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ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
異形研究所(仮)
49/52

ep.49 "寿命を燃料にするドーピング"

シル ヴィアラ モニカvsラヴィザ ドレバン③

僕は一歩踏み込む

足裏が地面を擦り、音を鳴らし飛び蹴りを放つ

一直線にラヴィザの顎をえぐった。


手応えは薄い

骨に当たった感触はあるが…沈まない

それでもほんの僅かにラヴィザの上体が揺れた。


「…いい一撃だ」


それはまるで

獣の王が恐れを捨てて噛みついてきた獲物を見て

面白がるような笑い。


僕は細い呼吸を刻み蹴りを重ねた

前蹴り、回し蹴り、ロー、膝…


「そうだ…その調子だ」


攻撃の最中でもラヴィザの拳は振るわれる

蹴りの合間に割り込むように、上、横、下

空気ごと叩き潰す重さが、骨の奥まで届く

五臓六腑が裏返って、位置がわからないくらいだ。


「威力が段違いだ…褒められても全然嬉しくない…!」


一撃が肩を掠める

肉が弾け、血が散る。


それでも次の瞬間には蹴る

痛みが脳に形を作る前に蹴る

思考が言い訳を始める前に蹴る

恐怖がやめろと囁く前に蹴る。


血が飛び散る

見るに堪えないほど赤く染まった僕の足

皮膚が裂け、爪先が欠け、

言葉どおり足が砕けていく。


息が短くなる、肺が焼ける

…それでも構わない

すぐに再生する

傷は戻る、肉も戻る、骨も戻る

だが僕が止まれば

次に壊れるのは…僕じゃない

他の人は二度と戻らない。


迷いを置いていけ

甘さを置いていけ

守りたいなら…まず奪え。


僕は床を蹴り直し、さらに深く踏み込む

その瞬間ラヴィザが笑い、ぼそりと呟く。


「そういう心には…

俺も本気で返してやるとしよう」


背中に冷たい汗が走る

今までは遊びだったと言われたに等しい

隠し玉…恐れていたものがついに形になる。


僕は息を呑み 足の指に力を入れた

逃げる準備じゃない、覚悟を固めるためだ。


ラヴィザは手のひらを前へ突き出す

そこには紫に光る雫が浮かんでいる

重力を忘れたみたいに掌の上で揺れ

小さな星みたいに脈打っていた。


光が濃くなったり薄くなったりして

生き物みたいだ。


「これは…毒だ」


「…僕には毒は効かないですよ」


ラヴィザは目を細める。


「貴様にじゃない…俺に効く毒だ」


「…?」


理解が追いつかない

毒を自分に…?自傷…?


答えを探す間にラヴィザはもう動いていた

雫を口に含み

喉が一度だけ大きく動く

紫の光が喉奥へ吸い込まれ、雫は消えた。


そして…空気が変わる。


呼吸が深くなる

体の内側で何かのスイッチが入ったみたいに

筋肉が跳ねる。


「この毒はな…"余計な機能"を削る毒だ」


首筋が跳ね、血管が浮き出る

心臓の鼓動が一段速くなり

血が全身を叩き回し始める。


「知性…痛み…恐怖…ためらい

人間に備えてあるそういうブレーキを止め

その代償に…」


ラヴィザの瞳が獣の色に濁る。


「力だけを、限界の先まで引き上げる」


人間を人間たらしめる回路を

順番に切り落としていく…毒。


痛みを知らせる警報も

恐怖で踏みとどまる安全装置も

考えるための余白も

削って、削って、出力に変える。


"寿命を燃料にするドーピング"


