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ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
山頂の四季
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ep.16 "大剣の魔法使い"

「町中を全部回ったけど…

やっぱり母さんの匂いはどこにも無い…」


ユーリの嗅覚は人間の域を越えていて

走る速さは風そのものだ

路地という路地を駆け抜けた

それでもツワブキの痕跡は

どこにも残っていなかった。


「やはり…

あの町長ブラムからの手紙は本当なのか…」


マリーは静かに紙を広げる

紙の上にはフジの町と

その最北に構える町長の館が描かれている。


「町長ブラムの館

地下二階、地上三階の計五階。

内部は複雑で、警備もかなり厳しい。

牢があるとするなら恐らく地下二階…」


「表向き貯蔵庫って

ことになってる区画が怪しい」


ロジェロはじっと地図を見下ろし

剣の柄を強く握る。


「…行くしかないな」

その声に三人の視線が集まる。


山頂の四季(クレストカルテット)が揃っている

…ツワブキ母さんを必ず救う」


四人は頷く

あの頃の絆、その再集結だった。


「先陣は戦い慣れている私たち二人が切る」

ゼラが拳を鳴らす。


「ユーリは後から

ツワブキ母さんの匂いを追ってくれ

マリーは館の構造解析を頼む」

二人は真剣な顔で頷いた。


「ブラム…絶対に許さない」

ロジェロがそう言い

山頂の四季は走り出した。


~~~~~~~~~~


町長の館の前は妙に静かだった。


まるでこれから起きることを

すべて知っているかのような…

不気味な静けさ。


正面突破だ

ロジェロが短く告げる。


馬鹿正直なその案がいかにもロジェロらしく

ゼラは思わず口元を吊り上げた。


「…なら裏口からコッソリ侵入するか?」


ゼラはニヤリと笑い首を横に振る

「大人になってもロマンは忘れたくねぇ」


その言葉にロジェロもまた

わずかに笑みを浮かべた。


…行くぞ。


ロジェロとゼラが同時に駆け出す

二人の剣が扉に叩きつけられ鈍い衝撃音が鳴る。


「反逆者だぁあー!!」


館の中に警備兵の叫びと

兵士の怒号が響き渡る。


ロジェロの眼は鋭く光っていた

「情けは…不要だ」

親を奪う者への慈悲など無い。


奪われた分は──奪い返す。


ゼラは左側の通路へ走る

「生きて戻れよ」


私は静かに頷き、右側へ駆け出した。


~~~~~~~~~~


右の通路へ駆け込んだロジェロは

角を曲がった瞬間足を止めた。


広い廊下いっぱいに兵士が詰め込まれていた。


無数の槍、剣、盾…

銀色に光る刃がこちらを向いている。


「…金で雇いすぎだ…!」


兵士全員が同時に突っ込んできて

足音が床を震わせ、まるで地震だ。


だが私は一歩も退かない。


こんな金で集めただけの兵に屈していたら

国を敵に回すなど夢のまた夢だ。


私は刀を胸の前で構え

足を強く踏み込む。


"散華ざんげ"!


斬撃は花びらのように舞う軌跡を描く

兵士たちの鎧の隙間を容赦なく切り裂いた。


悲鳴が重なり、次々と兵士が崩れ落ちる

背後から突き出された槍が脇腹をかすめた

熱い痛みが走るが、恐れず振り払う。


兵士の攻撃をいなし、その勢いのまま斬り返す

次の敵が背後から迫る

床を滑るように身を低くして抜け、膝裏を斬る。


一瞬の隙を逃さず突きを入れると

肩に返り血が落ちる

息が荒くなる。


しかし──足は止めない。


「私は…アーヴェス兄様を超えて見せる!」


兵士の叫びと共に踏み込む

鋼の衝突音が鳴り、火花が舞う。


何分経っただろう…永遠のような戦いの末

廊下は静まり返った。


倒れ伏す兵士たちの間を歩きながら

私は剣を鞘に収める。


「…ゼラは…大丈夫だろうか」

胸の奥を押さえる

仲間が心配になる。


後方からマリーが追いつく

戦闘は得意な方ではない…

あまり無茶しないように伝えた。


マリーは建物の構造に

妙な違和感を感じていたが…それが何なのか

まだ言葉に出来ずにいるようだった。


私たちは

その違和感を胸の片隅に残したまま

次の階へと駆け出した。


~~~~~~~~~~


その頃

ゼラもまた群がる兵士たちの真っただ中にいた。


「母さんを…返せッ!」


吠えるような叫びと共に、大剣が振り回される

兵士はそのまま壁に叩きつけられて沈む

ゼラは一歩進むたび

地面が揺れるほどの重さで踏み込む。


その姿は、まるで突進する鬼神そのものだった。


彼は大剣を天へ掲げる

次の瞬間、刃全体が赤い火炎に包まれた。


「言っとくが…俺は剣だけの男じゃねぇ…

魔法も使えるんだよ!」


炎を纏った大剣が振り下ろされる

前方の兵士たちが一斉に吹き飛び

床ごと焦げ付く。


近づく者はいない

いや──近づける者がいなかった。


さらにゼラは片手を握りしめる

氷の魔法が地面を這うように広がり

数人の兵士の足元を瞬時に凍結させた。


動きを奪われた兵士たちへ

ゼラはためらいなく一歩踏み込み

叩きつけて戦闘不能にする。


その気迫だけで

兵士たちの動きが鈍るほどだった。


「家族の絆を邪魔するやつは…潰す!」


風のような速さでユーリが背後から現れた。

「ゼラ!大丈夫!?」


大剣を肩に担ぎ直し

息を整えながらニッと笑う

「こんな雑魚で倒れねぇよ。心配すんな」


だが少しだけ視線を上に向け、呟く

「…ロジェロは、大丈夫なのか…?」

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