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『天使と紫の炎』  作者: Bro_Be_Like_83
第3部 — 賑わう王都の中の天使。
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チャプター35 ― 輝く月の静寂の下で 。

数分後、家に着いた俺は、鏡の前を通りながら黒いスーツの袖を整えた。

生地は肩の筋肉にぴったり沿い、襟元の固さや腰回りの細さを感じる……完璧だ。

視線は髪に落ちる。

いつも通り長く乱れた髪は、左右対称の二束が膝まで垂れ、中央には胸まで届く少し太めの束がある。

軽く頭を振り、すべてが所定の位置にあることを確認してから、微笑む。


エリーが俺を追い越す。彼のスーツは肩幅にぴったり合い、白いシャツは完璧にアイロンがけされている。

きつく結んだちょんまげを整え、正直……信じられないほど似合っている。

彼は俺を見て、いつもの笑顔でからかいを始めた。


「おい、美少年、膝まで届くその髪で誰かを感心させられると思ってるのか?まるで嵐の中のユニコーンみたいだぞ。」


俺は笑いながら髪に手を通す。


「はは、面白いじゃないか、兄さん。そして君はその侍ちょんまげで、話す前に心を斬るつもりか?」


エリーは笑い、首を横に振る。


「やられた!でも少なくとも、俺は起き上がるときに髪で絡まる心配はないからな、君とは違って。」


俺は彼に近づき、腰に手を当て、意地悪な笑みを浮かべる。


「なるほど……俺は髪が乱れていてもエレガントだってことか?褒めてくれてありがとう、兄さん。」


彼は腕を組み、片眉を上げる。


「完璧だ。さあ、謎めいた女性たちを俺たちの魅力で圧倒する……それとも五分以内に追い出されるか、どちらかだな。」


俺は笑い、ジャケットを肩にかける。


「見てみよう。でも俺が最初に彼女たちを驚かせると賭けるぜ。」


エリーは小さく笑い、首を振る。


「また早まった賭けをするな、小弟よ。だが……行こう、ユニコーン。」


「君は侍、完璧なスーツで足を取られないように気をつけろ。」


俺たちは笑い声を上げ、緊張と真剣さが日常のような親密さと混ざり合った。

この瞬間は完璧だった。

どんな困難が待っていようと、俺たちが一緒なら動揺することはないと感じた。


列車は静かに線路を滑り、俺は窓に寄りかかり、眼下に広がるヴォルタの景色を見つめる。

数時間前、混沌とした街に氷と化け物が溢れていたとは思えないほど、街は平穏を取り戻していた。

通行人は穏やかに歩き、話し、笑い、商店は再開し、窓は太陽に輝き、列車も問題なく運行していた。

俺はエリーを見た。

向かいに座る彼も、この落ち着きを楽しんでいるようだった。


「悪くないだろ?」と彼が笑みを浮かべる。


「ああ……蜘蛛狼が街中を走り回るよりはずっといい」と俺は笑いながら答え、反射的に大太刀に手を触れる。


「それでも楽しかったと言うんだろ?」とエリーは眉を上げて聞く。


俺は肩をすくめ、口元に微笑みを浮かべる。


「あの光景は確かに壮観だったが、殺されない街を歩く方がはるかにいい。」


列車は中心街の駅でゆっくり減速し、俺たちは降り、人混みをかき分ける。

街は賑やかだけど、どこか落ち着いていた。

子どもたちは遊び、焼きたてのパンや熱々のピザの香りが漂う。

太陽が石畳を柔らかく照らしていた。

ヴァイオレットとエスターは少し先を歩き、いつも通り優雅で気品がある。

俺はただその平穏な瞬間を見つめた。


いつもの大きな橋を渡る。水面は光を反射し、色とりどりの建物が揺らめく。

