チャプター13 ― あと一歩で最悪の事態に…紹介の場が修羅場になるところだった。
私は振り返って、もう一度彼を見る――私、ヴァイオレット・ヴォルタ、ヴォルタ王国の末娘の心臓が、太鼓のように激しく打ち鳴らされる。
私は振り返り、もう一度だけ彼を見る。
エンジェル。
その存在を認識した瞬間、胸の奥が熱を帯びた。
心臓が強く打つ。
だが私は、それを悟らせない。
……今は、見るだけでいい。
「ひひ…エンジェル…」私はほとんど声にならない声で呟いた。
彼は私を見ない。ただ、威厳ある足取りで歩く。
だがその一歩一歩が、私の心の中で執着の閃光のように響く。
彼は知らない…何も気づいていない…でも私は、愛している、何よりも愛している…
手がわずかに震える。
まるでその存在にしがみつき、触れ、さらに近くに感じたいかのように。
「エンジェル…少し…見てくれませんか?」私は呟く、声が緊張と昂ぶりを裏切る。
彼の一歩一歩、その体の動きのすべてが完璧で…私は幸福に呻く、彼の目に見えぬ鼓動が私の心臓と重なるのを感じながら。
ああ、私の天使…背中さえも…その堂々たる佇まい…私を狂わせる。
私は小声で、自分自身に囁く:
「あなたは…完璧すぎる…エンジェル…素晴らしすぎる…」
彼の吐く息、光に煌めく白い髪…そのすべてが私を陶酔させる。
私の天使、私の英雄…あなたは私のもの、私だけのもの…永遠にあなたのそばにいたい…
「エンジェル…行かないで…お願い…」私は無意識に前に進みながら、指をノートにぎゅっと握りしめる。まるでそれで彼に近づけるかのように。
一つ一つの微細な動き、短い息のひとつさえも、私の執着を増幅させる。
心臓は狂ったように打ち、意識は完全に彼に集中している、エンジェル…私の天使、私の唯一。
「もう少しだけ…もう少しだけあなたのそばに…」私は呟く、けれど彼は聞いていないことを知りながら。
それでも…廊下を歩くたび、私は振り返り、瞳を輝かせ、見つめずにはいられない。
私の小さな天使…私の英雄…あなた以外は存在しない…
教室の扉の前に立つ。
心臓が爆発しそうなほどに打つ。エンジェル…あの扉の向こう…数歩の距離…私の天使…私の小さな天使…会いに行く…触れる…守る…そばにいる…ああ、愛してる…
「ねえ、ヴァイオレット、ビギナーたちを怖がらせるつもり?それとも小さな天使だけ?」とエリーが、茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべて言った。
「落ち着きなよ、ヴァイオレット」
エリーの声が耳に届く。
私は表情を変えず、静かに答えた。
「問題ありません。職務中ですから」
――問題があるのは、心の中だけだ。
私は視線をそらす、冷たく、無表情…だが内側の血は沸騰する。
なんてこと…彼は私が完全にエンジェルに夢中だと知っている…からかうなんて…私の天使…私を狂わせる…私は…柔らかく…ならなきゃ…
「ふざけないで…」声を凍らせ、一語一語に動揺を込めて答える。
エリーはくすくす笑う。 — 「冷たいね?今、この瞬間に小さな心が溶けているんだろうね」
私はノートを握りしめ、頬に熱が上るのを感じる。
そう…その通り…私の天使…あなたを思うだけで震える…強く、威厳あるはず…でも私は…あなたを見ただけで溶ける…
「私が完全に…集中しているのは…わかってるでしょ?」私は頭を上げ、王者の風格を保とうとする。
「ああ…完全に集中…彼にね?」とエリー、悪戯に言う。
眉を上げる、でも頭の中では叫ぶ:はい!はい!私の天使はあそこに!私の愛をまだ知らない!何も気づいていない!
