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01 友達作りてぇ

〜プロローグ〜





孤独は好きだ。大好きだ。こんぐらい言ってないとやってらんねぇ。

 


 俺は半年前まで中学生だった。

 少し遠回りな言い方だかそのぐらい時間がある。

 なんせ今は休み時間だ。誰とも喋らない俺としてはこのぐらいがちょうどいい。

 今は高校生になっている。無難の私立の高校で偏差値も特段高いわけでもなく、低いわけでもない。

 まさに無難だ。夢が無いように見えるがその逆だ。

どうしても叶えたい、いや叶えなければならないものだ。


「俺は友だちをつくりてぇ!!」


 いかん、学校を終えた気持ち良さと相まって心の声が漏れ出してしまった。少ない羞恥心が顔を出して周囲を確認したが、幸い誰も聞いていないようだ。

 足りないので心の中でもう一度

 

『彼女つくりてぇ!!』


 いかん、これは違うがまた心の声が漏れていたようだ。

 だがさっきの声出しで慣れてしまい少ない羞恥心の頭も見えない。

 いつか見た本で『自分の気持ちを明確にすれば必ず出来る』を信じて毎日やっているがなかなか出来ないものだ。

 まあその本を買ったのも、本を読んでたら話しかけて貰えないかな〜という甘い考えなのだが。

 そんなことはどうでもいい。まず考えなければならないのは友だちだ。

 だが、友だちをつくるにも準備が必要だろう。

 まず初めに一体全体友だちとはどの基準で言うのだろう。

 そこのコンビニの前でカップラーメンの汁を流してるなかなか厳ついお兄さんたちが言うダチとは違う気がする。

 なら、あそこのファミレスで明らかに何かを勧めている30代ぐらいのお兄さんたちの関係を友だちと言うのだろうか。

 これは考えれば考えるだけ意見が出そうだがそこで思考が止まる。

 家に着いたようだ。

 自分の自転車をしまい、家の鍵を用意する。

 家の付近は別に田舎でもなく都会でもなくといったところなので自転車が無いと、この環境では辛いものがある。

 そんなことを考えながら古いドアノブを回しドアを開ける。

「ただいまぁ」

 間抜けな声を出しながら家に上がっていき、靴を脱ぎ、そのまま歩いていく。母親はどうせいないので言っても言わなくても変わらない。

 と思っていたが――

 

「おかえり〜」

 また間抜け声。

 そこには何故か俺の唯一の幼なじみであり、唯一の母親以外の話し相手なのだが。

 その幼なじみは続けて――

「友だちできた?笑」

 そんなことを言ってきやがった。

 なんだその笑は、要らんやろ。LINEかよ

 まあLINE母親以外いないんだけどな。それを考えていると泣きそうになるからやめとくか。

 と言うよりもなぜ俺の唯一の幼なじみがここにいる。

 鍵を出したはいいが使ってないことに気づけよ俺。

 そこで落ち着いて母親の言葉を思い出す。

『言葉のキャッチボールはしろ』

 この言葉どうりキャッチボールをしてやろう。

 俺はできうる全ての力を表情筋に乗せて笑顔をつくり、優しい声色で綺麗な発音で言い張ってやった――――

 


「みんな今日も恥ずかしがり屋さんだった」


 

 なかなかにきつい、というかもはや泣いているかもしれない。

 幼なじみが「うわぁ〜」と言っていた気がしなくもないが、俺は忙しいので直ぐにベッドに行く。

 そう何よりも忙しいことがある。

 ベッドを涙で濡らすことだ。

 まあこれは半分冗談だが、いつも帰ってくるとやっている事がある。

 自分を客観的に見ることだ。これも本の影響で毎日やっている。

 ここまでやっているので、自分を客観的に見るのはなかなか、上手いと思っている。

 今日も自分が客観的になって考える。

 俺の名前は、じゅんだ。

 高見潤たかみじゅん

 顔は上の下だ、角度によっては上の中に見えなくもないぐらいのルックスをしている。

 身長178cmで脂肪は少なく、適度に筋肉もある。

勉強はクラスで上から数えた方が早いぐらいには出来る。

 これは自慢になるか分からないが、スポーツも得意で小学生の徒競走では1位以外とったことが無い。

 そんな俺がなぜ友達もできないし、ましてやモテもしない―――


 

