第9章 パンドラの箱を開ける時 前半(カナ視点)
窓の向こうに、誰かが立っていた。
工学寮の俺の部屋、夕暮れの薄明かりでガラス越しに感じる視線。カメラを手に、窓の外を撮るふりをしながら鼓動を抑える。
あの人は、真梨野先輩だった。斜め前の部屋に住む、いつも笑顔の人。俺を覗いているなんて、きっとただの好奇心だろう。そう思って、気づかないふりをしてシャッターを切った。
それが、去年の春。俺と先輩との、始まりだった。
大型連休で人が減った寮は静寂に包まれ、遠くから鳥の鳴き声だけが微かに聞こえる。心地よい春風が暖かさを運ぶ中、真梨野先輩の視線だけが妙に冷たく感じられた。彼はなぜ俺を見ているのだろうと、不思議でしかたなかった。
高校時代、俺は写真に没頭していた。気になる子の笑顔、部活を楽しむ姿、教室に差し込む光、何気ない瞬間を切り取ることに夢中になった。でも、それが露見する。「ストーカー」と嘲笑うクラスメイト達。
男を撮るなんて気持ち悪い。ゲイだとバレた瞬間、教室は地獄に変わった。あの嘲笑が今も耳に残っている。だから大学では、誰とも心を通わせないと決めていた。
クローゼットゲイを貫き通すつもりだ。だから真梨野先輩とも、境界線を引くつもりだった。
なのに、あの人は近づいてくるのだ。課題で、人物を撮ると話したら、「へぇ、俺じゃダメか?」と廊下で先輩が微笑みながら提案してきた。無造作な髪、太陽に焼けた引き締まった腕、自信に満ちた表情。撮ってみたい、と直感した。
正直、好みのタイプだった。ベビーフェイスに逞しい体格...見つめないよう努めながら、フレームに収めたらどんな光を放つだろうと考える。だが、すぐその感情を押し殺した。近づけば崩れる。過去の傷跡が俺を拘束している。
「先輩は暑苦しいんで」とやんわりと断った。
軽く受け流した俺に、先輩は不満げな顔を見せる。彼の突然の申し出に、どう返答すればいいか困惑し、「撮りたい人がいるんで」と言ってみた。
「誰だよ?撮りたい人って」
「秘密です」
俺の言葉に、彼はどこか悔しそうな表情を浮かべる。心がわずかに揺らぐ。その瞬間、俺は察知する。彼は、俺の設けた安全圏を難なく乗り越えてくる人なのだと。
◇
ある日、部室で彼の友人との会話が耳に入ってきた。映画サークルの部室の廊下で話すと写真サークルの部室に丸聴こえだ。
「それより、本当にカナに声かけるの?」
「うん」
「どこで?いつ?」
「今からでも部室に行ってみる」
緊張で体が硬直した。先輩が今、俺に会いに来る?視界の端で他のメンバーが作業に集中している中、鼓動の音が騒がしい。何も気にしていないように装う。
「マジか。俺も行くわ」
「お前は来なくていい」
「なんで?見たいじゃん、告白現場」
告白……?って何?動揺を隠すため、マウスを握る手に力を込める。汗で滑りそうになりながら。
「告白じゃねぇよ!映画の出演依頼だ」
ああ、映画か。当然だ。先輩が俺に告白?さすがにそれはない。自嘲気味に笑う。他の先輩にも何度か映画に出演して欲しいと頼まれた事があるが、その都度丁寧にお断りしている。
「まぁまぁ。お前の熱い想いを、この目で確かめたいだけさ」
熱い想い?映画への情熱?それとも……考えすぎだろう。深呼吸して、感情を抑え込む。
ノックの音。ドアが開く。
「失礼します」
先輩の声だ。窓際の席で、モニターに向かっていた俺は、視界の隅で彼の姿を捉える。無造作に下ろされた前髪に寮内で見かけるような、ラフなTシャツにハーフパンツ。なんでもない格好が妙に魅力的で、視線を外す。
「カナ」
名前を呼ばれ、驚いたような表情で顔を上げる。演技ではない。本当に動揺していた。なぜわざわざ俺に?
