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『天使と紫の炎』  作者: Bro_Be_Like_83
第3部 — 賑わう王都の中の天使。
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チャプター23 ― 残像に消えた。

鐘が正午を告げると、その音はまるで断頭台の刃が落ちるかのように響いた。


日差しが訓練場の広場を照らし、生徒たちは同心円状に集まっている。

一年生は声を上げ、上級生は小声で感想を交わし、数人の教師は肩越しに見守っていた。


イヴァンはすでに勝利を確信しているかのように、まるで公爵が栄光の物語を思い描くかのような笑みを浮かべ、俺を見つめていた。

彼の剣は煌めき、重厚で洗練され、まさに騎士の誇りを宿している。


「武器なしで戦うつもりか?」

大声で、皆に聞こえるようにあざ笑う。


「武器が必要か? 自分を笑わせるためなら、別にいらないな」

俺は冷静に答えた。


笑い声が広場に飛び交う。

イヴァンは剣を大げさに振りかざし、群衆の前で俺を辱めようとする。

俺は動かず、ポケットは空のまま。

張り詰めた空気、好奇、そして苛立つ貴族の偽りの憎悪を感じる。


隣にいるヴァイオレットを見る。

フードを少し上げた彼女の瞳は宝石のように輝き、手は胸に押し当てたレイピアの柄を握っていた。

彼女は動きを止め、まるで俺の一言を待つかのように固まっている。


「ヴァイオレットさん、レイピアを貸してくれ」


彼女は口をわずかに開き、誇りと憧れを混ぜた微かな震えとともに軽くお辞儀した。

小声で――息遣いの熱を感じる――囁いた。

「…持って行って、エンジェルくん」


頭の中で、彼女が声に出す前の考えも、すぐに想像できる。

――ああっ、私の天使が私の武器を欲しがってる!人生で最高の日だ!あなたがあの傲慢な金髪を叩きのめすのね、私の天使!


