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ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
異形研究所(仮)
47/52

ep.47 "胎動する戦場"

シル ヴィアラ モニカvsラヴィザ ドレバン①

母のような面影を持つ異形人間…ドレバン

彼女は自分の服の腹部をためらいなく引き裂く

布が裂け、腹が露出した。


次の瞬間空気が変わった。


ドレバンが腹に手を当て、力を込めた

皮膚の内側から押し上げるような脈動が走り

体が鼓動のような一定のリズムで跳ね上がる。


血管の浮き方が変わり

そこだけ別の生き物みたいに黒く染まる。


───異鎧浸蝕オニキス・ハイド


彼女の異鎧浸蝕は腹部に集中していた

だが、見えたものが異様だった

黒く変質した皮膚は

ぽっかりと穴のように凹んでいた

傷口じゃない、裂けたわけでもない

最初からそういう器官としてそこにあるような穴。


(…異鎧侵蝕の失敗…?…未完成…?いや…)


ドレバンは異鎧浸蝕したと思うと突然 膝を突き

喉の奥から声にならないような呻きを漏らす。

痛むのだろうか?苦痛の表情

額に汗が浮き口元から涎が糸を引いて垂れた

それでも彼女は腹の穴を開くように

さらに力を押し込む。


そして、次の瞬間

腹の穴の中から何かが押し出される

ぬるりと音がしそうなほど生々しく

人型の、小さな影が一体

続いて二体

合計三体。


それは小柄な異形だった。


子どものようなサイズ

全身の皮膚は黒く、身体の輪郭は人間に近い

ところどころに赤黒い筋が走り

胸のあたりが熱で脈打っているように見えた。


(…何だ、あれ…)