指がカバンに食い込み、息ひとつで精神は彼に近づく。
エンジェル…教室に入る…会う…一瞬だけ…それだけでは足りない…そばにいたい、守りたい、所有したい…ああ、私の天使…
エリーはまた笑う。 — 「ほら、息を整えろ、姫様。扉をくぐる前に溶けちゃうぞ」
「黙って、エリー…」私は呟く、心は熱く、愛に燃え焦がれる。
目を離さず、存在を感じさせ、私を見て…私がそばにいることを知れ…誰も近づけない…
「行く?」私は声を整えようとする、でも興奮が裏切る。
エリーはうなずき、二人で扉を押す。心が爆発する。
魅惑と執着、純粋な幸福が混ざる。
私の天使…ほんの一瞬でもそばにいれば、幸せで死ねる…ああ、エンジェル…どれだけ愛しているか知らないだろう…狂おしいほどに愛してる…
ノートを抱き、軽くお辞儀し、震える手で前進。
エンジェルのために溺れる準備ができている…
床に響くヒールの音。三十六の視線が私に向く。
教室を見渡す。
……いた。
視線が、自然とそこに吸い寄せられる。
白銀の髪。
静かな佇まい。
私はほんの一瞬だけ見つめ、すぐに逸らした。
気づかれてはいけない。
私は冷たく、威厳に満ちた皇女として教室を見渡す。
だが内心、心は溶け、燃えている…そこにいる…私の小さな天使…窓際に佇む…
白銀の髪、天使のような顔…完璧なエルフの耳…まだ私に気づかず…光に目を奪われる…ああ…完璧…冷たく美しい…私の天使…
「皆さん…」
私の声は落ち着き、威厳を帯びるが、心は高鳴る。
「私はヴァイオレット・ヴォルタ、今日、皆さんを導きます」
生徒たちは敬意を示す。
だが私は見ていない、感覚はすべて彼に集中。
エンジェル…そこにいる…近くに…見ずにはいられない…
列の間を歩き、冷たい目線。だが瞳は執着を隠せない。
紫の瞳…手…完璧…ああ、天使…ここで溶けそう…でも冷たく…威厳を…
彼が少し振り向く…心臓が跳ねる。
笑みを抑える、感情を見せてはいけない。
動くな…私の心を乱すな…
教室前に立ち、背筋を伸ばす。
「皆さんの責任を理解させ、規律ある一年の始まりとします。」
手が微かに震え、息が速まる。
言葉ひとつひとつが愛を隠す努力。
エンジェル…私はここに…そばに…見守り…守る…ああ天使…
彼は窓際で無表情。私は内心で溶ける。
外面は完璧、威厳、支配的。私は皇女、でも全身は叫ぶ:私の天使…愛してる…あなただけ…
生徒は冷たい皇女を見る。
だが私の視線はエンジェルに、私の小さな天使…心臓が跳ねる。
私は背筋を伸ばし無表情、教室を見渡す…しかし視線は常に彼に戻る。
日差しに照らされた横顔…ほぼ非現実的…視線をそらし、制御を取り戻す。
しかしエリーがまた…
「さて…」陽気に隣で、手をポケットに。
「皆、今日の案内役は知ってるよね?ヴァイオレット・ヴォルタだ」
目を見開く。いや…今じゃない…彼の前で…
「去年、彼女はアカデミーで最も優れた剣士、レイピアと短剣で!」とエリー劇的に告げる。
クラスがざわつく…
「また、前年度最速決闘記録保持者、」とエリー微笑む。
「マナ操作も最高得点。模範生…エリートプリンセス…完璧な見本!」
拍手が湧く。
目をそらし、内心は煮えたぎる。
エリー…馬鹿…私を彼の前で脆弱に…
目を上げる。
エンジェル。
見つめる。
無関心ではなく、直接。
そしたら…微笑み。
――今。
彼の表情が、わずかに変わった気がした。
……気のせい?
それとも。
胸が、跳ねる。
息が一瞬、詰まる。
私は皇女だ。
動揺は、表に出さない
かすかに。興味深く。穏やかに。
(アハハハハ!!私を見て笑ったぁぁぁ!!)
体が固まる。心臓が跳ねる。頬に熱。いや…今じゃない…皆の前で…
一歩後退…もう一歩…威厳を保とうとする。
「す、少し失礼します…」声震え、努力もむなしく。
教室を出て、扉を閉め、壁にもたれる。
静寂。心臓は全速。頬は熱い。
彼は私を見た。笑った。ああ、私の天使!
胸に手を置き、制服を握る。呼吸乱れる。
エンジェル…あなた…笑ったの?私に?
小声で笑う、神経質に。映像が繰り返される…笑顔…髪に光…静かな瞳…
なぜこの笑顔だけで制御を失うのか?
