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『天使と紫の炎』  作者: Bro_Be_Like_83
第2部 — 天使とその崇拝者たち
4/14

チャプター1 — 私の天使…私のヒーロー

第二部は、チャプター1 — 私の天使…私のヒーローから始まります。

皆さまにこの部も楽しんでいただければ幸いです。

どうぞごゆっくりお読みください。:)

二年後


夜は静かで…木の葉のざわめきと風の息だけが、その静寂を破る。

私たちの前の小道は狭く、ところどころ泥でぬかるんでいる。しかし、エリエはいつもの自信に満ちた足取りで進む…まるで世界全てが彼のもののように。

私はできる限り彼について行く。濡れた土を踏みしめ、歩幅に合わせて心も跳ねる。


「よくやってるな、エンジェル…」とエリエが言う。その澄んだ声が風に溶け込む。

「八歳で、もうこんなにマナを操れるなんて…感心するよ。」


私は視線を下げ、長剣の柄を握る。筋肉は痛むが、心は…生きていると感じる。

「仕方ないよね…」と私は小さく微笑む。「あんまり選択肢をくれなかったから。」


エリエは軽く笑う。その軽やかな笑いが、冷たい空気を少し温める。

「そうだね。でも、今の君を見てみろ。長剣、短剣、短刀…そして魔法の使い方も自然になった。マナを集中させ、攻撃や防御の呪文を操り、素早く動く…これが二年でできるようになったんだ。」


