EP.1 召喚
「あちいよ~」「疲れたよ~」「光が~」「かえりてぇ〜」
悲鳴が聞こえる。
地獄かと思ってしまうほどの暑さ、たまってばかり行く疲労。
そう、この世で最も残酷な行事、マラソンである。
俺は涼。俺が小さい頃に交通事故で亡くなってしまった親と、数年前に病死した俺を育ててくれた叔父さんがつけてくれた名前。
良き家、良き水を表し、音が良につながる漢字である。
まあ、今はそれはどうでもいい。それより、この地獄のようなイベントをさっさと終えたい。
華の大学生がすることではないだろう。
さて、そんな俺だが、実は一つだけ皆に話していない秘密がある。
え?そのぐらいの年齢なら秘密の一つや二つ誰にでもあるだろうって?
そのレベルの秘密ではないのだ。
いや、犯罪者とかいう話ではない。
俺は実直剛健な青年である。
実直剛健の意味は知らんけど。
俺は、実は前世の記憶がある。前世では、俺は魔王だったのだ。
いや、暑さに頭がやられているわけではない。本当である。
前世では今いる世界でいうところの異世界…魔法や、魔物がいる世界に住んでいたのだ。
そこで…あー原因は忘れたが、勇者率いる人間軍と戦争を始めたのだ、その戦いは20年ほど続いた後、
当時の魔王軍を率いていた魔王ーつまり俺だがーが勇者と相打ちして果てたことによって戦いが終わった。
のだろう。ぶっちゃけ、勇者と相打ちしたところまでは生きていたが、その後のことは死んでしまっていたのでわからん。
まあ、相打ちって言っても、八百長だけどな。
当時、俺は人間軍との一騎打ちの2年前に八百長のお願いをされたのだ。
誰に?創造神に。あの世界ーこの世界もだがーの創造神が目の前に降りてきたときは驚いた。
妻がいなかったら惚れていたのかもしれない。あの女神ー創造神は女性だったーはそれほどまでに美しかったのだ。確か。
ぶっちゃけ、あの女神の内面を知ってからは呆れはしても、恋愛対象として見ることは無くなったがな。
ん?妻‥?何かを忘れているような……まあ、いいか。
それでだな、その女神に負けるように頼まれたのだ。その代わりにこの世界に転生させてもらったってわけ。
二つ返事でOKしたことによると、さほど重要な理由で戦争をしてなかったのかも。転生してから20年以上経っているから、覚えていないんだが。
今はこんな話はどうでもいい。設定を吐き出しているだけだし。
ただ、マラソンが終わらない。
とか、思っていたら急に光に包まれた。
そして……
「急にお呼び立てしてしまい、申し訳ございません。私は、創造神をやっているものです。」
「「「「「え?」」」」」
そう、あのバカがいたのである。
思えば…この時から歯車が狂い始めたのかもしれないな。