理解が追いつかない

腹から出てきたという、まるで出産のような能力

ドレバンは荒い呼吸のままこちらを睨んだ

母親が子を守るときの目だった。


「…私の子どもたちを

化け物みたいな目で見ないで頂戴…」


その声は震えていた

言葉には純度100%の怒りが込められていた。


隣でヴィアラが告げる

ドレバンの腹の穴を見据えている。


「ドレバン…あいつの異鎧浸蝕は特殊だ」


「体内の異形の細胞を圧縮して

擬似的な個体…子供型の異形を生み出す」


ヴィアラの言い方は確信に寄っていたが

同時に全部は掴めていない慎重さもあった。


「子供異形は

炎の魔法を心臓代わりにして動いている…

核エネルギーとしてな…」


熱を燃料にして歩く異形兵器…しかも三体

異形の細胞と炎の魔法を両立させて攻撃する

見たことの無い戦法だった。


ヴィアラが悔しそうに続けた。


「ただ…あいつ

能力の内側を最後まで見せてこなかった…

分かってるのは、そこまでだ」


ドレバンは膝をついたまま

三体の子供異形を抱きしめるように腕を広げた

そして、こちらを殺す気の目で命令する。


「…行きなさい"可愛い子供達マイスウィートベイビー"」


子供異形が、一斉に踏み出した

小さな足が床を叩く音は…重い

次の瞬間には距離が消えていた

子供の皮を被った凶器だった。


「来るぞ!歯ァ食いしばれ!」


後ろではドレバンが目を瞑り

指揮者のように腕を動かす

恐らく指示役の役割をしている。


僕らに襲いかかる子供異形三体

僕は蹴りを入れる

…硬い。


当たった感触が、骨じゃない、石でもない

鉄の塊を蹴ったみたいに

こちらの足首が痺れるだけで

相手は一歩も揺れない。


ヴィアラの鋭く素早い拳の一撃

異鎧浸蝕オニキス・ハイドを纏った腕で

急所を正確に撃ち抜くも、子供異形は潰れない

殴られた衝撃を受け止め体勢すら崩さない

ダメージが通っているのかすら分からない顔で

次の動きへ繋げてくる。


…見くびった

子供だと油断していたが、一体一体が強い…

そして厄介なのは、強さだけじゃなかった。


次の瞬間、子供異形の口が

ヴィアラの腕に食らいついた

狙ったのは黒く変質した部分

…異鎧浸蝕の装甲。


「なっ…!」


同時に、別の一体が僕の足へ噛みつく

異鎧浸蝕した黒い"靴"に牙が沈み込む。


噛まれた痛みより異様さが先に背筋を走った

硬いはずの装甲を、迷いなく食っている。


全員が一瞬、動きを止める

"知られていなかった"子供の性質だった。


噛み千切られた黒い皮膚が

子供異形の喉へ消える。


すると

子供異形の体が、膨らみ始めた

骨格がミシミシと音を立て大きくなり肩幅が広がり

背がぐっと伸びる。


成長という言葉が追いつかない速度で

肉体が作り替わっていく。


(食った…?異鎧を餌に……!?)


ヴィアラが即座に結論を出す。


「異鎧浸蝕を解除しろ!」


その叫びで理解が繋がる

───間違いない。


こいつらは

異鎧浸蝕そのものを栄養にして強くなる

つまり僕らの切り札は"餌"だ。


(最悪だ…!)


噛まれ続ければ、どんどん相手が育つ

異鎧浸蝕なしで異形人間五体を相手にする

こっちは三人

人数的不利な上に、縛りがある。


絶望的状況だ。


そのときモニカが一歩前へ出た

顔色も呼吸も変えず、天へ手を掲げる。


「…指示役は、私に任せて」


一言そう言うと

彼女はドレバンへ向けて魔法を放った

黒い雲が生まれる。


外ではない…天井のある部屋で

黒雲が渦を巻き、分厚く成長している

雲は一瞬で広がり

モニカとドレバンの周囲を包み込んだ

視界が暗くなる

音が吸われる

空気の匂いが変わる。


ドレバンは察したのだろう

モニカだけを見て、怒りの目を向ける。


「…引き離すのね」


唇がわずかに笑う。


「でも、無意味よ…」


"母子分離フルオート"


黒雲が膨張し二人を完全に飲み込んだ

二人の声が消えた、姿が消えた

そこにあるはずの気配まで

雲の向こうへ隔離された。


「モニカのあれは…なんだ…?」


思わず漏れる僕の声に

ヴィアラが噛みしめるように答える。


「お姉ちゃんの魔法は水…というより雨だ」


「黒雲の結界に包まれたらもう出られない…

中は暴風みたいな豪雨が

四方八方から叩きつけてくる」


「黒雲に触れたら雷が落ちる

出口を探して触れた瞬間、感電で動けなくなる」


彼女は、最後だけ低い声で言った。


「…だが難点なのは一度発動すれば

どっちかが倒れるまで解けない…

捨て身のリングだ」


モニカはドレバンを隔離した。


残されたのは…僕とヴィアラ

ラヴィザと異鎧を餌に成長する三体の子ども異形。


~~~~~~~~~~


モニカの黒雲の中。


視界は夜みたいに暗く距離感が狂う

四方八方から雨が叩きつけてくる、逃げ場のない豪雨

髪も服も一瞬で重くなり

肌に貼りついた水が体温を奪っていく。


濡れる、冷える

それだけで呼吸が鈍り体力が削られる。


「…何よ、これ…」


ドレバンは困惑しながら呟く

一歩踏み出すたび足元の水が跳ね

雨が視界を裂く

どちらがどちらの位置にいるのか感覚が掴めない。


彷徨うように腕を伸ばし

黒雲の壁へ触れた瞬間だった。


空気が裂ける

轟音と閃光が同時に落ち

稲妻が一直線にドレバンへ噛みつく。


「ぐああああっ!」


叫びが上がる

だが、雨音がそれを簡単に飲み込む

雷に撃たれてもドレバンは倒れない

異形人間の耐久力は常軌を逸している

肉が焦げる匂いが混じっても

体はまだ戦える形のままだ。


ドレバンは歯を食いしばり怒鳴った。


「性格の悪い魔法ね…!親の顔が見てみたい…!」


返事はない

モニカは雨の向こうで、まっすぐと立っている。


「…あなたを隔離すれば

子供の異形は動かなくなると思ったけど…

誤算だったみたい…」


「まあいいか…あなたを殺せば

何か変わるかもしれないし…」


雨に掻き消されそうな小さな声

なのにその一言だけで空気が凍る

逃がさない、戦いを終わらせる

そういう殺意が形になっていた。


モニカは一歩を踏み出す

黒雲の中で戦闘態勢に入った。


「やろう…どちらかが、死ぬまで」


