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『天使と紫の炎』  作者: Bro_Be_Like_83
第2部 — 天使とその崇拝者たち
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チャプター2 — 教師と弟子の、とても特別な訓練

あの出来事から三年後、エリエとアンジェリーナはちょうど十三歳になり、私は十一歳だった。


雨がやっと止んだ。

空はまだ低く垂れ込み、重く、湿った大地を覆う灰色の布のようだ。踏み出すたび、泥がブーツに跳ねる――スロッシュ、スリップ――。僕は背中に剣を背負い、手をポケットに突っ込みながら、エリエと並んで歩いた。彼はいつも通り、自信に満ちた足取りで進む。その冷静さは、僕の絶え間ない緊張感と鋭く対照をなしていた。


――「で…アンジェリーナは、本当に他の女の子たちを見つけられたのか?」と僕は尋ね、視線を泥だらけの小道に落とした。


エリエは微笑む。半分はいたずら、半分は誇らしげだ。

――「ああ。そして見るべきだよ。彼女はただ従うだけじゃない:観察し、理解し、選ぶんだ。あの子たち…みんな何かを持っている。まるで、君の道に出会うのを待っていたかのように、再び生まれるために。」


(僕はまだ見えない灯台のような存在なのかもしれない――でもアンジェリーナには、もう見えているのだ。)


――「不思議だな…」僕は小さく呟く。「みんな全然違うのに…でも、そこには光がある。まだ使われていない力が隠れている。そして、彼女はただ見つめるだけでそれを見抜く。」


エリエは頷き、瞳を輝かせる。

――「アンジェリーナにはその才能があるんだ。迷える魂や壊れた子どもたちを感じ取り、救える者を知っている。そして君、エンジェル…君が彼女を助けて、再び生かすんだ。ただ彼女だけじゃない。君もだ。」


その言葉は、認めたくないほど僕に深く響く。僕は目を逸らし、恥ずかしさで顔を赤らめた。


――「でも…僕には無理かもしれない。傷が深すぎる者もいる。魂が壊れすぎている者も…」


彼は僕の肩に手を置く。表情は少し真剣になるが、悪戯っぽさは完全に消えない。

――「君はアンジェリーナを救った。命を取り戻させたんだ、エンジェル。だから、他の子たちも救える。自分を過小評価するな。彼女たちは君を必要としている、君もまた、彼女たちを必要としているんだ。」


(僕は彼女たちを必要としている。胸の奥に、奇妙で儚い熱が広がるのを感じる。)


――「わかった…」僕はようやく、声を震わせながらも決意を込めて言った。「助けるよ。アンジェリーナと同じように。」


エリエは満足そうに微笑む。

――「そうだ。それでいい。常に前に進むんだ、エンジェル。」


久しぶりに、この道が少しだけ空虚でなく感じられる。痛みも、危険も、もう一人で歩くことはない。


さらに歩き続けると、前方に見覚えのあるシルエットが現れる。アンジェリーナ――軽やかで優雅な姿に、新しい女の子が隣にいる。


――「エンジェル!」アンジェリーナが声を上げ、澄んだ笑顔を見せた。「紹介したい人がいるの。」


僕は柔らかな光を前に細める。そこに立つ少女――腰まで届く茶色の髪、青い瞳は恥ずかしげで、尖った耳。ステラだ。


彼女はためらい、少し怯えているように見える。しかし、視線の奥に何かが僕の胸を強く打つ。


――「エンジェル…わたし…」彼女は震える声で呟く。


反応する間もなく、彼女は走り出す。泥の上で足が滑るが、それでも恐怖よりも勢いが勝っている。僕の心臓は跳ねる。


――「待って…!」と僕は驚きの声を上げる。


彼女は止まらず、僕に飛びつき――そしてキスをした。

その短い接触は、しかし強烈だった。彼女の恥ずかしさ、恐怖、崇拝――すべてが一瞬に流れ出る。まるで彼女の命が、そのキスに込められているかのようだ。


僕は凍りつき、口を開けたまま息を呑む。


後ろから、エリエが柔らかな笑い声を上げる。

――「ふむ…どうやら誰かが僕たちの小さな天使に夢中になったようだな。」


アンジェリーナは微笑みながら首を振る。


――「ステラはずっと待っていたんだよ、エンジェル…そしてもう、君のことを何よりも愛しているんだ。」


ステラは少し後ずさり、顔を赤くし、瞳を僕に向ける。


――「わ…わたし、エンジェル、あなたを愛してる。ずっとそばにいる。どこまでもついて行く…」


(何と言えばいいのか。心が戸惑い、驚き、胸に柔らかな熱が満ちていく。)