「真梨野先輩?」
「ちょっといいか?話があるんだ」
「はい」
席を立つ。何を言われても拒否しよう。部室を出る際、サークルメイトが含み笑いを浮かべているのが目に入る。あの笑顔は何?俺と先輩のことを何か勘ぐっているのか……。
廊下に出ると、先輩が俺の前に立ちはだかる。その佇まいは見覚えがあった。いつもと同じ、注意深く俺の心の奥底を覗くような、何かを探るような視線。逃げられないのか?という感覚に襲われる。そして、その瞳は俺には媚薬のようだった。
「カナ」
声が少し詰まる。黙って待つ。心の備えをしようとする。
「俺の映画に出てくれないか?」
やはり映画の話か。安堵と失望が入り混じる。複雑な感情を押し隠して答えた。
「映画ですか?」
「夏休みに撮る短編映画なんだ。フランス映画のオマージュで」
「僕...演技は全く経験ないです」
困惑した様子で眉を寄せる。演技をするなんて、想像もしたことがない。カメラの後方にいるのが俺の居場所だから。
「大丈夫だ。台詞もそんなに多くない。存在感が重要なんだ」
「でも……」
「カナ、俺の映画に出てくれ!」
声が大きくて廊下に反響し、驚きで体が震えた。その熱意に、自分の感情が溢れそうになる。真剣な眼差しは、熱に満ちていた。そして、次の言葉で時が止まったかのように感じる。
「お前の役、ライトブルーのドレスを着てもらうんだけど、本当に似合うと思うんだ!」
ドレス?俺に?頭が真っ白になる。高校時代、今より華奢で中性的だった俺はゲイバレしたこともあり、「オカマ」とたまに罵られていた。その記憶が蘇る。嘲笑の顔々。軽蔑の眼差し。パニックが押し寄せる。だが、先輩の目には嘲りの色はない。ただ、純粋な期待と情熱が輝いている。
「ドレス……ですか?」
声が震える。怒りか、恐怖か、期待か、自分でも判別できない。
「『サマードレス』っていう映画のオマージュで……」
「嫌ですよ、先輩」
ときっぱりと返答する。言わなければならなかった。
「撮影なら構いませんが、出演は無理です」
「え?」
「カメラの後ろにいる方が得意なので」
凍てつく湖のような冷たい目をしていたと思う。自己防衛の本能だ。心を隠す盾だ。近づかれると、崩壊する。傷つく。だから拒絶するしかない。
だが、心の深部では別の感情が渦巻いている。
「本当の俺を見て」「俺だけを見て欲しい」。そんな願望。
しかし、それは恐ろしい。その感情に名前を付けるのが……。
「でも……」
「先輩、諦めてください」
会釈して、部室へ戻ろうとする。早く逃げたい。話を続ければ、感情が漏れ出してしまう。彼の情熱的な眼差しに、心が砕け散りそうになる。
部室に戻ると、サークルメイトたちは作業を続けていた。しかし、何人かの視線を感じる。噂になるのだろうか?先輩と俺の関係が。不安が膨らむ。高校時代の悪夢が蘇る。
ここでも同じことが起こるのか?モニターを凝視しながら、思考は巡り続ける。先輩のこと。映画のこと。ドレスのことを。
