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ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
山頂の四季
13/43

ep.13 "ロジェロの故郷"

ミズイの町を出る時は…まだ太陽は沈んでいた

本当はもう一泊してから出る予定だった。


この町の出来事の余韻もまだ抜けきらないまま

想像より早く

僕らは王国全土に指名手配をかけられた。


罪状は…国家反逆罪。


提示された賞金額は

「王都での生活と

一生遊んで暮らせる額の支給」


もうどこで息を潜めても安全ではない…

明白だった。


本来向かうはずだった町には行かず

アーヴェスが異形を掃討したことで

一時的に平穏になっている"迷いの森"を抜け

最短で王都へ向かう道を選んだ。


その先にある町を指して、ロジェロが言った

「…私の故郷だ」


王女だから王都生まれじゃないのかと尋ねると

「言い方を間違えたな。第二の故郷だ」


王都で生まれたが…

十一で捨てられてから、そこで世話になった

…挨拶くらいは、しておきたい。


ロジェロにとってその町がどれほど大切か

なんとなく分かった。


しばらく休む場所としても丁度良い

僕らはその町に行くことを決めた。


~~~~~~~~~~


"迷いの森"へ入ると、不気味なほど静かだった。


本来なら解呪異形が

木々が意思を持ったように動かし

道を塞ぎ、侵入者を惑わせる

それが"迷いの森"と呼ばれる由縁だが…


いまはただの大きな森にしか見えない。


「…おい、あれ」


アスノが指差した先に

小さな子供の異形が四匹

敵意も覇気もなく、ただ立っている。


アーヴェスが森の個体をほぼ全滅させたことで

残った個体が怯えきっているのかもしれない。


僕たちは彼らを刺激せずそのまま森を抜けた。


~~~~~~~~~~


森を越える。

巨大な山脈が空に隠れるほど連なっていた。


「おォ~こんなとこに町があんのかァ?」

アスノは山を見上げて呟いた。


たしかにその中腹にフジの町はあるらしい。


「高度が高いから酸素が薄い

私はここで剣を教えてもらっていた」


なるほど彼女の強さはこの環境が理由か。


ロジェロの足取りは軽かった

懐かしさからか

子どもの頃のような笑顔を浮かべている。


山道の異形は

今までの個体と違って明らかに強かった。

動きも速く、放たれる一撃一撃が重い。


「アスノ、稽古をつけてほしい」

思わず口が動いていた。


アスノが嬉しそうに笑い、戦いを教える

足の向き、腰のひねり、拳の軌道…

僕は意識を集中させ拳を振り抜いた。


異形が吹き飛ぶ。


ロジェロとアスノが同時に驚きの声を上げる

正直一番驚いていたのは僕自身だ。


ミズイの町の暴走後

確かに身体の奥底が

熱を帯びているような感覚はあったが…


しかし異形は倒せておらず、再度起き上がった。


そして、アスノには遠く及ばなかった

強くなったとはいえ、ほんの少しだ

まだまだ道は遠い…


それでも確かに一歩前へ進んでいる気がした。


~~~~~~~~~~


フジの町の入口にて


僕らはロジェロを止めた

国家反逆罪の指名手配中だ…

故郷とはいえ

そのまま歩き回るわけにはいかない。


ロジェロは渋々フードを深く被り

変装を受け入れた。


山の中腹に開けたその町は

想像以上に大きかった。


石造りの家が並び、ほとんどが二階建て

ミズイよりも裕福で綺麗に整えられている。


「…私がいた頃とは、ずいぶん変わったな」


ロジェロは驚きと戸惑いが

入り混じった顔で辺りを見渡す。


住民たちの体格は若干の大柄で

山の薄い空気に適応したからだと

ロジェロは説明した。


武器屋へまず入ると

アスノとロジェロは子供のように目を輝かせて

店内を見て回った。


立派な剣や槍が並ぶ

しばらくして二人は満足げに店を出る。


その時だった。


「あら…その顔…ロジェロちゃんかい?」

振り向くと、ひとりの老女が目を細めて

こちらを見つめていた。


ロジェロの肩がびくりと跳ねる。

「ハ、ハスおばあちゃん…?

…隠していたのに、見つかってしまったな」


老女は顔を崩して笑った。


「あらまぁ!やっぱりロジェロちゃんだよ!

久しぶりじゃないかい!」


暖かい再会…そう思ったのも一瞬だった

突然、老女の表情が歪む。


「──金が帰ってきたよォォォォ!!」


喉が裂けるような叫び声

周囲の人々が振り向き一斉に走り寄ってくる。


「…なっ…」

ロジェロの表情が曇る。


「ロジェロ!?王都生活は私のもんだ!」

「絶対に儲かる話に興味無い!?」

「私覚えてる!?お菓子あげたでしょ!?

うちに来てよ!またお菓子あげるから!」


狂気的な熱気が町全体を飲み込んだ

まるで群がる獣だ。


ロジェロは声を失っていた

その姿はあまりにも痛ましかった

かつて彼女が大切な場所といった町が

別物になっていた。


そのとき、木陰から小さな影が手招きした。


「ロジェロ!こっち!」


ロジェロはその声に即座に反応した

「…マリー!?」


僕らはその少女に導かれ

必死に町を駆け抜けて山の上へ逃れた。

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