チャプター15.1 ― ピザと愛情過剰な姉。
物語にほんの少しだけ手を加えました。以前の名前「エリエ」を、個人的にしっくりこなかったので「エリー」に変えただけです。
この章に至る前では、これが唯一の変更です。
皆さんに楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
店内には陽気なざわめきが響き渡り、窓を通して差し込む夕陽の橙色の光が、空間を柔らかく染めている。
ダフネーが湯気の立つ皿をテーブルに置く。
ダフネー ― 「はい、どうぞ!三つの大きなピザ、そして約束通りエリーのためにペパロニのピザも!熱いから気をつけてね。」
エリー ― 「おお、これは本気だな!匂いだけで、三回おかわりしたくなるぞ!」
俺は静かに黙ったまま、湯気が立ち上るのを眺め、そっと自分のピザにかぶりついた。
瞬時に目が輝き、心からの感動が顔を駆け抜ける。
「……おいしい……。」
短い沈黙。
ヴァイオレットが俺を見つめながら、突然左腕を掴む。
「えっ、ホント?!エンジェルくん、美味しいの?!」
エリーは眉を上げて、楽しげに。
「おお…始まったな。」
ヴァイオレット、激情に駆られた声で続ける。
「じゃあさ、望むなら、もっとたくさん買ってあげる!
王国中のピザ、ヴォルタのすべてのピザ!いや、世界中のピザだって!」
俺は目を丸くして見つめ、無言で静かに噛む。少し戸惑いながらも。
ダフネが腹を押さえて笑い転げる。
ダフネー ―「 神々の名のもとに、ヴァイオレット、相変わらずね!ちょっとした言葉で燃え上がるんだから!」
エリー(茶化して) ― 「ハハハ!こんな約束ばかりしてると、俺たち破産しちゃうぞ!ダフネー、気をつけろ、彼女は“天使”のためなら店を丸ごと買い取ろうとするかもな!」
ヴァイオレットは真っ赤になり、俺の手を離すと、頭のフードをかぶり、白く長い髪で顔を隠す。
「や、やめて……ただ言っただけよ……」
俺は落ち着いて、もう一口かじる。
「……本当に、美味しい。」
今度はダフネも柔らかな笑顔になる。
「気に入ってくれて嬉しいわ、エンジェル。よかったら次は、私の特製“クレーマ・ディ・タルトゥーフォ”も味わってみてね。」
ヴァイオレット、僅かに顔を上げ、嫉妬の眼差し。
「……一緒に行くならね。」
エリー(冷やかして) ― 「王族の独占欲だな。」
ヴァイオレット(睨みつけて) ― 「黙って、エリー。」
店内の雰囲気は再び和やかに。
ヴァイオレット、エリー、ダフネが笑いながらお互いをからかう。
俺、エンジェルは静かに窓の外を眺める――
川に反射する金色の光、ライトアップされた橋、首都を行き交う人影。
珍しく心が穏やかに満たされていく。
突然、店のベルが鳴り、静かな空気を切り裂く。
驚きと興奮が混じった女性の声が響く。
「神々の名のもとに、夢じゃないわよ!!!」
皆が振り返る。
入り口の女性が目を見開き、ほとんど非現実的な叫び声を上げた。
「アアアアア!!! エンジェル!!!!!!」
俺は驚き、ゆっくりと頭を上げる。
言葉を発する間もなく、彼女は猛スピードで俺の元へ駆け寄る。
エリー ― 「ああ…来たか…」
一瞬で、彼女は文字通り飛びつき、俺を強く抱きしめる。
椅子が軋むほどの力で。
「アハハハ…弟よ!!愛しの弟!!神々の名のもとに、本当にあなたなのね!!!」
長い茶髪が膝まで流れ、俺の銀髪と絡む。
細身だが均整の取れた体が感情で震え、紫の瞳に涙が光る。
俺、少し押しつぶされ気味で、小さく呟く。
「……ヘレナ?」
俺の姉、ヘレナ、身長一七五センチ、茶髪、紫の瞳、均整の取れた体、いつもの学園服。
俺をさらに強く抱きしめる――彼女の身体能力の強さを完全に忘れていた。
少し離れ、両手で俺の顔を挟む。
「うん……私よ……ああ、あなた、大きくなって、美しくなって……まるで……天使みたい。」
エリー、腕組みしながらため息。
「相変わらず大げさだな、姉さん。息を詰めるぞ。」
ヘレナ、少し楽しげに、少し怒り混じりに視線を送る。
「黙れ、エリー!二度と会えないと思ったのよ!」
ヴァイオレット、目を見開き、立ち上がる。
「ヘレナ?!いたの?!」
ヘレナが顔を向け、ヴァイオレットを認識。
「あっ! ヴァイオレット!」
二人は驚きの声をあげ、抱き合いながら神経質に笑う。
ヴァイオレット ― でも、気をつけて、肋骨折れるわよ!