なぜ俺なのだろう?他にも適役はいるはずなのに。先輩は察しているのか?俺の秘密を?俺の本当の気持ちを?あるいは、単に外見が役柄に合っていると思っただけ?混乱するのは、先輩への想いがあるからなのか。
溜息をつく。窓の外、沈みかける夕日の光が心を照らすようだった。
◇
部屋をノックする音が聞こえ、扉を開ける。少し驚いたように先輩は俺を見る。シャワーしたてで髪が濡れていたからか。
「真梨野先輩?」
「カナ、もう一度考えてくれないか?」
「またその話ですか?」
ドア枠に寄りかかり、呆れたふりをして彼を見つめる。演技だ。本当は、この執着心が嬉しい。でも、表面には出せない。気持ちを明かしたら、先輩はどう反応するだろう?嫌悪を示すだろうか?それとも……。
「頼むよ、カナ!この夏の思い出になるって!」と先輩が言うと、「しつこいですね、先輩。でも……」と俺は答えた。
目を細めて彼を注意深く観察する。本当に俺が必要なのか?単なる配役として?もし、俺自身に関心があるなら……その可能性に、期待が膨らむ。
「ライトブルーのドレスを着る役だけど、とても美しいシーンになるんだ。お前に最適だよ」
「先輩、僕、男ですよ?」
自分自身に言い聞かせるようだった。男だ。だから、先輩と何かが起こるなんて……考えるな、危険だ。
「それが重要なんだ。原作の『サマードレス』も……」
「暑いし、部屋に戻ります」
ドアを閉めようとする。会話を続ければ、先輩に押し切られそうだし、想いが露呈してしまいそうで。しかし、先輩はドアに手をかける。
「ちょっと待ってくれ」
「何ですか?」
声音は冷淡になる。自己防衛のために。でも、目は彼をじっと見つめてしまう。
「ごめん、強引だったな。でも、本当にお前にしか頼めないんだ。なんとかならないか?」
真剣な眼差し。その熱意が、心の壁を溶かしていく。
「お前にしか頼めない」。特別な存在だと認められているようで。映画のためだけか、別の意図があるのか……。
「……時間をもらえますか?」
考える必要があった。先輩の映画に出演すること。それは彼との距離を縮めることを意味する。危険だ。でも、こんなに必要とされた事が今まであっただろうか?彼に惹かれる自分を止められない。
「先輩の映画って……何を残したいんですか?」
本心を知りたかった。只のフランス映画のオマージュなのか、俺へのこの執着はいったい何なのか。
「夏だよ。光と影と……お前の一瞬の輝きを残したいんだ」
熱すぎる視線と、「お前の一瞬の輝き」という言葉が刺さる。俺だけを見ているんだ……この人は……と感じる瞬間だった。
「へぇ...何か深そうですね……」
ドアを閉める。身体の奥が熱くなるのを感じた。何が起きているのか?先輩は本当に何なんだ...?考えすぎか。映画のためなんだろう……。
部屋に戻り、窓の外を眺める。夕暮れの空。セミの鳴き声。懐かしい光景。カメラを持ちたくなる。この瞬間を保存したくて。しかし、本当に留めておきたいのは、先輩との一瞬だった。
横になってスマホで『サマードレス』を検索する。フランス映画。男性同士の恋愛。海辺の夏の物語。胸が躍る。先輩は意図的に選んだのか?偶然か?
