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ReBlood.N  作者: 毎日がメスガキに敗北生活
不死身の少年
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ep.10 "血を喰らう"

僕はアーヴェスに向かって、歩み寄る。


「愚かな…奴隷幇助(ほうじょ)と国家反逆の罪で

貴様を処分させてもらう」


アーヴェスは剣を抜く

異形を一瞬で屠った炎を纏う剣だ

あのときと違うのは

今その攻撃の矛先が

僕ひとりに向いているということだった。


眩い発火と共に、視界が焼かれる

斬られた…と言っていいかわからない感触

凄まじい斬撃と炎が同時に襲いかかり

僕の上半身は吹き飛んでいた。


痛い…

焼けるような痛みが全身を駆け抜ける

今までの僕だったら

とっくに気絶していたはずだ。


でも、こいつの…

こいつらの手によって

犠牲になった人たちのことを考えると

不思議と立ち上がろうと思えた。


千切れた下半身から肉がうねり

骨が伸び、筋肉と皮膚が覆う

少しの間を置いて僕の上半身が再生した。


アーヴェスは目を見開いた

「…な…!?」


僕は静かに彼を睨み、足を前に出す。

アーヴェスは信じられないという表情のまま

再び剣を振る。


斬られては、再生。斬られては…再生する。


「な…なんだ…こいつは…!?」

焦りが、その声から分かる。


距離を詰め、目の前に立った僕は

アーヴェスの顔面に渾身の力で拳を叩き込んだ。


しかしその威力は所詮一般人

アーヴェスはほんの少しもよろめくことなく

まるで効いていなかった

…知っていたさ。


「…そんな力で私に挑んだのか…?」

彼は、ほっとしたように笑みを浮かべる。


「得体の知れない化け物め…

異形なのか? 貴様は」


「…気味が悪い」

吐き捨てるように言うと楽しげに目を細めた。


「だが…ちょうどいい。

最近は楽な戦いしかなくてな

体が鈍っていたところだ…

貴様は───良いサンドバッグになる」


アーヴェスはニヤリと笑い剣を構えた。


その次の攻撃は、目で追えないほど速かった

一撃一撃が、普通の人間なら

即死してもおかしくない威力の剣技。


だが斬られても瞬時に回復する。


僕はそれをひたすらに喰らい続ける

斬られ、吹き飛ばされ、血を撒き散らしながら、それでも構えを取りなおして拳を振るう。


アスノから教わった双竜拳も浴びせてみるが

アーヴェスは微動だにしなかった。


やがて斬られ続け

ヨダレを垂らし白目を剥くも

散っていった人たちのことを考え

…殴ることだけはやめなかった。


(…気絶しそうだ。何回斬られたんだろう)


頭がチカチカする

彼が五十回ほど剣を振るう間に

僕がまともに出せた殴りはせいぜい三発。


もうこのまま死んでしまいたいと

薄らと思い始めてしまったとき

足に力が入なくなり、その場に崩れ落ちた。


そして気づくと僕は

アーヴェスの腕に噛みついていた。


噛みつきという…人間の本能的な攻撃

子供や女性でも皆等しく使う防衛手段。


僕は無意識のうちに

本能のまま噛み付いていた。


「…離せ」

アーヴェスは

その醜さに苛立ちを覚えたような低い声を出す。


白目を向き、意識はほとんど飛びかけている

顎の力を抜いた瞬間

そのまま倒れてしまうことは分かっていた。


絶対に…離さない…

執念だけで顎に力を込め続けていると

ふいに気づいた。


僕は、人間の本能的な噛みつきの最中に

夜叉ヴァンパイアの本能的に何かを吸っていた。


それは、温かくて鉄の味のする液体

血だった。


「…!貴様、いい加減にしろ!汚らわしい!」

アーヴェスは激昂し思い切り腕を振りほどく

牙が肉から引き剥がされ

腕から血が噴き出した。


「気持ちが悪い…血を吸っていたのか?」


僕の身体は吹き飛ばされ地面に叩きつけられる

それでも最後の力を振り絞って

その血を喉の奥へと流し込んだ。


その瞬間

体がふっと軽くなった。


なんだ、この感覚は…

痛みが遠のいていく

自然と笑みがこぼれた

心も軽くなる。


綿毛のように、重力を感じない

血を吸った途端僕は

「いまなら何でも出来る」と思ってしまった

そして…アーヴェスに向かって再び襲いかかる。


──ここから先の記憶は

途切れ途切れでほとんど覚えていない。


はっきりしているのは

「自分で自分を操っていなかった」ということ。


魂が抜け…自分とアーヴェスの戦いを

空から見上げている感覚

水の中で波に身を任せ揺れているような感覚

悩みとか考えとか全てがどうでもよくなる感覚。


僕は笑いながら

アーヴェスの左脇腹を抉っていた


「うおああああああああ!!!」

アーヴェスが叫んでいる。


ここから先の記憶はなかった。


次に意識を取り戻した時

夜叉ヴァンパイアの能力者であろう

白髪の少年に心臓を貫かれ

僕に向かって剣を構えるロジェロと

アスノの背に守られるようにして

倒れるアーヴェスの姿があった。

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