表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/48

神絵師、呼ばれました。

シモ系の話題が微生存しております!駆逐しないように温かい目で見守ってください!

「っとと、こっちも電話か」


 悪友の荒い鼻息と声量をよそに、相手を確認してから通話ボタンをタップする。


「はい、もしもし鍵谷です。…電話お待ちしておりましたななみさん」

「もしもし、こちらこそお待たせしてしまい申し訳ありません、康太君」


 電話先はななみさんだったが、声はいくらか疲れているようだった。

 マスターアップまで間に合うのだろうか、その瀬戸際だと思う。うん。


「それでですが…昨日の契約の件、こちらを正式にお願いしたく思いまして、今お時間はよろしかったでしょうか?」

「少々お待ちください」


 後ろで騒いでいる奴はいるが…、航にジェスチャーを送ると了解のサインが返ってくる。こういうとき業界を知ってる人間だとありがたいな。すぐに静かにしてくれた。

 よし、大丈夫。


「すみません、お待たせいたしました。はい、お話を聞かせていただければと思います」

「ふふ、その言葉を嬉しく思います。ではまず先に、弊社作品のグラフィック、納品を確認いたしました。ありがとうございます」

「いえ、そちらにつきましては、私事で納品が遅れてしまい申し訳ありません」

「確かに遅れてしまったといえばそうですが、規定納期を超えているわけではなかったので問題ありません。それで次回のご相談なのですが、直接お話しをさせて(・・・・・・・・・)いただきたいと思いまして、本日はそのご連絡となります」


 ふむ…なるほど。

 あくまで対外的な交渉で進める、って意味なのかな?


「はい、問題ございません。私もいつでもお伺いすることはできますので」

「ありがとうございます。では具体的な日時でございますが、『先日』ご相談させて頂いた通り、本日の17時に弊社オフィスでご相談をさせて頂きたいと思いますが、いかがでしょうか?」


 『先日』…?

 昨日ではなく…。…だめだわからん。とりあえず話を合わせておこう。


「かしこまりました。お約束の通りに、お伺いさせていただきます」

「ありがとうございます」


 ななみさんの声のトーンが若干上がったみたいだ。つまり合ってる…ってこと?


「ではお待ちしておりますので、何卒よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」


 通話を切る。


「ねーねー。さっきのどういう意味?」


 それと同じタイミングで航が声を掛けてきた。


「正直わからん」

「ん? どゆこと?」

「いや、さっき辞めた話をしただろ? で、その辞めた直後に取引先の社長と会って契約を結んじゃったのよ。ただ遠回しに格式張ったりしているから…どういう意味なんだろうなって」

「んー。わからん」


 こいつ…。アホ面下げて思考停止しやがった。

 まぁ要領を得ない話だったし、未だに俺も不思議に思ってるからそう思われても仕方ないか。


「んで、17時にあっちの会社に行くことになってるのさ」

「ほぉほぉ…。それまた急な話だわさ」


 まぁ逃げてすぐに仕事に就くなんて、普通しないだろう。


「…ところで名刺はもってくん?」

「…あぁ、最近持ち出してなかったからすっかり忘れてたよ。サンクス」

「良いってことよ。ついでに言っておくと今の身なりで行くのはやめときなよ。みすぼらしいからね」


 航に言われて鏡を見ると、確かにこれはよろしくない。

 全体的にぱっとしない印象だ…。


「…髪でも切りに行くか」

「そーそー。一緒にひげや眉でも剃ってきてもらえばいいよ。こーちゃんは整えたら綺麗なんだからさぁ」


 ナチュラルに裏読み否定されたけど、航の言うことはもっともだから受け入れる。なんだかんだで心配はしてくれるのだろう、憎まれ口は叩くが。


「んじゃぁおれぁ原稿でも描きに行きますかなぁ」

「おう行ってこい。そして印税で奢れるまで稼いでくれ」

「ふつー逆じゃない? ちゃんと描いて出すとこにちゃんと出せばこーちゃんの方が稼げるでしょうに」

「マスかいて出すとか今は股間の話じゃないんだわ。このドスケベ」

「その発想がすでにドスケベだわ! んマァイヤらしいザマスね! ンマァ!」

「だから誰だよ」


 互いに軽口を叩きながらハイタッチしてから、航は窓から外に出た。

 だから玄関から出て行けよ。


「よし、てきぱき準備していきますかな…」


 着ている服を脱いでさっさと準備を始めていく。









--side. 赤月ななみ--


 康太君と通話が終了し、後ろにいた二人がホッとした顔を浮かべた。

 私もかなり緊張してましたけど、二人もなんだかんだで気になっていたみたいですね。

 作品も先ほど本当の意味でマスターアップもしましたし、今日は用事がなければ帰るだけで良いのですが…。


「さっき話をしたとおりで、康太君―――えっと、鍵谷様はこの後17時に参りますので、皆さんは上がっていただいても結構ですよ」

「ん、わかったわ。ならお言葉に甘えさせてもらうわね」


 さすがに机で寝させるところを見せるわけにはいかない。

 …たぶん彼、会社で寝ることに抵抗はないと思いますが…。


「ところで代表? …あなたその格好で打ち合わせでもするつもりなの?」

「………あっ」


 言われて気づいてしまいました…。

 私…昨日は徹夜残業で完成した後はそのまま仮眠をしていたのです…。


「あまり言いたくないけど…、女としてどうかと思うわ。それに…少しにおうわね」

「ッ!?」


 言われてしまった…!


(だめです! それはダメすぎます!!! 社長としての威厳もそうですけど、一女としてもダメです! 康太君の前にこんな姿ででることはできません!)


「い、急いで準備しないと!?」


 やれやれと首を振ってきますが、私はなりふりを構っていられません! 早速身支度をしなくては!

 …………ところでどうしてチーフは身だしなみを整えているのでしょう? 中番シフトで昼から出勤している彼女はともかく…。

 打ち合わせは私と彼女で出るつもりなのですが…。


--side. 赤月ななみ fin.--


過去の知り合いから「このキャラ達以上にお前は口から呼吸するかのように自然に下ネタを吐くよね」と評されそうになりました。

拙者、御年まで全集中シモの呼吸でござ早漏。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