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ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
異形研究所(仮)
48/52

ep.48 "愛の鉄拳制裁"

シル ヴィアラ モニカvsラヴィザ ドレバン②

ラヴィザの攻撃は速く、そして重い

避けるだけで精一杯だった

一発一発が、ただの拳じゃない

空気そのものを叩き潰してくるみたいで

当たらなくても衝撃が骨まで揺れる。


踏み込みが見えた瞬間

視線で追うより先に拳が迫った。


(これが異形人間…

ルナさんの話していた通りだ

身体能力のリミッターが外れてる…!)


回避に徹しても全部は捌けない

かすっただけで肉が弾け、皮膚の下まで熱が走る

衝撃が身体の奥へ抜け、内臓が揺れる

吹き飛ばされるたびに床が割れ、柱が崩れる

そのたびに僕の身体は裂け、潰れ

…そして戻る。


夜叉の能力がなければ

命がいくらあっても足りなかっただろう。


ラヴィザと一対一で向き合っているだけで

世界が狭くなる

視界は攻撃にだけ集中

全部が次の一撃に吸い寄せられる。


意識を一点させていたその一瞬

背中が空いた 腹に冷たい何かが突き抜けた。


「…っぁ…!」


体の中心を貫かれ 息が漏れる

視線を向けると 腹から飛び出しているのは

子供異形の腕だった

小さな手が、内臓を探るように蠢いていた。


腕が引き抜かれ

穴が空いたまま血と熱が噴き出す

再生はするものの 足はふらつき、視界が揺れる。


「すまん…!一匹逃がした!」


ヴィアラの声

悔しさと焦りが混じった声。


無理もない

ヴィアラは一人で子供異形三体を相手にしている

あいつらは子供の姿をしているだけで

動きも力も子供じゃない。


僕がラヴィザに押し込まれた分

意識を背いてしまった

その隙を、子供異形は見逃さなかった。


「気にしないでください…かすり傷です」


言い返した瞬間、ラヴィザの気配が迫る

拳が頬をかすめ皮膚が裂ける

痛みが走る前に、肉が塞がっていく。


踏み込み 間合いを詰め、殴り返す

…が、硬い 効かない。


次の拳が来る、僕は避ける

避けきれないぶんは

壊れて、戻して、前へ出る。


(…すげぇ戦い方だ……)


ヴィアラが僕の戦う姿を見て息を呑む

被弾を気にしていない…そう見える

腹に穴が空いても、顔面が砕けても

戻った瞬間にまた踏み込んでくる。


痛みが存在しないみたいな攻め

その鬼気に、背中へ冷たい汗が流れた。


(今は味方だ…だからまだ…)


けれど、もし敵に回ったら

この男は命を削ってでも距離を詰めてくる

逃げ場のない圧で先に心を折ってくる。


ヴィアラは鳥肌が止まらなかった。


僕は考える

ドレバンは腹の異鎧浸蝕から子供異形を生む

明らかに特殊な能力を隠していた

なら…

ラヴィザが何も持っていないはずがない。


こいつは異形から人へ戻った個体

ルナの話が正しいなら、肉体だけじゃない

魔法の能力も解放されている可能性が高い。


この拳は、まだ氷山の一角かもしれない

…そう思った瞬間。


「小僧…戦いながら考え事か」


声が顔の前に迫る。


「身体が戻るからといって…舐めすぎだ!」


見上げる間もない

影が頭上を覆い、拳が振り下ろされた。


避ける判断が間に合わない

鈍い衝撃に視界が歪む

次の瞬間、僕の身体は床へ叩きつけられた。


床石が割れる

僕の体がめり込む

息が潰れて声にならない

首の骨が嫌な音を出し、すぐに繋がり治る。


ラヴィザが上から見下ろす

拳を握ったまま、次の一撃をいつでも落とせる距離

逃がす気がない。


「ぐっ…!」


肺に残った空気を絞り出し

僕は手のひらを床に押しつけた。


体を引き抜く

めり込んだ肩が軋み

背中の肉が裂ける感触。


それでも…戻る、動く。


「その甘さが捨てきれないなら」


ラヴィザの声が低く響く。


「いつまで経っても俺には勝てんぞ…」


僕は跳ね起きた

勢いのまま踏み込み

回転の力を乗せて…顔へ蹴りを叩き込む。


直撃

骨に当たった感触まである。


…なのに

ラヴィザの顔は揺れない

頬の皮膚がほんの僅かに沈んだだけで

表情すら変わらなかった。


彼は口の端を舌で拭う

獲物の血を味見するような動作。


次の瞬間、僕の足首に手が掛かった。


掴まれた…と思ったときには

握力が締まり、肉が潰れ、骨が悲鳴を上げる

足先がねじ切れるように弾け血が飛ぶ。


僕は体を捻り

残った脚でもう一撃、蹴りを放つ

しかしそれも虚しく弾き飛ばされる。


転がりながら

切断面が泡立つように塞がっていく

足が形を取り戻す

…再生。


ラヴィザは興味深そうに僕を見下ろしたまま

言葉を続けた。


「さっきの話からすると…

貴様と研究所の女は敵同士の関係だと言ったな…」


「そうですよ…」


息を整えながら答える。


「何故…協力して戦っている?」


僕は静かに続けた。


「それは…あなた達を止めるためです」


「その力が野に放たれれば

多くの人が犠牲になる

世界に悲しみが産まれる

…だから止める

利害の一致で…今は一時休戦してるだけです」


ラヴィザは少し黙る。


「…そうか…だが、腑に落ちんな」


指の関節を鳴らし、拳を握る

その視線は僕そのものを測っている。


「小僧、貴様の拳から…殺意が見えん」


「本気ならもっと踏み込めるはずだ。

なのに…貴様の攻撃はどこか迷いのある拳だ」


「…」


喉の奥が詰まる。


「…僕は」


「僕は、あなたたちを殺したいわけじゃない」


「止めたいんだ

止めて、檻に戻して…生きていてほしい」


先程の荒い戦いの中とは真逆の

僕の心を写したかのような静かな時間だった。


「敵でも…脅威でも…

僕は、誰にも死んでほしくない」


ラヴィザは笑った。


「…甘いな」


その一言が、冷たい刃みたいに刺さる。


「殺したくない…救いたい…言うのは勝手だ」


「だが覚えろ 救うってのはな…綺麗事じゃできねぇ」


「お前が殺したくないと躊躇した分だけ

相手は容赦なく奪っていく」


「奪わなければ、奪われる

お前が迷った一瞬で、誰かが持っていかれる」


「結局、何も守れねぇ」


僕の顔を覗き込むように、声が低く沈む

ラヴィザは真っ直ぐ言い切った。


戦場ってのはそういう場所だ

"甘えたやつから順番に全部持っていかれる"


そして最後に

父親が子どもに言い聞かせるみたいな声で告げた。


「小僧、殺したくないのはわかった

皆を守りたいというのもわかった…


「だが…まず甘えを捨てろ…」


「順番を間違えるな

救いたいなら、先に"殺す覚悟で止めろ"

止めてから、救いたきゃ救え」


「そんな拳だと…全部失うぞ」


「…」


僕は息を呑み、言葉を選ばずに答えた。


「わかりました」


「あなたを止めるために…容赦は捨てます」


ラヴィザは無言で、笑いながら構えた

僕は地面を蹴る

手加減はしない…甘えは捨てる

相手から選択を奪い取るための、踏み込み。

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