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推理、歴史、ホラー

ネコにまつわる不思議なお話

作者: 夢見楽土
掲載日:2026/04/20

 先輩の下宿で、鍋パーティをすることになった。先輩の彼女特製の鍋をつつきながら、何となく皆で怪談話をする流れになった。


 僕が取っておきの怖い話をし終わると、先輩が最近飼い始めた子ネコを抱き寄せてこう言った。


「おいおい、マジで怖い話じゃないかよ。この子もアイツもそういう話苦手なんだよ」


 先輩がキッチンに立つ彼女をチラリと見た。僕は笑いながら先輩に言った。


「ははは、先輩が最初に話を振ったんでしょ? それに、彼女さんはともかく、子ネコは怖い話なんて気にしませんよ」


「それじゃ、最後は先輩ですね」


「トリなんですから、取っておきの怖い話をお願いしますよ」


 僕や他の後輩からそう言われ、先輩は苦笑した。


「……そうだな。それじゃあ怖いというか不思議な話を少しだけしようかな」


 そう言って缶ビールをひとくち飲むと、先輩は話し始めた。


 † † †


 お前らも知ってると思うけど、俺、大学の裏門近くのコンビニでバイトしてるだろ? 店長にお願いされて、週1回、夜勤をしてるんだ。


 夜勤は客数は少ないけど色んな客が来てな。ベロンベロンの酔っ払いから、何かワケありそうな気になる客まで。千差万別だ。


 そんな中、俺が一番気になってたのが、俺が夜勤の日に毎回やって来るある客だった。


 その客は、決まって日の出前の薄暗い時間に一人でやってくる。だけど毎回、姿が違うんだ。


 え? 服装や髪型が違う? いや、そういうレベルじゃないんだ。


 最初に来たときは、小学校低学年くらいの女の子だった。その次は、若い女性。別の日は老婆。姿形がまったく違うんだ。


 そして、毎回、唐揚げを一袋だけ買って帰るんだ。


 それって、単に別人じゃないかだって? まあ、普通はそう思うよな。でも違うんだ。()()()()()()


 何が分かるのかって? 美しい。美し過ぎるんだ。魔性の美しさって言ったらいいのかな。思わず無言で見惚れてしまう、見たこともないほどの美しさなんだ。


 ……お前ら、信じてないな? まあそうだよな。だけど、やっぱり同一人物だったんだよ。


 何故かって? 俺が本人に確認したからだ。


 コンビニから俺の下宿へ帰る途中に、小さな神社がある。そこに以前から一匹のネコが住み着いていてな。


 俺は別に動物好きという訳じゃないんだけど、そのネコが何だか気になって、時々エサをあげたり撫でたりしてたんだ。


 そんなある日、バイト帰りにそのネコを撫でてると、近くに唐揚げの袋が落ちてたんだ。


 それで俺はピンときた。あ、こいつが化けて買いに来てたのかってね。


 それで俺が「お前が買いに来てたのか?」ってそのネコに聞いたんだ。そうしたら、本人が「にゃー」って鳴いて、渋々認めたという訳だ。


 † † †


「先輩、それはさすがに無理がありますよ」


 僕が笑いながら先輩に言った。


「せめて、その子ネコがその化けネコなんだ、くらいのオチをつけてもらわないと」


 先輩が膝の上で眠る子ネコを撫でながら笑った。


「ははは、すまんすまん。まあこの子はアイツと違ってまだ化けられないからな……な、ミーちゃん」


「え?」


 僕が驚いてキッチンの方を見ると、ついさっきまでそこにいたはずの先輩の彼女の姿はなく、一匹の美しいネコがいた。


「にゃー」


 ミーちゃんと呼ばれた美しいネコは、まるで返事をするかのように一声鳴いた。

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