チャプター3 — ちょっと愛しすぎな姉!
翌朝、僕の部屋で、まだ眠気で頭がぼんやりしているところに、突然肩を強く揺さぶられた。
—「おい!起きろ!」
隣でエリエが叫ぶ。顔にはいつもの大きな笑顔。
僕は半分閉じたままの目でうめく。
—「エリエ…なに…ちょっと、まだ寝かせてくれ…」
—「ダメだ!」と、彼はまるで勝ち誇ったように言う。
—「今日はただの日じゃないんだ!」
僕はゆっくりと体を起こし、目をこする。
—「説明して…叫ぶのはやめてくれ。」
エリエはベッドに飛び乗る。
—「ヘレナが帰ってくるんだ!」
その言葉が現実とつながるまで、頭が数秒かかった。
—「ヘレナ…?帰ってくるって…でも…僕は…え?」
エリエは力強く頷く。
—「そう!僕たちの姉だ!首都から戻ってくるんだ!今日、うちに来るんだよ!」
僕はうめく。
—「やれやれ…もう十分に僕の生活に干渉してくる人がいるってのに。」
エリエはくすくす笑う。
—「ああ、見ればわかる…ヘレナは…相変わらず…特別だ。背が高くて、細くて、膝まで届く茶色の髪…君をまるで宝物みたいに見つめるだろう…そして僕は、もちろん大好きな弟として。」
僕は目を転がす。
—「素晴らしい…つまり、君みたいに僕も構い尽くされるってわけか。」
エリエは爆笑する。
—「それだけじゃない、小さな天使!あの子は…どう言えばいいか…僕ら二人に夢中なんだ。僕を小さな弟として可愛がるけど、君…エンジェル…君にはまるで天から落ちた天使のように愛を注ぐだろう!」
僕はため息をつく。
—「最高だな…で、いつ来るんだ?」
—「今日だ!」エリエの目は輝いている。
—「見るがいい…激しい一日になるぞ。とても…激しく。」
僕はベッドに身を横たえる。諦めのような気持ちと、胸の奥にわずかに混ざる期待と不安。ヘレナ……エリエの実の妹……十五歳、背が高く、すらりとした体型、長い栗色の髪に、紫の瞳。そして…どうやら僕に夢中らしい。もちろん、彼女は小さな弟であるエリエのことも愛している。今日一日が穏やかで済むはずもないこと、そして僕のいつもの平穏が大きくかき乱されるだろうことを、直感として感じていた。
エリエが肩を軽く叩き、笑う。
—「さあ、起きろ、小さな天使!君の生活はさらに…複雑になるぞ。」
僕はぶつぶつ言いながらも立ち上がる。期待と少しの不安が混じった心で、この爆発的な出会いを迎える準備をする。
階段をゆっくりと降りる。まだ寝ぼけた意識の中で、リビングは朝の光に包まれ、穏やかだ。しかし、すでに空気には小さなざわめきが漂っていた。
エリエは立って、ポケットに手を入れ、顔を輝かせている。ヘレナ――僕の養姉であり、エリエの姉――が彼に近づき、満面の笑みを浮かべる。
—「ああ!エリエ!私の大好きな弟…元気だった?」
彼女は両腕を広げ、抱きつこうとする。
エリエは一瞬戸惑うが、すぐに抱擁を受け入れる。その後ろで、僕が階段を降りる。長剣を背に背負い、手はまだ包帯で覆われている。
ヘレナが僕に目を向け、目を輝かせた。まるで暗い部屋に光が差し込んだかのようだ。口をわずかに開け、驚きで言葉を失う。
—「エンジェル…!!!」
彼女は震える声で、喜びと興奮を抑えきれない。
エリエが反応する前に、ヘレナは彼から離れ、僕の方へ駆け寄る。一瞬で僕の包帯に包まれた小さな手を握り、僕が現実にいることを確かめるかのように指を絡める。
—「ああああ!!!いた!ついに、私の小さな天使がここに!!」
声は震えているが、喜びに満ちている。
—「まさかこんなに早く会えるなんて!」
僕は驚きで固まる。熱気と優しさが体を包み、胸が高鳴る。彼女の紫の瞳は、アンジェリーナが僕を見つめるときのあの崇拝の瞳に匹敵する。
—「ヘ…ヘレナ…ぼくは…」
言葉が詰まる。手を離すこともできない。
—「しーっ!話さなくていい…ただ…ここにいて」
彼女はさらに力を込め、僕を抱きしめる。
—「すごく会いたかったの!」
エリエは背後で腕を組み、くすくす笑う。
—「へへ…どうやら、養弟が朝の注目を全部持って行ったようだな…」
僕は彼に視線を向け、少し恥ずかしそうに笑う。ヘレナは小さな手だが、驚くほど強く僕の手を握り続ける。時間が止まったようだ。リビングも太陽も光も消え、二人きりになったかのように感じる。
—「どれほど…会いたかったか、わかる?」
彼女は目を輝かせ、心からの言葉を吐き出すようにささやく。
ヘレナは包帯で覆われた僕の手をそっと握り、言葉なく愛情を伝える。エリエはため息をつきながら、楽しげにその様子を見守る。今日、この日、静かな時間は訪れそうにない。
彼女は手を離すが、視線は僕から離さない。笑顔は輝き、発する言葉は空間にエネルギーを満たす。
—「聞いて!ヴォルタの大首都にある大戦士学院から戻ってきたの!」 彼女は跳ねるように嬉しそうに言う。
—「大戦士学院?国の未来の戦士を育てるあの学校か?」 とエリエは眉をひそめる。
—「そう!まさにそこ!剣士、暗殺者、魔法使い、戦術家、科学者、弓術師…すべて教えてくれるの!」