 そんなことを考えていると心から漏れてしまいそうなので早めに処理をしておく。

「なんでや!!」

 布団の中で叫んでやった。

 横にいる幼なじみは「うわぁ!」と驚いていたがそんなものは俺には関係ない。

 俺の家はマンションの3階なのであまり声を出さないでやった。

 褒めて欲しい。と感傷に浸っていいがそれよりも忘れているものに気づく。

 ――さっき言った『俺は客観的に見ることが、上手い』は嘘のようだ――

 こんな無駄なことを考えてる間もスナック菓子をバリバリ食ってゲームをしているこの女がここにいて何も考えてなかった。

 もはや一番に考えなければ行けない問題ではないか。

 まず初めの質問と行こう。

「どうやって入った?」

 さっきの発声練習のおかげで声が裏返らなかったかのが救いだ。

「……」

 返答なしか。それも想定済みだ。バスケ部で使ったプラスチックの安っぽいメガホンを用意する。

 バスケ部に行ってもみんな俺の顔を忘れて出席にならなかったことを思い出したが、そんなことはどうでもいい。

 さっきよりも3倍ぐらいの声で――

「どうやって入った!?」

 その声で幼なじみはやっと反応した。

 「うるさ!なに?」

 と言われてしまったので仕方がない。

 もう一度言ってやろうと息を吸い込んでいたら――

「もういい!わかったから!」

 怒っているようにも聞こえるがこれはまだ2割ほどってところか。

「どうやって入っただっけ?普通に鍵を使って入るしか無理じゃない?」

「なぜお前が鍵を持っているのかっていうことだ」

 鍵以外で入れるならこの女はピッキングをマスターしてることになる。それかどこかのスパイ映画のように音を鳴らさずにガラスをくり抜くことができることになる。

それはそれで怖い。

「なぜって?そんなの美沙さんに貰った以外あんの?」

 美沙みささんとは俺の母親の名前だが、母親は住み込みで働いているためこの家には、滅多に来ない。

「どうして?」

「手渡しで」

 うんうん、こいつはメガホンのアンコールを求めているんだな。

 俺がメガホンを構えると――

「美沙さんから、潤のこと頼まれたの!」

「俺の母親が?」

「うん、なんかね、潤はどうせろくなもん食ってないからって雫に料理作って欲しいだって」

 そういう事か。さすがは俺の母親分かっている。少し前に母親が長期休みを貰っていたがその時のご飯はとても健康的だったが今では、そこの冷蔵庫に眠っている冷凍食品で命を繋いでいる。

『そんなことよりなぜこいつなんだ?』

 ――高峯雫たかみねしずくは俺の幼なじみで、高校1年生

すれ違ったら男は皆振り向く程度には美少女。

ギャルぽくも見えなくもないような外見をしている。

そんな美少女とは小学生の頃からクラスがずっと同じでよく遊んでいたが、中学に連れてその頻度は少なくなっていき、高校は同じだが挨拶もろくにしない――

「あと友人関係大丈夫かも聞いてきてって頼まれちゃった」

 だから最初からあんなに心に響くというか、心をトンカチで叩かれたぐらいの衝撃の質問をしてきたと――

 なら1回ぐらいジャブが欲しかったと思ったがやはりこいつが家にいる時点で渾身のストレートは決まっている。

『でもそれなら、なぜ俺じゃなく雫に行ったんだ?』

 と思考を加速させていると――

「私隣に引っ越したから」

「………………ん?」

俺が聞き返すと、雫はメガホンをせっせと用意して

俺の耳元でさっきの30倍ぐらいの大きさで

「――だから!私!()()()()()()()()()

 「………………え?」


 

 

 

 

 

 



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