作品の内容を知り、関心が湧く。先輩の映画に参加すべきか。危険だが、俺たちの間に何かが生まれるかもしれない。期待すべきか、怖れるべきか……。
蝉の声。廊下の足音。彼が去った後も漂う気配。全てが、心を揺さぶる。
「考えておく」と言った背後に、答えは既にあった。恐れつつも、踏み出したい。
フレームの向こうの輝きに、手を伸ばしたい。彼の光の中へ。
◇
食堂で夕食を摂ろうとした時、入口で先輩に出くわす。視線が交差し、会釈する。しかし、目が合った瞬間、何かが通じ合った気がした。彼の眼差しに、諦めていない決意を感じる。
もう一度断るべきか?しかし、協力すれば、先輩との距離が縮まるかもしれない。
それは、喜びか、恐れか――判断がつかない。
カレーの香りが立ち込める中、窓際の一人席に腰を下ろす。空を見上げると綺麗な三日月。カメラに収めたいと思った。だが、それ以上に撮りたいのは、先輩の横顔だと気づく。カレーを口に運びながら、いろいろと考えた。思考がぐるぐると回る。
◇
「カナ、俺の映画に出てくれ!」
それから先輩の積極的なアプローチが始まった。サークルの部室、寮の廊下、コンビニの前。どこで会っても、同じ要請を繰り返す。俺は幾度となく断ってきた。映画に出るなんて、やっぱり俺とは無縁の世界だ。先輩の情熱は眩しすぎて、接近すれば火傷しそうに思える。それでも、彼は諦めない。
「本当にお前にしか頼めないんだ。なんとかならないか?」
その真摯な瞳に、内側から何かが熱くなる。入学したての頃、俺の写真の話など誰も聞く耳を持たなかった。それなのに、先輩だけは真剣に耳を傾け、「面白いな」と言ってくれたのだ。
その言葉が、氷の要塞に閉じ込められていた、俺の凍った心を溶かしていく。でも、だからこそ警戒する。再び傷つけられたら、もう回復できないから。
◇
熱帯夜。ドアをノックする音が響く。開けると、額を汗で湿らせ、頬を赤く染めた先輩が立っていた。
「冷房壊れてさ。死にそう。助けて」
「あの、入るんですか?」
慣れた様子で部屋に足を踏み入れてくる。映画出演の件では無いと言いながら。遠慮のない振る舞いに戸惑いつつも、どこか嬉しさも感じた。
「ごめん、ごめん。入っていい?フランソワ・オゾンの『サマードレス』とか、何本かお勧め持ってきたんだ」
DVDケースを掲げる笑顔に、期待が膨らむ。男性同士の恋愛を描いた、淡く切ない作品。彼が好きな映画で、この映画をオマージュした作品に、俺を出したいのだ。
「持ってるんですか?」
「単館系映画オタクをなめるなよ。カナが好きそうなのいろいろ選んできた」
胸を張る彼に、自然と笑みがこぼれた。壁に貼った写真を見て、「写真上手いな」と褒めてくれる。その言葉が、思いのほか心に響く。リュックから缶ビールを取り出し、
「ビール、飲む?」
「え、先輩、これ...」
アルコールは未経験だった。
「マリでいいよ。みんなそう呼んでるし」
「マリ...さん」
敬語が抜けない。でも距離が近くなって嬉しい。
「カナ、20歳だっけ?」
「先月です」
「じゃあ、飲めるな」
「実は...飲んだことないんですよね」
穏やかに笑ったマリは、プシュッと缶を開け、一本を手渡す。ためらいながら、口をつける。
「……苦い」
顔をしかめる俺に、彼は笑う。「まあね。でも慣れるよ」
DVDを再生し、映画は始まる。『サマードレス』のオープニング。海辺のコテージ、ゲイカップルの痴話喧嘩。マリは夢中で画面を注視している。
「このオープニング、印象的だよな。こんな始まり方他にない」
頷く。そして話は進み、男性たちがキスするシーン。そしてキッチンで愛し合う二人...。指先が震えた。隣で無防備にビールを飲むマリに、気づかれないよう息を潜める。心臓の鼓動が煩くて、画面の音声が遠のいていく。
俺はこの映画を紹介記事の画像でしか見たことがなく、初めて本編を見る。思ったよりも刺激的な内容で、彼はこれを俺と二人っきりで見ることをどう思っているのか?
芸術として捉えているから、見せられるのだろう。俺がゲイだと知らないから出来ることだ。それとも……誘っているのか?