――「ステラ…ぼくは…」僕は言葉を見つけられず、どもる。


エリエは首を振り、面白そうに笑う。

――「そのうち慣れるさ、小さな天使。これは始まりに過ぎない。」


そして、かすかながらも強い何かが生まれたのを感じる――僕の人生に、新たな光の断片が現れたのだ。アンジェリーナの決意、そして僕の世界に入って二度と離れないステラによって。


僕は彼女を見る。彼女は手を握り、青い瞳が圧倒的な輝きを放つ。


記憶が鮮明に甦る。ステラは今、十五歳くらいか。おそらく、僕たちが彼女を救ったときは十四歳だった。

映像が次々と押し寄せる――派閥、実験室、檻、器具――子どもたちにリリスの力を目覚めさせるために彼らが行った恐怖の全て。僕は目を閉じる。消毒液の匂い、冷たい金属の感触、抑えられた叫び…そして、すでに失われた身体たち。


(救えたのは彼女だけ。他の子たちは…手遅れだった。壊れすぎていた。)


僕は拳を握り締める。悲しみ、怒り、そしてわずかな安堵が胸を貫く。間に合って本当に良かった。さもなければ、ステラも消えていた。あの再び生きる瞳を見ることもなかっただろう。


僕は彼女の方へ顔を上げる。記憶の痛みを背に、奇妙な温かさが胸に広がる。


――「ステラ…」僕は心の中でそっと呟く。「二度と恐怖を味わわせはしない。絶対に。」


その沈黙の誓いは、三年前にアンジェリーナに対してした誓いと同じだ――救える者を、どんな犠牲を払っても守る。


夕暮れが訪れる。空は深い紫に染まり、風が林間の葉を揺らす。

エリエと僕は向かい合い、武器を構える。僕の長剣は月光を受け、光を反射する。彼の剣は暗く、紫色の装飾に縁取られ、光を吸い込むように見える。


――「躊躇ってるな、エンジェル…」エリエが前に進みながら告げる。「中心が揺れ、瞳が迷っている。」


――「分析中。」僕は剣を胸の高さに構え返す。


――「分析じゃ一撃は避けられない。」と彼は笑みを浮かべ、跳ぶ。


剣が金属音を立てて交わる。僕は斜めの一撃を防ぎ、旋回し、素早く反撃する。彼は容易く弾く。


――「いいぞ!」と彼は微笑む。「でも、まだ意図が足りない。」


――「意図は正確さなしでは無意味だ。」僕は返すように、彼の守りをすり抜ける。


剣が舞う――ほとんど振付のように。衝撃が響く。

エリエは加速し、剣に紫の軌跡を残す。地面を裂くマナの波動が僕らの間に走る。僕はかろうじて後退する。


――「まだマナを抑えているな、エンジェル!」彼が叫ぶ。「限界を超えたければ、恐れるな!」


胸の奥でエネルギーが燃え上がる。剣は白青の光輪に包まれる。僕は跳躍し、より速く斬る。彼は後退する。光と影が激しい舞踏を織りなす。どちらも譲らない。


――「そうだ!」エリエが笑う。「命を懸けるつもりで戦え!」


僕は叫び、全てを解き放つ。剣が衝突し、マナの爆発を起こす。埃と光の破片が渦巻く。煙が晴れると、僕らは立ったまま、息を切らし、剣を交差させている。


――「悪くない。」彼は誇らしげに息を吐く。


僕は剣を下ろし、息を整える。


――「この戦いはまだ終わっていない。」


エリエは挑発的に微笑む。

――「エンジェル…一撃で敵を葬る術を教えようか?」


僕は微かに笑みを浮かべる。

――「心臓を貫くのか?死ぬ準備はまだできていないぞ。」


彼は明るく、ややからかうように笑う。

――「真剣だ。見てろ。」


彼は暗い剣を振り上げる。青白い光が刃を包み、金属は瞳と同期して震える。


――「力任せでは殺せない。」彼は説明する。「速度、正確さ、意図こそが重要だ。」


僕は眉を寄せ、警戒する。

――「それとも、ただ僕を驚かせたいだけか?」


――「すぐにわかる。」


そして彼は飛び込む。僕は構え、あまりに自信過剰だった。

彼の姿がぼやけ、風のようなマナで裂かれる。


