悪徳令嬢は5年生、雪山で黒いコスモスに恋をする
私は三日月商会の会長の娘。バリバリの小学五年生ですわ。
お父様は三ヶ月締めと言うお金を集めるお仕事をして、世の中の役に立っている素晴らしい方なのです。
でも逆恨みをする連中は、どこにでも湧くものなのです。そうした輩は、学歴五年の私を狙います。
登下校時は注意してますのよ。心配症のお父様がたまごの護衛をつけてますから。
――――でも狡猾な奴らは、雪山での冬期遠足を狙いましたの。
この時期の雪山は大変混みます。たまごの護衛も一緒には行けず、現地で合流となります。
この人混みの中、私を見つけられるか心配ですわね。
――――私の心配は的中しました。
町中では目立つ目出し帽子。ここではさほど不自然ではないもの。
帽子を被った男達は、雪山で一人で雪だるまを作る私を簡単に拐いましたの。
私は猿轡をされ運ばれました。
男達は私をあまり使われていない山荘に閉じ込め、お父様に脅迫するつもりなのです。
……あれ、雪かきされてる?
男達はガチャガチャと乱暴にドアをこじ開けようとして――――急に開いた扉にバランスを失って転がった。
「遅かったじゃない、ジー…こ?」
この方を私は知っている。お父様のもう一つの仕事、身辺警護を請け負ってる会社の社員の方だわ。
ご挨拶の時にお話ししたから、覚えているもの。
確か、黒いコスモスさんってからかわれていた方――――
――――ボスッ!!
――――ドコッ!!
鈍い音と、倒される男達。
「怪談の正体見たり、なんてね。その子は怖い黒服の元締めの男の子よ。失せなさい」
か、カッコいい〜。お父様の部下より強いんじゃないかしら。
よろめく男達のお尻を蹴飛ばす。酔ってらっしゃるのか、ドカドカ倒れる男達を蹴たぐる黒いコスモス様。
逃げる男達とすれ違うように、たまごの護衛がやって来た。
「出たわね、妖怪の親玉」
あっ、駄目よ。そのたまごの護衛は味方なの〜っ……――――――ドカッ!
容赦ない黒いコスモスさんのキックが炸裂する。たまごの護衛が雪山を転がり落ちてゆく――――
――――たまごだけに、割れなかっただけマシかしら。
「スットラ〜イク!!」
転がるたまごの護衛は、雪だるまになって、悪いやつらを一網打尽にする。
「僕一人? 雪だるまのお化けも勘違いするものなね」
私は黒いコスモス様に惚れてしまいました。
そして決心したのです。お父様に庇護されるだけの悪徳令嬢は辞めると。
黒いコスモス――――黒里桜子様を守れるような、強い男の子になるんだって。
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
性への意識がいつ頃なのか、人によって早い遅いあるかと思います。
この主人公の悪徳令嬢は、憧れの対象がお父様から黒いコスモス様へ移り、カッコいい男の子になろうと決心しました。
どちらが良かったのか未来まではわかりませんが、少なくとも本人が決めたのならば、後悔はないのだと思います。
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