ネコにまつわる不思議なお話
先輩の下宿で、鍋パーティをすることになった。先輩の彼女特製の鍋をつつきながら、何となく皆で怪談話をする流れになった。
僕が取っておきの怖い話をし終わると、先輩が最近飼い始めた子ネコを抱き寄せてこう言った。
「おいおい、マジで怖い話じゃないかよ。この子もアイツもそういう話苦手なんだよ」
先輩がキッチンに立つ彼女をチラリと見た。僕は笑いながら先輩に言った。
「ははは、先輩が最初に話を振ったんでしょ? それに、彼女さんはともかく、子ネコは怖い話なんて気にしませんよ」
「それじゃ、最後は先輩ですね」
「トリなんですから、取っておきの怖い話をお願いしますよ」
僕や他の後輩からそう言われ、先輩は苦笑した。
「……そうだな。それじゃあ怖いというか不思議な話を少しだけしようかな」
そう言って缶ビールをひとくち飲むと、先輩は話し始めた。
† † †
お前らも知ってると思うけど、俺、大学の裏門近くのコンビニでバイトしてるだろ? 店長にお願いされて、週1回、夜勤をしてるんだ。
夜勤は客数は少ないけど色んな客が来てな。ベロンベロンの酔っ払いから、何かワケありそうな気になる客まで。千差万別だ。
そんな中、俺が一番気になってたのが、俺が夜勤の日に毎回やって来るある客だった。
その客は、決まって日の出前の薄暗い時間に一人でやってくる。だけど毎回、姿が違うんだ。
え? 服装や髪型が違う? いや、そういうレベルじゃないんだ。
最初に来たときは、小学校低学年くらいの女の子だった。その次は、若い女性。別の日は老婆。姿形がまったく違うんだ。
そして、毎回、唐揚げを一袋だけ買って帰るんだ。
それって、単に別人じゃないかだって? まあ、普通はそう思うよな。でも違うんだ。分かるんだよ。
何が分かるのかって? 美しい。美し過ぎるんだ。魔性の美しさって言ったらいいのかな。思わず無言で見惚れてしまう、見たこともないほどの美しさなんだ。
……お前ら、信じてないな? まあそうだよな。だけど、やっぱり同一人物だったんだよ。
何故かって? 俺が本人に確認したからだ。
コンビニから俺の下宿へ帰る途中に、小さな神社がある。そこに以前から一匹のネコが住み着いていてな。
俺は別に動物好きという訳じゃないんだけど、そのネコが何だか気になって、時々エサをあげたり撫でたりしてたんだ。
そんなある日、バイト帰りにそのネコを撫でてると、近くに唐揚げの袋が落ちてたんだ。
それで俺はピンときた。あ、こいつが化けて買いに来てたのかってね。
それで俺が「お前が買いに来てたのか?」ってそのネコに聞いたんだ。そうしたら、本人が「にゃー」って鳴いて、渋々認めたという訳だ。
† † †
「先輩、それはさすがに無理がありますよ」
僕が笑いながら先輩に言った。
「せめて、その子ネコがその化けネコなんだ、くらいのオチをつけてもらわないと」
先輩が膝の上で眠る子ネコを撫でながら笑った。
「ははは、すまんすまん。まあこの子はアイツと違ってまだ化けられないからな……な、ミーちゃん」
「え?」
僕が驚いてキッチンの方を見ると、ついさっきまでそこにいたはずの先輩の彼女の姿はなく、一匹の美しいネコがいた。
「にゃー」
ミーちゃんと呼ばれた美しいネコは、まるで返事をするかのように一声鳴いた。