彼女は目を輝かせ、手を小さく動かして表現する。
僕は少し背筋を伸ばす。
—「で…どうだった?」
—「最高!本当に最高!訓練も模擬戦も戦略の授業も…たくさん学んだ!仲間も素晴らしい、それぞれが独自の技と力を持っていて…信じられないくらい!」
エリエが僕にちらりと視線を送る。
—「ふむ…じゃあ、二人で来いってことか?」
ヘレナは嬉しそうに跳ねる。
—「もちろん!二人で来てほしい!想像して…君…エンジェル…もっと強くなれるし、学べるし…無敵にだってなれるかも!」
僕は眉を上げる。
—「無敵、か…そして君の暴走についていけって?」
彼女はまばたきし、小さな笑いを漏らす。
—「違う!ついてくるんじゃなくて、一緒に学び、一緒に成長し、私を強くするのを手伝ってほしいの!」
僕は胸の奥が熱くなるのを感じる。首都、学院、新しい知識、挑戦…そしてヘレナのこの溢れる熱意。
エリエは首を振り、笑みを浮かべる。
—「よし、小さな天使。君は伴侶と課題を持ってヴォルタに行くことになるな。」
僕はため息をつく。半ば諦めつつも、胸には冒険心の火が灯る。この学院は新しい世界だ。もう、以前のような日常には戻れないと感じる。
ヘレナは勝ち誇ったように笑う。
—「さあ?準備はいい?」
僕はゆっくり頷く。
—「できる限り、準備はしてる。」
エリエは爆笑。
—「完璧だ!覚悟しろ、エンジェル。ヴォルタの大学院が君の力を試す…そして君が何を持っているか、楽しみだ。」
胸に冒険の炎が灯る。新しい物語の始まりだ。そして今度は、僕は一人じゃない。
太陽は丘の向こうに沈み始め、ヘレナは僕を家の裏の小さな練習場へ連れて行った。
彼女は僕と同じ長剣を持っているが、重さや扱いやすさは彼女の体格や力に合わせて調整されていた。
—「さあ、小さな天使…私と勝負する準備はできた?」
ヘレナはいたずらっぽく微笑む。
僕はうなずく。手はまだ包帯で覆われ、心臓は高鳴り、筋肉は緊張している。
—「準備できた。」
ヘレナは低い構えを取り、まるでいつでも飛びかかれるかのように柔らかく、流れるような動きを見せる。
僕も同じく構える。筋肉に力を込め、体を研ぎ澄ます。
微かな風が練習場を吹き抜け、埃が舞う。
最初の攻撃はヘレナからだった。驚くほどの速さで突進し、剣先が地面をかすめ、衝撃の波が僕を後退させる。
僕は長剣で迎撃する。素早い斬撃、フェイント、円を描くような動き。
すべての動作を計算するが、彼女はほとんどの攻撃を軽やかに受け止める。その技量に驚かされる。
—「悪くないわね、エンジェル!」
彼女は一歩下がり、僕の速度を見極める。
—「ずいぶん上達したわ!」
僕は少し微笑む。息は荒いが、集中は途切れない。
—「まだ半分も見せてないよ!」
僕はリズムを変え、攻撃をより速く、鋭く、力と速度を組み合わせる。
複雑な連携攻撃を試みる。斜め攻撃、フェイント、後ろ足での回転、低い払いでヘレナの防御を崩す。
彼女は避け、後退しつつも、目は興奮で輝く。
—「わあ…本当に成長したわね、エンジェル」
彼女は感心した声で言う。
—「攻撃の精度も速さも完璧…」
僕は一瞬呼吸を整え、動きを観察する。
彼女の一つ一つの動作は正確で、僕の攻撃を予測しているが、それでも僕は素早く横腹へ突きを滑り込ませる。
ヘレナは間一髪で身を低くし、大きく笑う。
—「悪くない、悪くないわ!」
彼女は剣で僕の剣を弾き、しばし距離を取る。
—「二年間もエリエと訓練してきたんだから、速くなるのも当然ね!」
戦いは続く。剣がぶつかり、金属音が響く。
疲労が体に広がるが、諦めない。攻撃一つ一つ、回避一つ一つが学びだ。
ヘレナは時折笑い、励まし、僕が予想外のフェイントを決めると軽く息を吐く。
—「本当に…強いな…」 彼女は僕の攻撃を受け止めながらつぶやく。
—「そしてどんどん上達している!」
僕は息を整え、腕の震えを感じながらも笑う。
—「君も…相変わらずすごいね。」
彼女は軽く頭を傾け、瞳に輝きと熱意を宿す。
—「まだ終わりじゃないわ、エンジェル。指一本も動かせなくなるまで続けるのよ!」
戦いは激しく、休む暇もない。
だが一撃一撃が僕のスタイルをより流動的に、より強力に、より確実にしていく。
ヘレナは観察し、動作を修正し、励まし、全力で戦う。
この一瞬一瞬が、僕の自信と制御力を強化してくれる。
—「本当に信じられない、エンジェル」
彼女は最後の素早い攻撃を僕がかろうじて受け止めた後、軽く押しのけながら言う。
—「君の可能性は計り知れないわ!」
息を切らし、筋肉が燃えるように痛む。
僕は笑みを浮かべ、手に巻かれた包帯で長剣を握る。
—「ありがとう…ヘレナ…こんなに長く戦えると思わなかった。」
—「でもできたじゃない」
彼女は顔の髪の毛を払いながら微笑む。
—「これは始まりに過ぎないわ。でも感じるの…君ならヴォルタで多くの戦士を超えることができるって。」
僕はゆっくりと暗くなる空を見上げる。額を伝う汗、だが内なる炎はさらに強く燃える。
ヘレナを師として、エリエを手本として、僕は本当に目指す戦士になれる気がする。