「このドレスの質感、光の加減でこんなに変わるんだな」
マリはたまに感想を言いながら、俺の顔を盗み見してくる。いつも感じる熱い視線だけど、今日は隣に座っているし、距離が近いのに...。そんなに見つめて何考えてるの?と俺は思う。うっとりした表情に見える。
彼は俺の顔が好きみたいだけど、勘違いしそうだから止めて欲しい...。見返せば、きっと何かが壊れてしまう気がする...。だから、気づかないふりをしてあげた。
「ドレスを首に巻くシーン、最高じゃない?」
興奮した様子で語るマリ。主役が自転車に乗る時に、ドレスを首に巻いているこのシーンはかなり芸術性が高い。青い空にライトブルーのドレスが映えて、夏の眩しさやこの物語の切なさを表現している。
「うん……綺麗だ」
小声で返すが、隣のマリの存在が気になって集中できない。動揺を隠すため、冗談めかして言う。
「俺にこんな感じでドレス着せる気ですか?」
「似合いそうじゃん。カナ、顔キレイだから」
いつもの熱い視線で俺の心を焦がす。やはり、何か試されているのか?誘われているのか?そんなはずがないのに、頭が混乱する。
ゲイだとバレれば、嘲笑の的になるかもしれない。それでも、マリの無邪気な笑顔が、警戒心を解いていく。画面に視線を戻すが、映像は目に入らない。
「オゾンってゲイなんでしょ?」
思わず口から出てしまう。マリは少し驚くが答える。
「そうだよ。だからこそあの繊細さや大胆さがあるんだと思う」
「繊細、か……」
視線を遠くに向けた。内側に秘めた何かが、溢れ出しそうになる。
「マリさんは、どうして映画が好きになったんですか?」
「マリでいいって。敬語も禁止な」
「え……じゃあ、マリ」
呼び慣れないその名を、心臓が跳ねるほど意識しながら口にした。心の中では呼んでいたけど、口にするのをためらっていた名前が、自然と唇から零れて笑顔になる。
「高校の時、この『サマードレス』を見て衝撃受けたんだよね。それから映画にドハマりした」
「へえ」
ビールをもう一口。体が温かくなってくる。酒の力を借りなければ、話せない何かがあった。マリに接近したい、でも恐い。矛盾した感情が、アルコールで溶け始める。
「カナは?写真はいつから?」
「中学からで、本格的には高校から……かな」
「何かきっかけあったの?」
「写真で切り取った景色が、実際より美しく見えたから...かな」
実際は、もっと複雑な理由がある。だが、まだ語れない。
二本目のビールで、頭がふんわりし始める。初めての酒が回ってきた。マリの姿が、眩しく見える。少し寄りかかってみるが、彼は全く拒むことはなく、そのままぴったりと身体をもたれかけさせた。
「マリ……動くな……」
気づけば、俺はマリの背中に腕を回していた。酔っている振りをして。半分は酔った勢いで、半分の意識ははっきりしている。ただ、触れてみたい。体温、Tシャツの下の筋肉、全てを感じたくなってしまった。
ただの欲望か恋愛感情かも判断できない。ただ、触れたい。マリは身動きをせず、静かに俺の腕の中にいる。静寂が心を乱す。
「カナ……?」
マリの声が聞こえる。でも、腕をほどく気は無かった。俺は温もりを感じ続ける。映画は続いているが、内容は頭に入らない。
「……映画、面白い?」
小さな声で尋ねると、「うん、いい場面だよ」とマリは穏やかな声で答える。
離れろと言われなかったから、俺は調子にのり背後から強く抱きしめる。自分でも信じられない行動だが、アルコールの影響か、抑圧していた欲求が解放されていた。
彼を近くに感じたくて首筋に顔を埋める。これは完全にアウトだと思う。俺はどうしたいのだろうか?自問自答する。そして意識が遠のいていく。その後の記憶は曖昧だ。気づいたときは、俺はベッドに寝ていて、マリの姿はもうなかった。
さっきまでいた夢の世界では、俺は誰かと手をつなぎ海辺を歩いていた。カメラは持っていない。二人は並んでただ波の音を聴いている。ただそれだけの平和な夢だった。