやがる……」


獣のような咆哮の後、女が飛び掛かってきた。間一髪で躱した俺はすかさず、倒れこんだ女の顔面を蹴った。あまりの苛立たしさに我を忘れて顔や体、そこら中を力任せに踏み潰した。


ゴッゴッゴッ

グニャグニャグニャ

グシャグシャグシャ


女の血と肉が辺りに散らばって、俺は我に返った。


足元を見ると、もう人間かどうかもわからないほど潰された“肉”が転がっていた。


こいつは〈ミートマン〉。つまり食用人間だ。恐らく養殖場から逃げ出してきた奴だろう。


愛犬のポギーは食われてしまったが、俺は悲しみに噎ぶことなく、部屋の掃除と明日の料理の下ごしらえを始めた。

2007/11

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2007年の11月…??
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