ヘレナ(笑いながら、まだ抱きつく) ― 無理!弟よ、六歳から抱えてるんだから、たとえ……
首の包帯に目を留め、一瞬表情が曇るが、すぐ柔らかくなる。
「……変わったけど、大丈夫。」
俺は目を伏せ、照れながらも、ヘレナに髪をくしゃくしゃにされる。
「心配しないで。会えたことが嬉しい、それだけ。」
エリー、大笑い。
「まるでファミリー再会が店内で行われてるみたいだ…客が寄ってくるぞ!」
ダフネー、カウンター越しに、微笑みながら。
「もう見てるわよ。皆、こっちを注目してる。」
ヴァイオレット、ため息混じりに微笑む。
「……ようこそ、首都へ、エンジェルくん。ここでの再会も壮観ね。」
ヘレナ、輝きながら再び俺を抱きしめ、隣に座る。
「もう離さないわ、弟よ。今度はずっと一緒。」
俺は、普段の彼女の遠慮にも関わらず、微笑みを浮かべる。
ヘレナ、息を整えながら起き上がり、茶髪に手をやる。
他人の視線に少し赤くなり、小さく神経質に笑う。
「ハハハ…ごめんね、あの…ショーのせいで。」
ダフネー、カウンター越しに笑顔。
「おやおや、ヘレナじゃない!久しぶりね。相変わらず派手ね。」
ヘレナ、嬉しそうに近づく。
「ダフネー!エプロン姿だと分からなかったわ。元気?」
「元気よ!あなたは?いつも弟を追いかけてるの?」
ヘレナ、優しく笑い、俺を見る。
「ずっと。そして今回は離さないつもり。」
二人は温かい言葉を交わし、ダフネーがメニューを渡す。
ヘレナ、さっと目を走らせ、元気に宣言。
「ペパロニピザ一枚、お願いします!いつも通り、カリッとね。」
ダフネー、頷く。
「了解、食いしん坊の姉さん!」
ヘレナ、笑いながら戻り、俺の向かい、エリーの隣に座る。
そのエネルギーは、店内の落ち着きと対照的で、俺を見つめる笑顔は優しい。
「信じられない…ここにいるのね、目の前に。夢みたい。」
俺、少し窓の外を見る。
川に反射する夕陽の光。
「夢じゃない、ヘレナ。」
エリー、グラスを傾けつつ、笑って口を挟む。
「気をつけろ、真面目に答えたら魔法が壊れるぞ。」
ヘレナ、肩を小突く。
「黙れ、エリー。この素晴らしい瞬間を楽しませて。」
俺、微笑む。
客の喧騒、ピザ窯の熱気、それでもこの場面は優しく穏やかだ。
ヘレナ、エリー、ヴァイオレット、そして背景のダフネ…
過去と現在の一部が、ただ一つのテーブルに集まっていた。
俺がピザを食べ終える頃、腹が反乱を起こす。
大きな音の鳴る腹鳴りが静寂を破る。
次の瞬間、ヴァイオレットとヘレナが俺を振り返る。
二人の瞳が光る…しかし違う輝きで。
「だ、だめ、まだお腹空いてるの!?!」
ヘレナ、両手をテーブルに置く。
「放っておけないわ」
ヴァイオレット、冷静ながら決意に満ちた声。
俺が口を開く前に、二人は同時に立ち上がる。
椅子が床に軋む。
「待って――」
「戻るわ!」
ヘレナ、得意げに。
俺、ため息。
エリー、頭を抱えながら笑う。
「お前のことになると、二人とも獅子みたいだな。」
俺は睨む。
「喋りすぎると食われるぞ。」
彼、喉を鳴らして笑う。
カウンターでは二人の“姫”がすでに行動を開始。
「ダフネー!」
ヘレナ、金貨を振りかざす。
「大好きな弟のために、四種チーズピザ一枚!」
「うちの天使よ」
ヴァイオレット、胸に手を置き、劇的に。
「チーズはたっぷりよ、最高のものをあげなきゃ。」
ダフネー、手を上げ、茶目っ気たっぷりに笑う。
「ほほう…彼を養うための指輪付きね。」
俺、立ち上がる。
「いいよ、自分で払う。」
ヘレナ、振り向く。
「え?!あんた?!まさか!」
「俺が連れてきたのよ」
ヴァイオレット、抗議。
「次は私が払う番。」
俺、呆然。
「知ってる?ただのピザだよ?」
「エンジェルくんのためのピザよ」
ヴァイオレット、真剣な表情。
「その通り」
ヘレナ、付け加える。
「彼のことになると、“ただのピザ”なんてない。」
俺、額に手をやる。
「ほんとに手に負えない…」
エリー、テーブルから、劇的に叫ぶ。
「ダフネー!二人に一枚ずつ置け!さもないと喧嘩するぞ!」
「いいアイデアね!」
ダフネー、笑いながら。
「四種チーズ二枚、オッケー!」
二人の姫、固まって見つめ合い…
ささやき合いながら共謀者のように相談。
「全部食べられると思う?」
ヘレナ。
「分け合えば…一緒に、ね」
ヴァイオレット、頬を少し赤らめ。
俺、ため息。
「まったく…」
ついに二人は勝ち誇って席に戻る。
俺の両脇に座り、ダフネーが持ってきた湯気の立つピザを見つめる。
ヘレナが軽く肘で押す。
「さあ、食べて、私のエンジェル。君のためよ。」
ヴァイオレット、そっと添える。
「うん…前のより美味しいか教えてね。」
俺、ため息をつき、一口かじる…
無意識に、微笑む。
「前より美味しい。」
沈黙。
そして同時に二人の声。
「本当に?!」
二人は互いに向き合い、天使のための最高の一口”を巡り、また言い争う準備をしていた。