彼女は俺に剣を渡す。

柄が俺の左手に触れる。


レイピアは普段より長く、細く、完璧にバランスが取れている。

柄は深紫に輝き、宝石のように磨かれ、ガードには小さな金のハート模様が並ぶ――不必要に可愛らしいが、それも彼女の個性だ。

刃は太陽に当たるとわずかに紫がかり、少量のマナが混ざっているかのように見える。

全体は軽く、速度と精度を重視して作られ、騎士の剣のような重打撃は意図されていない。


イヴァンは目を細め、嘲るように笑う。

「レイピアで戦えるのか、ガキ?」


「得意な武器じゃない。ただ、大太刀の方が好きだ」

俺は淡々と答える。


彼の笑みが一瞬止まる――すぐに表情を取り戻すが、瞳には驚きが残る。

これほど冷静な態度、しかも貴族らしい返答には思わず面食らった。

顎が固くなる。


周囲にざわめきが広がる。

少年がぽつりとつぶやいた。

「え、大太刀が好き…?」


俺の隣の兄貴分、エリーがくすくす笑い、ヴァイオレットにも聞こえるように言う。

「聞いたか? 彼、侍の剣が好きだって。はは、貴族は靴紐を後悔するな」


ヴァイオレットは顔色を少し失う。

彼女は知っている――右利き用に作られたガードの構造、親指の支え、装飾の配置。

左手で持てば操作感が逆になる。


それでも俺は握りを調整する。

左手は昔からの利き手だ。

レイピアをしっかり、しかし意図的に握る。

刃がわずかに振動するのを感じるが、軽く、扱いやすい。

確かに不利な持ち方だ――だがイヴァンの構えにも別の欠点がある:硬直、過信、強打に慣れすぎている。


イヴァンが一歩踏み込み、刃が空気を裂く。

「さあ、引くのか?」

「いや、始める」

俺は答える。


群衆は息を飲み、静まり返る。

教師たちも身を乗り出す。

ヴァイオレットは見えない手で柄を握り、少しだけ意志を貸してくれるかのようだ。

かすかに囁く。

「気をつけて、エンジェルくん…」


俺は頷き、視線をイヴァンに固定する。

彼の攻撃は重く、広く、力はあるが精密さに欠ける。

レイピアは違う――フェイント、距離感、素早い突き、バランス崩し。

左手で戦うことは、反射を逆にし、長いフェイントを使い、慣れない角度で突くことを意味する。


イヴァンが刃を振り、隙を作る。

俺は一歩前進し、レイピアを滑らせる――踊るようではなく、狙わずに肉に触れる感覚。

彼の驚きの表情、重い剣が外れる。

「その大太刀じゃなくて、運が良かったな…」彼はかすれ声で呟く。

「運の話は後だ」

俺は答える。


金属音、刃の交差。

低く構え、左足前、右手は軽く、手首の安定を補助。

左手が尖端を誘導し、微小な軌道で刃を動かす。

彼は体重で押しつぶそうとする――俺は半歩下がり、不利を大きな移動と角度変更で補う。


初めの交戦は派手ではないが、群衆は驚愕する。

一年生が借り物のレイピアをまるで自分のもののように扱う。

囁きが漏れる:

「どうやってやってるんだ?」

「自然すぎる…」

「紫眼のエルフだ…」


ヴァイオレットは硬直し、顔を赤らめ、手を衣服に絡める。

エリーは笑いを抑える。

イヴァンは筋肉を緊張させ、隙を無理に作ろうとするが、わずかに側面を晒す――棍棒には短すぎ、刃には十分。

俺は正確に触れる――殺意はない、バランスとプライドを崩すためのわずかなタッチ。


貴族は一歩よろめく。群衆は呻き、一部は神経質に笑う。

イヴァンは威厳を保ちつつ、恐怖が傲慢さを置き換えるのがわかる。

「いいだろう」低く言う。

「理解したか?」


彼は唾を吐き、構えを取り直す。

動きは冷静で計算的。

群衆は息を整え、驚きと称賛が混ざる。

ヴァイオレットは深く息を吐き、口を覆う。


周囲は喧騒だが、一瞬、世界は俺の左手の紫のレイピアに集中する――借り物、装飾され、下手だが愛されたもの――そして俺は立っている。それだけ。


イヴァンの刃が肩を貫く前に、反応する間もなく。

痛みが走り、背中が地面に叩きつけられる。

群衆は笑い、嘲笑し、貴族の優位性を祝う。

ヴァイオレットは叫び、顔を青ざめさせる。

「イヴァン!!! エンジェルくんをどうしてそんなふうに…!!」


エリーは円の縁に座り、目を輝かせて笑う。

「落ち着け、ヴァイオレット…これからが面白くなる」


イヴァンは誇らしげに剣を振り、俺に迫る。

「さあ? 弱いエルフのまま立ってるつもりか?」


小さな笑いが生まれる。最初はかすかに。

イヴァンは眉をひそめる。

「何だ? 誰が笑ってる?」


次に大きな笑い、さらにもう一つ、歪んだ長く力強い笑い。

俺が笑っている――倒れた体の俺ではない。

音は群衆、地面、空気、全方向から響く超自然的な響き。


幽玄な声が冷たくも魅惑的に響く:

「おめでとう、イヴァン・デ・ルイネス。感心した」

「正直、君には本物の可能性がある、初めて誰かが俺に触れられた…」


その瞬間、倒れた体が完全に消える。

群衆は幽玄な笑いに凍りつく。

イヴァンは本能で後退、困惑と恐怖。


そして俺は一瞬で彼の前に現れ、牙のような笑みを浮かべる。

「…ただの残像さ」

冷静に言う。


イヴァンは一歩後退、動揺。

俺は容赦なく腹部に強打を放つ。

息を詰め、姿勢を崩し、膝をつく。

群衆は歓声、恐怖、賞賛が入り混じる。


ヴァイオレットは安堵と喜びの声を上げる。

「エンジェルくん!! 大丈夫?!」


俺は頭を少し上げ、笑みは消えない。

「大丈夫だ、ヴァイオレットさん。君は…これを予想してたか?」


彼女は赤面し、唇を噛むだけで答える。

「わ…わかってた…あなたなら…」


エリーは笑い、肩に手を置く。

「ほら、言っただろ? エンジェルは裏切らない」


イヴァンはまだ地面で息を整え、屈辱と痛み。

「どう…どうして…! 触れたのに…」


俺はかがみ、レイピアを握ったまま、冷酷な輝き。

「そう、触れた…だが、ただの残像だ。覚えておけ、イヴァン:紫眼のエルフを侮ると痛い目に遭う」


群衆は歓声、拍手、呆然。

ヴァイオレットは喜びで跳ねる。

エリーは手を叩き笑う。

俺は冷静に立ち、レイピアをそっと下ろす。

イヴァンは息を切らし、数百の目の前で敗北を悟る。


「わかったか、イヴァン…」低く鋭く言う。

「見た目に騙されるな」


場面が静止し、緊張がゆっくり解ける。

群衆の囁き:

「信じられない…」

「どうやって…」

「紫眼のエルフ…すごい…」


俺は立ち上がり、レイピアを収め、ヴァイオレットとエリーを見た。

満足そうな笑みが唇に浮かぶ。


「さて、今度は…何か食べに行かないか?」

と、挑発的に言った。


ヴァイオレットは笑い声を上げ、ほとんど拍手するように喜ぶ。

エリーは肩をすくめ、楽しげに笑う。

イヴァンは歯を食いしばり、まだ言葉も出せずにいる。戦いは終わった。俺の勝ちだ。


俺は落ち着いて立ち上がり、細剣を片手にしまう。

隣でヴァイオレットがぴょんぴょん飛び跳ね、顔を輝かせているのがわかる。


「エンジェルくん! 次の授業まであと2時間半あるよ! "ビギー・ピザズ"に行こうよ!」

と、彼女は溢れるような熱意で叫ぶ。


エリーが近づき、肩を組みながら笑い声を上げた。

「おお、ヴァイオレット、君お腹空いてるのか…エンジェルもか?」


俺は片方の眉を上げ、薄く笑う。

「もちろんさ。2時間半あれば、ちゃんと食べる時間は十分ある。」


ヴァイオレットは喜びでほとんど飛び跳ねる。

「やったー! 世界一のピザを奢ってあげるね!」


エリーは頭を振り、楽しそうに笑った。

「気をつけろよ、ヴァイオレット。今朝の朝食の後、さらに食い意地が張るかもしれないぞ…」


俺はくすっと笑い、二人と共に学園の出口に向かって歩き始める。

ヴァイオレットとエリーが隣に並ぶ。そしてその時、聞き覚えのある声がした。


「ちょっと待って!」


振り向くと、右手首を包帯で巻いたエスターが少し顔をしかめながら駆け寄ってくる。


「どうして…どうしてあのバカなイヴァンが腹を…?! 」

と、目を見開き叫ぶ。


ヴァイオレットは一瞬も無駄にせず、熱意を込めて劇的に話し始める。


「ねぇエスター、今朝ね、イヴァンが…君の手首を握って…まあ、偉そうにしてたの!

でもエンジェルくん…ああ、エンジェルくん!」


彼女は一瞬止まり、目を輝かせてから興奮気味に続ける。

「遅延映像を使って避けて、それから…それから、彼が腹を突いたの! 信じられないほど、壮大で、完璧だったの!」


エスターは目を見開き、口を開けたまま固まる。

「え、つまり…エンジェルが…」


「やったー!!エンジェルくん、すごーい!!勝ったのーっ!!!」

とヴァイオレットが喜び飛び跳ねながら叫ぶ。

「どうやってやったか見ればわかるよ…完璧だった…エンジェルくん…あなたは…最高のエルフ!!!」


隣でエリーが笑いながら言った。

「 ほら、まるで英雄譚みたいに話してるな!」


俺は肩をすくめ、控えめに笑った。


俺は肩をすくめ、唇にささやかな笑みを浮かべた。

「まあ、そんなもんだな。イヴァンも自業自得だ」


エスターはまだショックの余韻を残しつつ、腕を組んで、少し恥ずかしそうに小さく呟いた。

「あ…あんなことができるなんて…エンジェル…」


「さあ、これでわかっただろ」

俺は落ち着いた声で答える。


ヴァイオレットは嬉しさを抑えきれず、ぴょんと小さく跳ね、そっと手袋をした俺の手を握った。

「エンジェルくん、行こう! ビギー・ピザズに行って、好きなだけ食べさせてあげるのーっ!」


「いいね」

俺は軽く笑いながら応じる。


隣でエリーがにやりと笑いながらついてくる。

「こりゃ、君たちが食べるのを見るのも楽しそうだな」


エスターは興味深そうに俺を見つめ、小さな声で独り言のように呟く。

「あんなに食べられて、あんなに落ち着いていられたらいいのに…」


俺たちは学園の出口に向かって歩き続ける。

ヴァイオレットは止まることなく喋り続け、尊敬と誇りに満ちた表情を浮かべる。

エスターはそれを追いかけ、驚きと称賛が入り混じった顔をしている。


休憩時間は…きっと、忘れられない時間になるだろう。



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