通行人は少し距離を取り、尊敬と好奇心が入り混じった視線を向ける。

エリーが俺を見て、いたずらっぽく笑った。


「おい、小さなエルフ、落ち着きを楽しんでるな……前回とは違うな。」


「その通り」と俺は答え、橋の向こうにそびえる建物に視線を向ける。

あの建物こそ、チーフが言っていた場所だ。


小柄な女性二人、薄手のコートにフードをかぶった姿が現れ、柔らかく優雅に一礼した。


「ようこそ、若き紳士たち」と二人は声を揃える。

その声は空気を撫でるように優しく、俺は息を呑む。


中の広間は巨大で豪華、黄金の柱が並び、長い赤い絨毯が壮大な階段まで続いている。

周囲の女性たちは静かに立ち、威厳を放っていた。


そして俺は彼女を見た。

視線が固まる。息が止まる。

一人、他の女性たちより高く、長身でしなやかな姿。

金色の髪は膝まで伸びる二つの束に分かれ、目は紫色に輝く。尖った耳がエルフの血を示し、身体は黒のノースリーブのドレスに包まれ、筋肉のラインを強調していた。


首元には俺が最初に贈った紫の天使の羽のペンダント。

心臓が跳ねた。

彼女だ……アンジェリーナ。

俺が数年前に救った、ずっと俺を待っていた少女。


「エンジェル…」とエリーが隣で息を漏らす。


アンジェリーナは一歩前に出る。

微笑みは誘惑と優しさを兼ね備え、視線は強烈に俺を見据える。

そのまっすぐな想いに、俺は思わず微笑んだ。


「魅力的な若者たち…」彼女は柔らかくも力強い声で言い、エリーと俺に視線を戻す。

「広間においで。」


俺は自然と近づき、エリーは意味ありげに笑った。

「本当に、アンジェリーナ?」俺は囁くように尋ねる。


彼女は軽く頭を傾け、神秘的な笑み。


「もちろん……私はずっとエンジェルのことを考えていたの。」


胸が温かく懐かしい気持ちでいっぱいになった。

彼女の俺への思いは、今も変わらないことを理解した。


「ふふ、小弟よ、どうやら君は“ナンバーワンファン”を取り戻したようだな」とエリーが肘で軽く突く。


俺は視線をアンジェリーナに戻す。

「ああ……そうみたいだな」と微笑む。

この出会いが、新しい章の始まりであることを確信した。


周囲の女性たちは静かに立ち尽くす。

黄金の広間、赤い絨毯、そしてアンジェリーナ……すべてが荘厳で、同時に親密な空気を作り出していた。

まるで過去に戻ったかのようで、同時により広く美しい世界にいるような気分だった


「お入りください、若き紳士たち」彼女は軽く頭を下げ、歓迎の意を示す。

「さあ、真剣に話をしましょう。」


俺は頷き、視線を彼女から逸らせない。

エリーも微笑み、俺と同じく、この瞬間の重要さを感じ取っていた。


夜風が髪を揺らす。髪は月光に青く光って反射している。

高いバルコニーから見下ろすヴォルタの街はほとんど現実離れしている。

三つの主要な塔が建物を囲み、街は静かに、夜の光にきらめく。遠くで列車のささやき、通行人の声、海の波音が届く。


アンジェリーナは手すりにもたれ、水平線を見つめる。

金色の髪が銀色の光に輝き、紫の瞳は落ち着いた強さを放つ。

俺は隣に立ち、手をポケットに入れ、月光に反射する塔を眺める。

エリーも黙って横に立ち、暗い髪を月が照らす。


「嵐の後の静けさだな」と俺は囁く。


「ええ」と彼女が柔らかく答える。

「でも知っているでしょ、エンジェル。この静けさはただの仮面。」


俺は首を少し傾ける。

―「攻撃のことか?」


彼女はゆっくり頷く。

―「その通り。二日間で三件の重大な事件……しかも王城の警備が巡回していない時間に起きたの。」


俺は眉をひそめる。

―「つまり……正午から16時の間?」