その瞬間、ラヴィザの肌が黒く染まった

異形の皮膚が腕から肩へ、胸へと這い上がり

真っ黒の鎧みたいに覆っていく。


「…痛覚が消えるとよ」


ラヴィザは笑いながら胸に手を置いた

次の瞬間、服を破り捨てるみたいに胸元を抉る。


黒い異形の皮膚が爪先で裂かれる

粘土みたいに引き伸ばされ

ねじれ、形を変え…硬く固まる。


「肉体を兵器のように組み換えることすらできる…」


胸の中心に穴が空く

それはただの穴じゃない

歪で、生々しい…砲口だ

肉と皮膚が小さな砲台へ作り替えられている。


ラヴィザの心臓が壊れたみたいに暴れる

血液が体内を高速循環し代謝が上がり

湯気が噴き上がる

筋肉が張り裂ける寸前まで膨張する。


全身が脈を打つように震え

胸の内部で異形の細胞がぎゅっと圧縮される。


そこに…雷の魔法が混ざった。


紫の火花が全身を走る

金属じゃないはずの皮膚が

磁力に反応するみたいに鳴いた。


ラヴィザが低く言い放つ。


電磁砲レールガン────」


大黒柱オニキス・ピラー


それは胸の中から放たれた。


避けられない

音が追いつく前に胸から黒い火柱が伸びる

視界の外から、意識の外から

理解するより先に現実が裂けた。


黒い閃光で

地下の一室が昼みたいに照らし上げられる。


僕の全身が持っていかれた

皮膚が炭になり、肉が焦げ、骨が砕ける

焼け焦げた匂いが鼻を突き抜ける。


衝撃で壁は砕け、床が抉れる

近未来的な内装は剥がれ

下地の土と岩肌が露わになった

部屋そのものが皮を剥がされたみたいだ。


「…!不死身…!」


戦いの向こうでヴィアラが目を見開く。


…攻撃を受けて意識が飛んだのはいつぶりだろう

直後の記憶がぶつりと途切れた

水底へ沈むみたいに意識が遠のく

耳鳴り、焦げた匂い、口の中に鉄の味。


そして遅れて…全身が戻ってくる。


骨が繋がり、肉が埋まり、皮膚が覆う

熱が引ききる前に呼吸が戻った。


再生が僕という形を取り戻していく

砂埃の中、僕はゆっくり立ち上がる。


本当によかった

あれを受けたのが僕で…

もし、あの攻撃が

モニカやヴィアラを真正面から貫いていたら…

この戦いは「死」によって決着がついていただろう。


揺れる意識の中、ゲイルを思い出した

皮膚の硬さ、力の純度、あの圧

近づくだけで息が詰まる…ラヴィザは彼と似ている

でも、違うところは

本能のまま壊すだけじゃない

知性がある、技術がある、言葉がある。


知略に長けた怪物だ。


このまま僕が戦っても

ラヴィザを倒せる絵が見えない

考えこんだ、その瞬間…

三匹の子供異形が

ヴィアラを無視してこちらへ殺到した

狙いは僕だ。


一匹目が飛びつき、腕が槍みたいに伸びる

肉を割って体を貫いた

二匹目が肩へ噛みつき

三匹目が足に絡みついて姿勢を崩しにくる。


ヴィアラが駆け寄り子供異形を吹き飛ばす。


「…大丈夫か?!」


「うん…平気だ」


言葉のわりにぼくの身体はぐらつく

ヴィアラは歯を食いしばり、ラヴィザを睨んだ。


「解呪異形から人間になったやつは

変に知性を持ってるせいで、技を隠しやがる…」


飼い主すら欺く知性を持った怪物

なおさら野に放つわけにはいかない。


大技を受けてもなお僕は歩みを止めない

砂埃を押し潰すみたいに足を落とし

ゆっくりと一歩前に進んだ。


(奪わなければ、奪われる)


ラヴィザの言葉が頭に残る

双竜組組長、キョウゴクの言葉も重なる。


(何も失わずに戻ってこい)


甘さを捨てなければ僕は変われない

迷った分だけ、失い続ける。


僕は前へ出る

足音を鳴らし視線だけは逸らさない

その姿を見て、ラヴィザは楽しそうに褒めた。


「…これでも倒れぬとは…強いな」


仁王立ちのラヴィザへ迫る

互いに目が合い、互いの心を認めるような視線。


沈黙を破ったのは僕だ、飛び蹴りを放つ

だがラヴィザは

そこにある物を取るみたいに軽く受け止めた。


足首を掴まれる

握力が食い込み骨が軋む

宙に吊られ、視界が反転する。


僕は反対の足で二撃目を叩き込む

空中で腰を捻り、全体重を乗せて…直撃。


…なのに手応えがない

全く効いていない。


さっきまで通らなかった攻撃が

さらに通らなくなっている

毒で痛覚を落としたせいか

出力だけの肉体に、僕の火力が追いついていない。


僕は掴まれた足をちぎり捨て、地面へ落ちる。


(…なら、一瞬だけでも)


足を異鎧侵蝕させる

黒鉄のような質量が足先に宿る

長く出せば子供異形が寄って喰われる

だから…"一撃のためだけ"に出す。


回し蹴り。


その勢いに空気が音を鳴らす

ラヴィザのこめかみを刈り取る軌道で

黒い踵が迫った。


だが…


ラヴィザも同じ角度で足を振り抜いた。


宙で二つの蹴りがぶつかる

鈍い衝突音、骨に響く衝撃。


僕の黒い装甲がひび割れて…崩れた。


「っ…!」


僕と同じ攻撃

勝てないと分からされる動き。


競り負ける

硬いはずの異形の肌が押し潰され身体ごと弾かれた

着地が崩れ、床を滑る。


口角を上げるラヴィザ

冷たい汗が背に落ちる僕。


圧倒的火力不足

焦りが鼓動を早くする

こいつを破るための手段を早く考えないと…

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