私は眉を少しひそめる。

「時々思うんだ…これまで学んできたことは、まだ足りないんじゃないかって。」


手を見つめ、腰の剣に視線を移す。

「でも…強くなっているのを感じる。守れる…いや、少なくとも試せる力を。」


エリエは誇らしげに微笑むが、傲慢さはない。

「なぜ君ができるのか分かるかい、エンジェル?諦めなかったからだ。倒れても、恐れても、迷っても…立ち上がった。それが本当の強さだ。力だけじゃない。」


私は肩をすくめ、赤くならないようにする。

「つまり…あなたのおかげだね…」と小さく呟く。


彼は首を振り、小さく笑う。

「違うよ。僕だけじゃない。君自身のおかげでもある。戦うことを選んだから、成長することを選んだから。そして今の君を見ろ…」


私は長剣の柄を握り、金属の重みと、それを操る力を感じる。

冷たい風が顔を打つが、準備はできている。

何が来ても立ち向かう覚悟がある。


そしてエリエは私の横を歩く。今は静かだが、彼が常に見守っていることを知っている。


暗い小道が小さな広場に開ける。商人の提灯が風に揺れる。

焼けた木と革の匂いが、血と掘り起こされた土の匂いと混ざり合う。

倒れた体が露店の上に折り重なり、抑えられた叫びが夜に消えていく。


心が跳ねる。本能的に長剣の柄を握る。鞘の金属が安心感をくれる…汗、転倒、痛みの記憶が、私を強くした。

マナが皮膚の下で脈打つのを感じる。飛び出す準備ができている。


そこにいる…フードを被った男たち、がっしりした影、斧や短刀を手にしている。

彼らは笑い、品物を漁り、生きている者を打つ。


一人が顔を上げ…エリエを見る。口元が広がる。

—「おい、ガキ!」と嘲るように叫ぶ。「略奪に加わるか、それとも今夜は俺たちに教訓を与えるつもりか?」


私の最初の反応は単純で、盲目的だった:飛びかかる。

筋肉が緊張し、指先が空気を掴むように開く。


しかしエリエが肩に軽く手を置く。手はしっかりして揺るがない。青い瞳が影の中でも輝く。

—「そこにいろ、観察しろ」と囁く。


彼の軽やかで少し茶目っ気のある声が、恐怖を消す。私は一歩後退し、壊れた樽の後ろにしゃがむ。手は震える…だが全てを見届ける。観察し、学ぶ—それが彼に教わったこと。


エリエは武器を見せずに手を開き、前に出る。

—「おい!紳士諸君!なんて可愛らしい夜の集まりだ。これで商人を放っておくつもりか?俺が心を壊してやろうか?」


フードの男たちは湿った軽蔑の笑いを上げる。

— 「精神を破壊するだと?二枚の銅貨しか持たぬ子供に言われる筋合いはない。それに、まともな服も身に付けていないではないか。失せろ、子供。」


彼らはエリエが弱いと思っている…だが間違っている。


私は一つ一つの動きを見つめる。肩の微妙な回転、足の角度…何年も繰り返されてきた習慣を捉える。全てを把握する。


そして…地面が音もなく裂ける。

十本の細い刃が現れる、金色と紫色、完璧で鋭利。

黒い粘液のような物質がエリエの周りを這う…だが邪魔はしない。

彼は手を上げ…十本の刃は一つの意思に従うかのように弧を描く。


マナが震える。心臓が高鳴る。


十人の男は同時に打たれる。血が泥に飛び散るが、全ての動作は正確…外科手術のよう。死は冷徹な芸術となった。


エリエは動かない。黒い物質が地面に落ちる。残酷な笑みが闇を裂く。

—「よく見ろ、俺は演出しているのではない。選択を与えているのだ。恥か、消滅か…どちらを選ぶかはお前次第だ。」


男たちは逃げる。私は動かない。手はまだ震える…だが尊敬の炎が胸に燃える。


荷物を集め始めると、背筋に冷たい衝撃が走る。

あまりにも速い動き、ほとんど感じられない。振り向くと、エリエの背後に男がナイフを持って現れる。

—「エリエ!」息を切らし叫ぶ。


私は無意識に腰から短刀を抜き、投げる。空気を裂き、稲妻のように速い。男は手に受け止める。うめき声が漏れ、苦痛に歪む顔。しかし目は驚きと残酷な尊敬を示す。

—「悪くない…ガキ。思ったより強いな」と歯を食いしばり呟く。「面白くなりそうだ。」


エリエは静かに回転し、その青い瞳が震えを伴う光を放つ。

—「エンジェル、怖がるな。やれることを見せろ。」


男は嘲笑し、ナイフを振りかざす。動きは速いが、私の新しい反射神経には敵わない。

左手に長剣、右手に短刀を構え、構える。

—「俺を止められると思うか、ガキ?」

—「本当の強さを見せてやる」と返す、鼓動が早いが声は落ち着く。


攻撃を避け、反撃する。ナイフは脇腹を狙う。体を回転させ、長剣で腕を払う。金属が鳴る、正確な音。男は歯ぎしりし、私の速さに驚く。


—「悪くない…だがまだ足りん!」怒鳴る。


泥に足を滑らせ、再び攻撃。長剣で肩を打つ。避けられ、再度脚を狙う。跳び後ろに回転し、右手で短刀を持ち直す。


—「お前、動きがいいな…」荒い息。「だが俺を侮るな!」

—「そして、エリエに触れさせない!」返す。


男は再度突進。短刀と長剣で防御・回避。速度と正確さを組み合わせる。エリエの訓練、マナ、動作の全てが導く。


エリエは微笑み、言う:

—「そうだ…感じろ、考えるな!本能で動け!全ては自分の意思の延長だ。」


呼吸が落ち着き、心が集中する。男は再度攻撃、私は巧みに反撃。脚を打ち、ナイフを避ける。


—「悪くない…まだ見せていない力がある!」恐怖と楽しみの入り混じる声。


立ち上がり、長剣左、短刀右、呼吸落ち着け、視線固定。

—「さあ、見せろ。ただしエリエには触れるな。」


エリエ微笑み、囁く:

—「俺の天使…成長したな。」


誇りと決意が胸に燃える。恐怖も痛みも関係ない。今夜、私は戦う。失敗しない。

ナイフが最後の一振り、しかし躊躇はない。全ての学び、全ての教えが動作に集中する。

回避し、正確かつ迅速に長剣を男の胸に貫く。


うめき声、血と泥に倒れる体。しかしその顔には奇妙な微笑みが残る。


しばし動かず、息を整え、手を剣の柄に置く。沈黙が戻る、風と雨だけが揺れる。

私はエリエを見上げる。笑みは広く誇らしい、青い瞳が夜に光る。

—「信じられない、エンジェル…正しく、落ち着いて行った」と優しく言う。


頭を下げ、恐怖と誇りが入り混じる。

—「ありがとう、エリエ…」震えつつも息は落ち着く。


彼が肩に手を置く:

—「成長したな、小さな天使。もう雨の中を歩く空っぽな少年じゃない…強くなった。」


私は心臓を打たせ、初めて真っ直ぐ立てる感覚を得る。守りたい者を守れる。


—「ありがとう…僕は…続ける…」誓う。


エリエは満足そうに微笑み、私たちは死体と荷車の間を歩き、夜は前にあるが、孤独ではない。


荷物を集めると、風が奇妙な音を運ぶ…ひっくり返った荷車の後ろから、低いぐるぐる音。凍りつく。

布をめくると、腐敗した体が現れる。半分むき出しの肉、土と血の混ざり。目は開いているのか虚ろなのか。ぐるぐる音が続く。


奇妙な衝動が走る:まだ生きているかも?助けられるかも?

—「エリエ…僕…」震える声。「でも…試さなきゃ。」


エリエが寄る、目を細め、慎重。

—「危険だ。何か分からない…でも見てみよう。」


頷き、恐怖を押し殺す。

—「やるだけやろう。まだ生きられるかもしれない。」


体を慎重に持ち上げる。予想より軽いが、動くたびに震える。


三日間、病んだ体に全力を注ぐ…壊疽、傷…マナの流れ、集中、精密な動作…命を救う。


四日目の朝、奇跡。肉が再生、壊疽消失。

そして体から、少女が現れる。


金髪は腰まで、尖った耳…幻想的で美しい。ゆっくりと紫の瞳を開く。

—「天…使…」囁く。


私は息を呑む。

エリエは誇らしさと茶目っ気を混ぜ微笑む。

—「よくやった、エンジェル…救ったぞ!」


彼女は駆け寄り、抱きしめ、涙する。

—「ありがとう!本当に!全てはあなたのおかげ!」


私は恥ずかしく、疲れ、囁く。

—「いや…そんなことは…」


しかし彼女は目を燃やして主張する。

—「関係ない!どこまでもついていく、愛する、守る…絶対に見捨てない!」


心が高鳴る。彼女が選んだ。約束は刻まれる。

—「そう…知ってる…」紫の瞳で地面を見つめる。「リリス…大魔女。七人の娘が…」


エリエは真剣な顔で頷く。

—「そうだ。でも理解してほしい…これは単なる家族の話じゃない。リリスは、優しさと娘への愛にも関わらず、ある日制御できない怒りに堕ちた。意志を押し付け、支配しようとし、その怒りは世界がかつて見たことのない暴力を巻き起こした。」


彼は間を置き、少女の瞳を見つめる。

—「七人の娘…性格や外見の異なる彼女たちは母を説得しようとしたが、無駄だった。リリスは復讐、痛み、狂気に駆られていた。戦いは…凄まじかった。」


胸に震えが走る。エリエは続ける:

—「戦いは昼夜を問わず続き、娘たちは信じられない勇気と力を示した。魔法と武器を操り母に立ち向かう。リリスは巨大な力で攻撃を防ぎ、マナの嵐、幻覚、肉体攻撃で応じた。最も勇敢な者でも逃げるほど恐ろしい。」


声を低くし、重みを添える:

—「火の噴出、紫の光の閃き、黒いマナの奔流…攻撃は地面や戦場の壁に血の跡を残した。七人の娘は負傷、重傷もあったが、愛と決意で母を救うか、狂気を終わらせるために耐えた。」


間を置き、沈黙を感じさせる。

—「そしてついに…長女、アンジェリーナが最終決断を下した。素早く正確な一撃でリリスの首を断つ。その一撃は狂気を止めたが、呪いは消えなかった。死の間際、リリスは娘たちの子孫に呪いを残した。その血から生まれる者を…君のように。」


少女は私の手を握り、恐怖と怒りで目を光らせる。

—「その呪い…私をほとんど殺した…でも…エンジェルのおかげで生きている。決して忘れない。」


エリエは落ち着き近づく。

—「君はエンジェルのおかげで生き返った。だから名前を与えよう。七人の娘の長女、リリスを倒した者…アンジェリーナ。」


鳥肌が立つ。アンジェリーナ…力強く、神聖で、歴史を帯びる。

—「アン…ジェ…リ…ナ…」そっと繰り返す。

—「アンジェリーナ…これからは私の名前」と力強く言う。


私は視線をそらす。名前は約束。新しい人生が始まる。

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