~~~~~~~~~~


「…まだ私たち二人を引き離すか」


雨も雷も届かないこちらの空間で

ラヴィザの拳がきしむほど握り締められる

怒りが骨にまで染みているみたいだった

しかしラヴィザは笑う。


「まあ良い…これを最後の別れにしよう

お前たちを倒し

私たち夫婦はこれから永遠に添い遂げる」


言い回しは滑稽

だが目だけは冗談じゃない。


腹の穴から生まれた三体の子供異形は

じりじりと間合いを詰めてくる。


母子分離フルオートだ」


「指揮役を潰せば終わり?甘い

こいつらは自動で敵を見極め、襲う…

母がいなくても獲物を狩るように作られている」


ヴィアラの額に汗が滲んだ

誤算…それが顔に出ている

モニカが母体を切り離せたのは大きい

だが、人数的不利は埋まっていないどころか…

広がった。


子供異形が一斉に踏み込んだ。


異鎧浸蝕した肌を喰らって膨れ上がったその身体は

さっきより一回り大きい 質量も速度も増している

小柄な姿だがその威力は…


僕は二体を引き受けた

足の擦る音が床を鳴らす

蹴って、弾いて、間合いを殺す

それでも崩れない 硬く重く、何度も迫ってくる。


そう思った刹那。


「油断するなよ、小僧」


背中から声

振りむいた瞬間

ラヴィザが子供の隙間から滑り込むように現れた

巨体のくせに速く、気配が薄い。


拳が僕の顔面を叩き抜く

視界が裏返り

頭が外へ吹き飛ぶ感覚がした。


でも、終わらない。


骨が戻り、血が巡り、肉が寄る

瞬く間に再生しながら僕は体を捻った

回し蹴りを叩き込む。


直撃。


…なのに、手応えがない

皮膚が鎧みたいに硬い。


(異鎧侵蝕なしじゃ…キツいな)


「不思議な体だな…」

痛むことなく、僕の攻撃を食らった一言がそれだ。


ヴィアラが子供異形を殴り飛ばし

僕の横へ滑り込み援護をしにくる

僕は反射で手を伸ばし、彼女を制した。


間違いなく僕はラヴィザの足元にも及ばない

それなのに

まるで近付くなと言わんばかりに腕を伸ばす

彼女に薄らと怒気の匂いが混ざる。


僕は彼女の圧を飲み、言う。


「異鎧浸蝕が使えない今…こいつは危険です

…僕がやります」


ヴィアラが噛みつくように叫ぶ。


「そんな非力で、何を…!」


分かってる

僕の攻撃が通らないことも

今の僕が、ただの足手まといということも。


それでも言った。


「僕は死なない」


「でも、あなたには命がある

ラヴィザは強い…ここで無理をする意味がない」


「…たとえ国の人間でも、敵でも

目の前で死なれたくない」


ヴィアラは、息を飲んだ

舐めるなという感情と、守られているという事実が

ぶつかり合っている。


そして彼女は歯を食いしばり

視線を子供異形へ移した。


「…ありがとう」


「私は子供異形に専念する

こいつらを倒す前に…絶対に倒れないで」


僕は頷いた。


ラヴィザがそのやり取りを眺め

楽しそうに口角を上げる。


「小僧…素晴らしい覚悟だな

女を守るために、そこまで体を張るとは」


嘲りかと思った、けれど違う

この男は妙に評価を口にする。


「女たらしの軟弱者だと思っていた…謝罪しよう」


僕は、思わず返してしまう。


「…ありがとうございます」


言ってから、自分で可笑しくなる

殴り殺しに来てる相手に礼を言うなんて。


でも、分かったこともある


出鱈目な強さ

出鱈目な性格

それでも…一本、芯が通っている。


(こいつを越えて…僕は強くなる)


足に力を込める

誰もが絶望して下を向く状況で

僕は前を見続ける。

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