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『天使と紫の炎』  作者: Bro_Be_Like_83
第3部 — 賑わう王都の中の天使。
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チャプター42 ― ヴォルタの山頂のどこかにて……

アンジェリナは、中心街でもっとも高い塔のバルコニーの手すりに立っていた。

黒いヒールは冷たい金属にぴたりと据えられ、黒と深紫のドレスは、しなやかで均整の取れた身体の曲線を余すところなく描き出している。

金と紫の装飾が、朝日の最初の光を受けて静かにきらめいた。


左右対称に分けられた長い金髪は、ふくらはぎの下まで流れ落ち、朝の風に揺れている。

彼女は深く息を吸い、まだ静まり返った朝の街を見渡した――だが、その景色に心が向くことはなかった。


「……私のエンジェル……」


感情に喉を詰まらせたような声で、彼女は囁く。


「そばにいてくれたらいいのに……

 いつも私を見守ってくれたあなた……

 弱かった私を、何度も守ってくれた、あなた……」


アンジェリナは一瞬、瞼を閉じる。

その唇から、思わず小さな吐息――かすかな声が零れた。


「ああ……私の小さな天使……

 あなたを思うたび、胸が締めつけられる……

 でも、それがとても甘い痛みなの……

 だって……あなたが、教えてくれたから……

 立ち上がることを……

 折れないことを……

 すべてを失ったと思った時でも、生きることを……」


彼女の指が手すりを強く握りしめる。

冷たい金属をなぞるその仕草は、まるでそこに想いを刻み込もうとするかのようだった。


「あなたは……私のすべて……

 空よりも、星よりも、この街すべてよりも……大切……

 私は……あなたのためなら、何だってする……

 ああ……私の天使……」


震えるような、小さな笑い声。

幸福と溺愛が混じり合った――ほとんど祈りのようなものだった。


「捧げられるものなら、すべて捧げたい……

 できるなら、宇宙全部だって……

 あなたが幸せでいてくれるなら……

 あなたが、私を見てくれるなら……

 あなたが……どれほど愛されているか、知ってくれるなら……」


呼吸は速まり、瞳は柔らかな光を帯びる。

現実離れしたほど、優しく、強く。


「……私の天使……

 私がするすべて……

 私が在る理由……

 全部……あなたのため……

 あなた一人のため……」


手すりに腰掛けた脚が、わずかに揺れる。

背筋を走る、甘い震え。

ほとんど聞き取れないほどの声が、再び零れた。


「……いつも、あなただけ……

 何度でも……待つわ……

 私の天使……

 私の……小さな天使……」


ゆっくりと目を開き、街を見下ろす。

建物も、通りも――今の彼女にとっては、取るに足らないものだった。


「……愛してる……

 本当に……愛してる……

 そして……必ず守る……

 ずっと……」


そのまましばらく、彼女は動かなかった。

思考のすべてを、あのエルフに捧げながら。


――その時。


「アンジェリナ。手がかりが出たわ」


背後から響いた、柔らかくも断定的な女性の声に、彼女は小さく身を震わせた。


振り返ると、そこには見慣れた六つの影。

かつて、エンジェルに救われた――私の“姉妹”たち。


「……ステラ……

 ローザ……

 オーレリア……

 ルナ……

 クララ……

 ミア……」


その名を呼ぶ声には、安堵と喜びが混じっていた。


最初に前に出たのはステラだった。

整った栗色の髪、左目をかすめる一房。

淡い青の瞳には、控えめながら確かな愛情が宿っている。


「アンジェリナ。

 不安定なマナ源の追跡が進んだわ。

 発生源は、ほぼ特定できてる。

 私たち……必ず、あの方を危険にさらさない」


ローザが一歩前に出る。

小柄で細身、緑の瞳と右側の編み込みが印象的だ。


「ええ……彼のために。

 たとえ危険でも……

 私たちの天使は、守られるべき存在だから」


背の高いオーレリアが、静かに報告する。

深い藍の髪、濃紫の瞳。


「中心街中央ビル地下に、複数の異常反応を確認。

不安定なマナは、地下室に集中しています」


紫のドレスに身を包んだルナが続く。

豊かな曲線を持つ身体、冷静な声。


「位置の特定が最優先。

 街にも……彼にも……

 一切の被害は許されない」


クララが元気よく拳を上げる。


「大丈夫よ、アンジェリナ!

 全部任せて!

 絶対に、私たちの天使を守るから!」


最後に、ミアが一歩踏み出す。

控えめだが、揺るがない瞳。


「……うん。

 何があっても……

 私たちが、守る」


アンジェリナの胸に、熱い感情が込み上げる。


「……いいわ。

 マナ源の完全特定を。

 一切の妥協はなし。

 もし……万が一でも、彼に危険が及んだら……

 私は……自分を許せない」


「心配しないで」

ステラが頷く。

「絶対に、何も起こさせない」


「すべて……彼のため」

ローザが肩に手を置く。


「私たちは、彼に救われた」

オーレリアが静かに言う。

「今度は、私たちの番」


「万事、管理下に」

ルナが断言する。


「全部やるわよ!」

クララが笑う。


「……一人にはしない」

 ミアが小さく呟く。


アンジェリナは、胸に温かなものを感じながら微笑んだ。


「……私の天使……

みんな……あなたのために……

 そして……私も……」


七人は円を作り、手を重ねる。


「――エンジェルのために!

彼の夢と、未来のために!!」


声が重なり、空気が震えた。


風がアンジェリナの髪を揺らし、

彼女は歓喜と愛に満ちた笑いを響かせた。


「ふふ……ふふふ……

忙しくなるわよ、みんな……!」


――すべては、

彼女たちの“天使”のために。

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