表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
傷だらけの子供達
27/52

ep.27 "生者に口あり"

翌朝

僕らは西にそびえる塔の廃墟を目指し

出発の準備をしていた

カナも先生もすでに荷物をまとめ

家の前で僕らを待っていた。


「先生も来るのかァ!?」


アスノが目を丸くして声を上げた。


「うん…僕もこの戦いを見届けたいと思った」

と先生は言う。


「いいけどよォ…本当に危なくなったら

ちゃんと避難しといてくれよ」


アスノが釘を刺すと先生は真剣な表情で頷いた。

「君たちの足手まといにはならないつもりだ」


僕らは町を出て歩き出す

辺りを見回すと西の方向には森が広がっていた。


その奥、森の向こうに

虎牙組の占拠している塔がある。


森を避ければ安全だが時間がかかる

森を突っ切れば、最短ルートで行ける。


「決まりだなァ」


僕らは迷うことなく

森を突っ切って最短で塔へ向かった。


「じゃあ…走るぞ。置いてかれるなよ」


ロジェロがそう言って颯爽と駆け出す

アスノも僕も無言でその背中を追いかけた

おんぶされているカナも

背にしがみつきながら、前を見つめる。


ただ一人

先生だけがどこか辛そうな顔をしていた。


「ごめんなさい!

やっぱ足引っ張るかもしれないです!」

それでも息を切らしながら必死についてくる。


森を駆け抜ける途中、異形たちが牙を剥く

襲いかかる異形をアスノの拳が一撃で粉砕する

拳が岩を砕くような重い音を響かせた。


その凄まじさに

カナと先生は思わず息を呑んだ。


ロジェロも剣を抜き放ち、流れるような剣筋で

次々と飛びかかってくる異形を薙ぎ払う

フジの山道に比べればずいぶん動きやすかった。


僕は先頭を走る。


どんな罠が仕掛けられているか分からない

不意を突かれて攻撃されたとき

不死の僕なら耐えられるからだ。


僕もなんとか

飛びついてくる異形に食らいつき倒していく。


塔はもうすぐ…そう思った、その時。

空気を裂く鋭い音がした。


「!?」


飛来したクナイが一直線に僕の方へと向かった

クナイは脇腹に深く突き刺さる。


「シル坊!」


先生は悲鳴のような声を上げる。


(遠距離攻撃…

近接主体の二人には相性の悪い相手だ)


姿の見えない敵

アスノもロジェロも

間合いに入る前にやられてしまうだろう…。

瞬時に判断し、僕は振り返りざまに叫んだ。


「こいつは僕がやる、二人は先へ!」


一瞬戸惑うものの、アスノとロジェロは頷く

四人は塔へと向かった。


残された僕は

クナイが飛んできた方向へと

静かに視線を向ける。


森のどこかに潜む気配が濃くなっていく。


「我と一人でやり合おうとは…

舐められたものだ」


次の瞬間、男が音もなく

僕の目の前に立っていた。


急所だけを守るような木製の簡素な鎧と

動きやすそうな布の装束

硬い部分と柔らかい部分が入り混じったそれは

機動力と防御力、その両方を兼ね備えていた。


その姿は、まさに忍のようだった。


忍は腰に巻かれた

木製のベルトのような器具にそっと手を添える。


カチッと小さな音が鳴る。

次の瞬間そこから六本の飛びクナイが射出され

僕へと飛んできた。


体は追いつかず、クナイはすべて

胸、喉、心臓、腹…急所を正確に貫いた。


「不意打ち、申し訳ない…

我は卑怯が大好きなのだ…」


男は肩の力を抜き

もう勝負はついたと言わんばかりに

構えを解いた。


森の空気が静まり返る。


僕は無言のまま、心臓に刺さった一本を

指でつまんでそのまま引き抜く

他のクナイも、順番に抜いていった。


全身が、みるみる再生していく。


「…?」


忍は理解不能といった顔で目を見開く。


すぐさま忍は腰から小さな玉を取り出し

僕の足元めがけて放り投げた。


閃光弾。


炸裂した瞬間、眩い光が視界を真っ白にする

僕は目を閉じない…

眼球が焼ける。


焼け焦げても

網膜が傷ついても

目は再生する。


忍は勝ちを確信する

(何も出来ぬまま死んでゆけ…)


間髪入れずに次の手を繰り出す

網のようなものが、僕めがけて投げつけられる

それは空中で広がり

そのまま僕の体にぴったりと吸いついた。


力を入れても、網はびくともしない。

手足を締め付けられ、身動きが封じられた。


忍が一歩、間合いを詰める

鞘から抜き放たれた刀が大きく振りかぶられ

僕の胴を真っ二つに断ち斬った。


男は刀を静かに払って鞘に納める。


「戦いは、不意をついて

短期決戦で終わらせるのが効率が良い」


「卑怯だろうが…勝てばいい。

死人に口なしなのだ…」


勝利宣言のように言葉を吐いたその瞬間。


地面に転がっていた体は再生し、

僕はゆっくりと立ち上がった。


「死人に口なしか…」


服についた土を軽く払いながら、つぶやく。


「確かに短期決戦という

考えは間違いじゃないかもしれない…」


忍が信じられないといった表情で

僕を見つめる。


「…は?」


「僕はまだ死人じゃない。

口があるから、喋らせてもらうね…」


「戦い方は好きに選べばいいと思う。

ただ、その結果は…」


「僕が選ばせてもらう」


「なんだあぁぁぁぁ貴様はああああああ!」


忍が叫ぶ

腰のベルトから

飛びクナイが狂ったように乱射された。


何本もが僕の体に突き刺さる

それでも、僕は足を止めない

真っ直ぐに忍へ向かって歩み続ける。


距離が詰まったところで

僕は踏み込んだ勢いのまま前蹴りを放った。


蹴りは忍の胸元をとらえ

男の体は後ろへ大きくよろめく。


「まだ名前も知らないけど…」


僕は胸に突き刺さった一本を抜き

そのまま地面に捨てた。


「早く退いてほしい…急いでるんだ」


(虎牙三傑の我が…舐められている…!)


忍はすぐに立ち上がり再び刀を構えた

怒りのままに踏み込み、斬撃を叩き込む

刃が僕の肉を裂き血が舞う

だが僕は、一歩も引かずに前へ進む。


それが圧となり男を追い詰める。


(こいつ…狂ってやがる…)

忍の額に汗が滲む。


刀が僕の胸元へ向かって振られた瞬間

ふと、ロジェロの言葉が脳裏をよぎる。


『貴様は再生するからいいかもしれんが…

自分の体を、もう少し大切にしろ』


「…」(確かにな)


僕は小さく息を吐き、一度だけ

真正面から力任せに振られる刀を避ける。


(こいつ…刀を避けた…?

再生するから平然としていたんじゃないのか…

まさか、限界が来たか…?)


動揺しながらも忍はすぐに追撃に移る

今度は迷いのない

確実にトドメを刺すような一刀。


それはさすがに避けきれず

僕の体を再び深く裂いた。


「うーん、やっぱ難しいな…ロジェロ、ごめん」


ぼそりとつぶやきながら

僕はそのまま回し蹴りを放つ。


練習中のぎこちない攻撃だったが

それが幸いし、蹴りは忍の顎をかすめた。


顎を揺らす衝撃に男の体がぐらりと傾き

気絶する。


僕の体は

斬られたそばからもう再生を始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