熱い涙がこぼれる、だが笑いが…甘く、ほとばしる、ほぼヒステリックに。
「エンジェル…」息荒く呟く。 — あなたの笑顔…私を…触れた…
手が震え、頬赤い。落ち着こうとする。落ち着け、ヴァイオレット…ただ笑っただけ…それだけ…
しかし、心の奥で別の声がささやく:
違う。
それはただの笑顔じゃない。
あなたを見た。選んだ。
あなただけ。
唇に指を触れ、震える。落ち着かねば…でも…その笑顔…もう一度…何度も…
そしてエリーが話を続ける間、私は外で静かに燃える…エンジェル…一度だけ…私に微笑んだ。
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私は深呼吸し、扉を押して教室に入る。
ヒールが床を打つ音が響き渡り、生徒たちは一斉に黙る。
心臓はまだ高鳴り、あの微笑みを思い出すたびに胸が熱くなる。
外見は冷たく、威厳に満ち、権威ある皇女として振る舞う。
しかし心の奥では、愛と執着が燃え盛る。
エンジェル…あなたがそこにいるだけで、私は溶けそうだ…
「静粛に!」私の声は澄み、力強く、帝王のように教室中に響く。
すべての視線が私に向く。
心の中では、天使の紫の瞳が私を見つめていることを確信している。
列の間を歩きながら、私は冷たい目線で生徒たちを見渡す。だが視線の奥底では、エンジェルの存在に心が支配されている。
白銀の髪、端正な顔立ち…ああ、天使…その背中さえも完璧…溶けそう…
「皆さん、ご存知の通り、」私の声は鋭く、「このアカデミーでは生徒は五年間学びます。五年間の理論・実践授業:フェンシング、武器の使用、錬金術、化学、マナ操作、ヴォルタ王国及び他国の歴史、地政学、軍事戦略、天文学、そしてもちろん、社会関係学も含まれます。すべての生徒は一年間を通して評価されます」
私は教室を見渡し、注意を払わない生徒の視線を捕らえる。
しかし、意識は常にエンジェルに向いている。
胸の高鳴りを隠し、冷静を装うが、内心では彼に全てを捧げたい衝動が沸き上がる。
「年度末には、進級の可否を決める試験があります。図書館はキャンパスの北側に位置し、いつでも利用可能です。カフェテリアでは様々な料理やデザートが提供され、隣接する食堂でも良質な食事を取ることができます。実験室は西棟に、寮は南東棟に位置します。最後に、大訓練室は東棟にあり、初年度の授業棟の隣にあります」
生徒たちを一人ずつ見つめ、エンジェルの目に偶然でも視線が合う瞬間を待つ。
心臓が早鐘のように打ち、息が浅くなる。
しかし外見は完璧に保つ。
「私は皆さんの成功を願います、」私は毅然と続ける。 — 「全力を尽くし、ヴォルタ王国の未来のために努力し、そして…自らの力に見合う存在であれ!」
拍手が湧き上がる。
エンジェルはかすかに手を上げて拍手する。
無表情だが、私には分かる…見ている、私の方を…
私の心は燃える。
熱と執着が混ざり合う中で、私は冷静な顔を保つ。
エンジェル…私の天使…あなたを守りたい、近くにいたい、所有したい…
「最善を尽くしなさい、」私は声を張る、全員に届くように。
「強く、賢く、アカデミーにふさわしい者となれ。ヴォルタ王国の未来は君たちの手にある。全力で取り組むのだ!」
再び沈黙が訪れ、次の瞬間、生徒たちは大きな拍手で私の演説を讃える。
息は整えつつも、心はまだ熱く燃えている。
エンジェル…見ている…私の視線は、抑えきれない執着で彼に固定される。
心の中で囁く:私はあなたのもの…まだ知らないだろうけど…私はあなたを全力で愛している…そして、この一年間、あなたのそばにいる…
最後に軽く頭を下げる。
心は完全に溶け、内側では狂おしいほどの愛で満ちている。
しかし外見は冷たく、威厳に満ちた完璧な皇女として振る舞う。
「皆さん、頑張ってください!」私は締めくくる。拍手が再び響く。
目を再びエンジェルに向ける。
彼は変わらず冷静だが、私には分かる…私を見ている。
これだけで胸は張り裂けそうだ…
教室を出る。
空気は冷たく、残された生徒たちは驚きに包まれる。
エリーは隣で歩き、ほほえんでいるように見える。
私は内側で血が煮えたぎる。
「どうして…あんなふうに私を紹介したの?」私は氷のような声で、エリエを睨む。
エリーは肩をすくめ、悪戯っぽく笑う。
「つまり…あなたの天使の前でってこと?」と片眉を上げる。
私は体を強張らせる。
否定する、何も認めない。
「…何のことか、さっぱり…」と平然と答える。
頭の中では心が燃え、思考が衝突する:そうだ!あの人だ!なぜ私を彼の前でさらしたの?!私の天使…全部見た…知っている…
エリーは小さく笑い、頭を振る。
私の心を読み取ったかのように。
— 「ああ…分かってるね、私の言いたいこと」と彼は囁く、楽しげに。
私は拳を握り、顔は冷たいまま。
しかし心は炎に包まれる。
私の天使…一瞥だけでも、私を燃え上がらせる…気づいてほしい…私の愛を…私はあなただけのために生きている…
視線をわずかに逸らし、これ以上返答しない。
だが目はもうエンジェルから離れない。
すべての呼吸、鼓動が私の世界の中心を示す…誰も、それを変えることはできない。
エリーは頭を振り、私の考えを知り尽くしたかのように笑う。
私は冷たく、威厳ある外見を保ちつつも、内側では甘く熱く、狂おしいほどに私の小さな天使を愛している。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エンジェル。
あなたは、まだ何も知らない。
私が、どれほど静かに、
どれほど深く、
あなたを見ているかを。
あなたの歩き方も、
呼吸の間も、
視線を伏せる癖も――
すべて、覚えている。
今は、触れない。
今は、近づかない。
……でも、それは我慢ではない。
選んでいるだけ。
正しい距離を。
正しい時間を。
あなたがどこへ行っても、
誰と話しても、
私は、必ずそこにいる。
エンジェル。
あなたは、私の世界の中心。
そしていつか――
あなた自身が、それを理解する。
……それまで、私は待つ。