彼女はうなずき、指先で金色の手すりに触れる。

―「そう。これらのクリーチャーは偶然ではない。誰かが警備の時間を完璧に把握している。計算された襲撃よ。」


俺は息を吸う。

―「内部の人間を疑っているのか?」


アンジェリーナは視線を俺に戻す。

目に宿るのは、暗く、鋭い光。

「かもしれない。あるいは情報網の発達した人物かもしれない。」


彼女は少し間を置き、声を低くする。

「最初の襲撃、君は見ていない。昨日の朝、濃い煙が漂い、不安定で有害なマナを含んで広がった。私と他の六人が対応した。」


俺は黙って聞く。


「ステラ、ローザ、オーレリア、ルナ、クララ、ミア」彼女は続ける。

「全員が同じ感覚を覚えた:異常に揺れるマナ、安定させようとするとすぐに消える。拡散は防げたが痕跡は残った。」


俺は眉をひそめる。

「つまり魔法攻撃だな?」


「ええ。誰かが何か……あるいは誰かを試しているの。」


「そして昨日の夜のサイクロプスドラゴンだ」と俺は言い、恐ろしい光景を思い出す。

彼女はうなずく。


「制御不能だった。破壊される前に仕留めた。でもそのマナ……エンジェル、それは自然ではなかった。煙と同じマナだった。」


胸に緊張が走る。

「今日の蜘蛛狼と同じマナだな?」


彼女は俺の理解の早さに驚く。

「その通り。三件は関連している。そして考えれば考えるほど、これは実験だと確信している。誰かが悪魔のマナと古代の血を融合させようとしている。」


俺は髪に手を通しながら考える。

「つまり……ルドヴァーンが言っていたことか?リリスとその娘たちの血?」


彼女は少し目を伏せ、まぶたが震える。

「ええ。それを再現しようとしている。火遊びだわ。」


風が吹き、黒いドレスが揺れる静かな沈黙が訪れる。


「そして、君はどうやって耐えている?」と俺は静かに尋ねる。


彼女は疲れた笑みを浮かべる。

「もっと酷いこともあったわ。でも……仲間がいるから。」


俺は微笑む。

「つまり、姉妹たちか。」


彼女はうなずき、悪戯っぽく付け加える。

「そしてもちろん、あなたもね。たとえあなたは考える前に爆発させる傾向があるけど。」


俺は目をひそめる。

「ほら、事故だって言っただろ。街は無事だし。」


彼女は澄んだ笑いを漏らす。

「ええ、

でもあなたの引き起こした風で屋根150枚は落ち、街灯も一つの区画が消えたわ。」


「そんなことないさ……」と俺は笑う。


彼女は首を振り、微笑んでから真剣な口調に戻す。

「冗談はさておき、エンジェル……次の攻撃も終わっていないと思う。街のマナの変動はまだ落ち着いていない。」


俺は少し背を伸ばし、手すりに寄りかかる。

「なら次が来る前に行動だ。警備の時間が読めれば、次の襲撃も予測できる。」


アンジェリーナは腕を組む。

「その通り。パターンが繰り返されるなら、次は明日……正午前か16時以降。」


俺は少し考え、ゆっくりと頷く。

「じゃあ明日、俺たちは揃う。君、俺、エリー、そして他の仲間も。」


彼女は長く俺を見つめ、月光に輝く瞳。

「変わってないわね、常に狼の口に飛び込む覚悟。でもそれが、あなたを私の目に美しく見せるの。」


俺は微笑む。

「誰かがやらなきゃ、だろ?」


彼女は優しく微笑み、月光を見上げる。

「準備して、エンジェル。今回はただの襲撃じゃない。もっと大きな何かの始まりよ。」


冷たい風が肌を撫でる。俺は無言で月を見上げる。

胸の奥で、彼女の言う通りだと理解していた。

今夜、ヴォルタはまだ嵐の目に入ったばかりだ。

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