表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名も無き戦場  作者: 六花
境界
PR
65/76

第六十四話「ノイズの生成」

ヴェリオスは、静かな部屋の中にいた。


魔法陣でも儀式でもない。


ただ思考を“形にするための空間”。


彼にとって世界は常に、再構築可能な情報だった。


だが、その日は少し違っていた。


思考の途中で、わずかに“引っかかり”が生まれる。


(……今のは)


消えかけた違和感。


だが確かに、そこに“ずれ”があった。


指先を動かす。


空間に軽く魔力を流す。


形にはならないはずのものが、一瞬だけ歪む。


「……干渉?」


ヴェリオスは眉をひそめる。


それは誰かの攻撃でも、防御でもない。


もっと曖昧で、不完全な“揺れ”だった。


再度、魔法を構築する。


しかし今度は、術式そのものが微妙にズレる。


完成しない。


いや、正確には――


“別の形に変換されている”。


(これは……僕の魔法じゃない)


ヴェリオスは静かに理解する。


部屋の中の空間が、ほんの一瞬だけ重くなる。


圧でもない。


気配でもない。


ただ“情報の密度”が変わる感覚。


「どこかで……何かが動いている?」


独り言にしては、確信が混じっていた。


思考を深く潜らせる。


魔法というより、“世界の構造”そのものへ。


そこでまた、違和感が走る。


(同期している……?)


そんなはずはない。


この世界は本来、連動していない。


少なくとも、そう設計されているはずだった。


だが今、複数の地点で同時に“同じ種類の揺れ”が発生しているように感じる。


距離の概念が薄い。


時間のズレもない。


ただ“同じ現象が並列に存在している”ような感覚。


ヴェリオスは立ち上がる。


机の上に展開していた術式が、勝手に崩れていく。


いや、崩壊ではない。


“再配置”に近い。


「……誰だ」


声は静かだった。


問いかけではない。


確認に近い。


この世界には、彼の知らない“干渉”がある可能性がある。


そしてそれは自然現象ではない。


ヴェリオスは手を握る。


空間がわずかに応える。


だが今までのように素直ではない。


まるで別の層から、同じ現実が触れてきているような感覚。


「面白い」


わずかに口元が緩む。


それは興味か、警戒か、その両方か。


彼は理解し始める。


この世界はまだ“完全には固定されていない可能性がある”。


そして今、その未確定領域が――


誰かの影響を受けているように感じられる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