――「え…?」


――「さっき言っただろ?」耳元で声がする。


強烈な一撃が僕の防御を打つ。衝撃で何メートルも転がる。


――「ああ…!エリエ、知らせてくれよ!」


彼は剣を鞘に収め、笑う。

――「知らせる?それじゃ面白くないだろう。」


僕は立ち上がり、肩をさする。痛みが彼の力を思い出させる。


――「いつか、仕返ししてやる…」僕は唸る。「次の月までに、必ず。」


彼は誇らしげに笑う。

――「これぞ僕の知っているエンジェルだ。でも、まず消えることを覚えないとな。」


(消える?よし。驚かせてやる。)


僕は興味深く彼を見つめる。

――「しかし…どうやってあんな強烈な一撃を溜めた?」


彼は剣を鞘に納め、月光で輝かせる。

――「僕一人の力じゃない。剣が特別なんだ。」


彼は鍛造について語り始める。軽さのためのミスリル、共鳴のためのオリハルコン、そして流れを安定させるための精製スライムゲル。

このゲルは接着剤ではなく、マナの自然な導体だ。刃はエネルギーを吸収し、伝え、98%以上の魔法伝導率で放出する。


(想像上で柄に触れる。ほとんど全てのエネルギー…だからこそ、あの一撃で吹き飛ばされたのか。)


――「誰かが誤用したら?」僕は小声で訊く。


――「その時は止めるしかない。」彼は言う。「だから訓練しているんだ。制御を覚え、心を剣に乗せたとき何が起こるかを理解するために。」


夜が僕らを包む。彼は剣を鞘に戻す。

――「よし、見せろ。もう一度やろう。」


彼は呼吸法、足場、心と手と刃を繋ぐ精神線を教える。

マナが流れ、刃が震える。刃先に淡い光輪が現れる。


――「見えた。」僕は小さく呟く。


彼は導く:三まで数え、安定させ、段階を上げろ。エネルギーは地に固定。最初の光の一撃が夜を裂く。僕は制御する。制御。爆発はなく――ただ鋭い音が響く。


――「よし!」エリエが叫ぶ。「これが始まりだ。」


僕は彼に実演を頼む。彼は全身の力を剣に乗せる:青白い閃光、現実を歪める圧力波。僕は膝をつき、畏怖と驚きで息を呑む。


――「制限なしの力を想像してみろ。」彼は真剣だ。


反復はリズムを帯びる:呼吸、足場、精神線、転送、制御。

彼は僕の姿勢を矯正し、肘を直し、恐怖ではなく点を見ろと指導する。


時折、興奮で暴走する――刃が脈打ち、手のひらに火花。エリエは怒らず、心配そうに僕を正す。彼は手を重ね、流れを鎮める。


――「だから、この力を乱用してはいけないんだ。」小声で呟く。「制御を失えば、刃が語る。」


僕は彼の手を握る。

――「もう驚きたくない。」


――「ならやり直す。三十回の足場、十回の軽いチャージ、精度。手が震えなくなるまで止めない。」


僕は従う。時に成功し、刃は静かに歌う。時に失敗。しかし、学ぶ。

練習の間、彼は秘訣を教える:チャージするとき、刃を放つ理由を思え。憎しみではなく、恐怖ではなく、決意を。名前を。


僕は顔を思い浮かべる:眠るアンジェリーナ、キスをしたステラ、エリエの母。僕のアンカーだ。


次のチャージは違った。荒々しさが減り、精度が増す。左手の剣が歌い、枝に触れただけで、見えない線で切られたかのように止まる。


エリエは拍手し、本当に誇らしげだ。

――「そうだ。大切なものから力を引き出せ。燃え尽きるものからじゃない。」


左手はまだ熱いが、新たな自信が宿る。

武器を片付けると、淡い月が昇る。

エリエは最後の意味深な視線を送る。


――「休め。明日はもっと激しくやる。」


僕は頷く。疲れ果てたが、生きている。

心、手、剣――一本の糸が結ばれた。

僕は約束を心の中で呟く。静かで、強い誓い:剣の主になる。力に決定を委ねはしない。

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