表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『天使と紫の炎』  作者: Bro_Be_Like_83
第4部 — 優しきヴォルタ王国および氷霜のエーテル王国における数多の戦闘。
61/62

チャプター52 ― 天使に贈る甘いチョコ。

しばらく歩くと、俺たちは小さな店の前に着いた。

店内からは、温かいココアとキャラメルの甘い香りが漂ってくる。

ガラス張りのショーウィンドウには、繊細な金色の模様があしらわれ、その向こうには完璧な形のチョコレート、フルーツ入りのタブレット、小さなアート作品のようなチョコがずらりと並んでいた。


ヴァイオレットが軽やかに一歩前へ進み、目を輝かせる。

「わあっ!エンジェルくん!見て、このチョコの数々!きっと最高のやつ、見つけてあげるからね!」


ブランシュは少し距離を置き、優雅で落ち着いた歩みで彼女の後ろに続く。

ショーケースを眺め、眉を少し寄せるが、口元には柔らかい笑みが浮かんでいる。

「ヴァイオレット、ちょっと落ち着きましょう。急ぐ必要はないわ。選ぶなら、本当に完璧なものを。」


ヴァイオレットは、ほとんど飛び跳ねるように最初のカウンターに向かう。

「でも、いっぱいありすぎるよ!どうやって決めるの!?!」


ブランシュは彼女に身を乗り出し、落ち着いたけれど毅然とした声で言う。

「まずはガナッシュからね。そのあと、他のチョコを見ていくの。エンジェルくんには最高のものをあげたいの。だから、焦らず慎重に。」


ヴァイオレットは俺に向き直り、目をキラキラさせる。

「ねえ、エンジェルくん、ビター派?それとも甘めの方がいい?」


「うーん……どっちも好きかな……君たちに任せるよ。」


ブランシュは、変わらぬ落ち着きで小さなチョコレートの板を手に取る。

「これは自家製よ。きれいに包装もできる。見て、品質も見た目も完璧。」


ヴァイオレットはキャラメル入りのホワイトチョコの箱をつかみ、嬉しそうに掲げる。

「で、これも!これもエンジェルくんのため!絶対美味しいんだから!」


「ヴァイオレット……」

ブランシュが優しく微笑む。

「そんなに大げさにしなくてもいいのよ。でも、あなたのその熱意は分かるわ。」


俺は二人を見つめる。

その仕草は正反対だ。

それでも――二人とも、同じ温度で俺を見ている。

ヴァイオレットはぴょんぴょんと落ち着かず飛び跳ね、ブランシュは優雅に指先をチョコに滑らせ、ひとつひとつの感触を確かめるかのようだ。


「エンジェルくんには最高のものをね。」

ブランシュが俺に向かって微笑む。

「私たちが、どんな気持ちで選んだのか――それだけ、受け取ってくれたらいいわ。」


「ありがとう……」

少し赤くなりながら、俺は小さく呟く。


ヴァイオレットは跳ねるように喜び、そっと俺の腕を握る。

「でしょ!ちゃんと頑張ったでしょ!」


ブランシュはさりげなくも真剣な笑みを浮かべ、空を見上げる。

「ええ、よくやったわ……さあ、エンジェルくん、一緒に選びましょう。」


俺は笑みを返し、二人の姿を見ながら、全てを味わって確かめるしかないと悟る。


数分の議論と軽い試食の後、ヴァイオレットとブランシュはようやく店を出る。

二人とも、大事に包装された箱を手にしていた。


「できたー!」

ヴァイオレットが叫ぶ。頬は赤く、

「……気に入ってくれるといいな、エンジェルくん!」


彼女が差し出す箱の中には、ミルクチョコとプラリネで作られた、ハート型のチョコが丁寧に並んでいる。

少し頭を下げ、白い髪が顔にかかり、微笑みがこぼれる。

喜びと照れが混ざった、小さな光のような笑顔だった。


ブランシュは、自分の箱を差し出す。

ヴァイオレットのものと似ているが、表情は落ち着きと優雅さを保っている。

頬にわずかに淡い紅が差し、ほとんど見えないが、澄んだ青い瞳には静かな温かさが宿っていた。


「エンジェルくん……これを選んだの。ヴァイオレットと同じくらい、気に入ってくれるといいけれど。」

柔らかくも落ち着いた声で、彼女の指先がそっと薄紙に触れる。


「ありがとう……本当に、二人ともすごいよ。」

少し恥ずかしさを感じながら、俺は小さく呟く。


ヴァイオレットはさらに赤くなり、下唇を噛みながら体をそわそわさせる。

ブランシュは微かに頭を傾け、穏やかで静かな笑みを浮かべ、ヴァイオレットのはしゃぎっぷりと好対照を成していた。


「さあ……そろそろ散歩の続きをしようかな?」

ヴァイオレットが手をぱっと振りながら、興奮を隠そうと声を張る。


「ええ」

ブランシュは落ち着いた声で答える。

「まだ街中を歩くには道のりが長いわね。」


俺は心の中で微笑む。

二人の気遣いの違いに心が温かくなる。

俺たちは再び街の中心を歩き始める。

箱をしっかり抱え、まるで小さな宝物を守るかのように進む。


ヴァイオレットとブランシュはそっと店の扉を閉め、朝の空気に鈴の音が一瞬だけ響く。

二人はエリーとエスターのもとへ向かう。

彼らは歩道の上で静かに談笑していた。


「で、どうだ?」

エリーがにやりと笑いながら声をかける。

「俺の天使を堕落させるものは見つかったか?」


「ちょっと!」

ヴァイオレットが抗議する。顔は赤くなり、箱をぎゅっと抱え込むが、笑顔は弾けている。

「……これは、ただのエンジェルくんのためなの!」


「いい選択ね、きっと喜んでくれるわ。」

ブランシュは落ち着いた口調で俺に箱を差し出す。

顔は無表情だが、瞳には柔らかな温かみがあり、冷たい太陽の光のように感じられる。


「ありがとう……本当に、二人ともすごいよ。」

俺は少し戸惑いながらも口ごもる。

手はまだ荷物を抱えたままだ。


再び歩き出す。街の中心の賑やかな歩道を進む。

人々が行き交い、市場の屋台には果物や菓子、色とりどりの品物が並ぶ。

石畳を転がる荷車の音が、会話や笑い声と混ざり合う。


「エンジェル、いつかこれ、全部食べてみるべきよ!」

エスターが笑いながら、数歩先の菓子の屋台を指さす。


「うーん……今日は、ただ君たちと歩きたいだけだな。」

俺は軽く笑いながら答える。ヴァイオレットは輝く瞳で俺を見つめ、ブランシュは落ち着いた歩みで優雅に前へ進む。


後ろからエリーが冗談めかして突っ込む。

「おっと、天使が感傷的になってるぞ?こんなに女の子がいるのに、溶けすぎるなよ。」


俺は首を軽く振り、笑いながらグループのペースに合わせる。

特別なことは、何もない。

それなのに――胸の奥が、静かに温かい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