神絵師、収録に参加しました。
どうやら収録は順調らしい。
とは言っても絵描きの俺やさくらは関係なく、今日も楽しくグラフィック。いやまぁ興味があるかと言われたら興味はあるけど、餅は餅屋に頼むように俺らの場合ななみさんや水鳥さんに任せるのが良いのだ。だって俺やさくらが声を聴いたところで「いいですねぇ」しか感想出ないと思う。
なんだかんだ言ってはいるけど、行ってみたいは行ってみたいというミーハーな俺がいるのも事実。たださっきも言った通り何も知らない人間が言っても感想くらいしかでないし邪魔になりそうなんだよなぁ……。
「もしかして収録行ってみたいですか?」
収録が始まってうずうずしているのがついにバレたんだろうか。ななみさんからそう質問された。
「あっあー、少し……興味ありますね」
バリバリ興味あります。
「それじゃあ次の収録で一緒に行きますか?」
「え、いいんですか?」
「もちろん」
良いらしい。さすがに今日ついていくのはダメらしいのでスケジュールを調整してもらいアフレコ同伴させてもらうことに。
ということで今日収録するスタジオに着いた。緊張してきたぜ……。同伴者はななみさん。本当は水鳥さんも予定していたけど必須授業があるらしい。
「おはようございます! らくがきそふとです!」
スタジオ特有の重厚感ある防音扉を開けながら可愛らしい挨拶をするわが社長ことななみさん。それに返ってきたのは聞きなじみのある声。
「初めまして。「エンジェルサイン」所属の雪沢萌絵と申します」
「はじめまして~! 無所属で楓役を担当してます麻倉優奈です~」
ゲームプレイ時にはだいたい聞いたことのある声優さんが挨拶をしてくれた。なんだかちょっぴり優越感を覚えるのは気のせいだろうか?
「「よろしくお願いします!」」
「あっ、ど、どうも……しがない絵描きをしてる鍵谷康太です……」
というか……本名? だよね? 確か別名義があったはずだけど紹介で言わないのは暗黙のルールかな? もう片方の人は一度聴いたら忘れない名前だった気がするけど。
「あっはっはっ、君ほどの人間がしがないって紹介されちゃぁワシらはなんだって話になっちまうよ」
「本当ですよね寺井さん。私たちなんてなんてなるんでしょうかね~」
音響の機材の前で良い椅子に座りながら大笑いする寺井?さん。
「今回のワシはしがないエンジニアだから気軽に頼むよ」
「はぁ、よ、よろしくお願いします」
(寺井さんアニメ監督も務めていらっしゃったこともありますね)
(そうだったんですか!?)
この人もプロなんだ。しかもアニメ監督も経験されてるなら安心して任せられる。というかよくこの人のスケジュール空いてたな……。空いてる視聴用のソファーに座る。
改めて周囲を確認すると、音響監督の椅子の前にある機材? のようなものが一番目に付く。調節用のキーが50以上もあってボリューム調整用のレベルですら10以上もある。あれって全部使いこなせるのかな?
あとは収録ブースを覗ける小さな窓から中にいる二人を見ることもできる。本番シーンでは幕を下ろすらしい。カーテンのようなもので遮るらしい。配慮だとか。
あとは俺らが座るスペースや予備の機材などがおいてあったりする。うん、簡素。
「さて今日は日常シーンの掛け合いとソロの収録ですかね」
「おっしゃるとおり、序盤の日常シーンです」
「マイク調整も終わってますから演者さんの準備が出来次第始めていきましょうか」
「私の方は大丈夫です」
「あたしの方も準備できてまーす」
「らくがきそふとさんは大丈夫ですか?」
「演者さん、台本の不備や不明点、演技の質問などはありますでしょうか?」
「問題ありません!」
「こっちも大丈夫です!」
「であればこちらも大丈夫です」
俺の場合はなにを準備すればいいかわからないからな! へっ。
演技とか知らないから台本(A4用紙)かななみさんが持ってきたノートパソコンにある台本を見ながら読み忘れがないかを確認すればいいらしい。気になるところがあれば都度意見すればいいらしい。さきにななみさんに教えてもらった。
よっしゃあわくわくしてきたぜ!
「それでは55P1行目から、日常シーン掛け合いから始めていきます。キューのあと数秒後からスタートでよろしくお願いします」
「お願いしまーす!」
「3.2.1,キュー」
そうして収録がはじまった。
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今日分の収録が終了。いやぁ、楽しかったね!
何度か休憩をはさみつつの長時間収録だったけど……。
プロの声優ってやっぱすげぇわ! なんで難しい言葉もさらさら言えるのかわからんし全然つっかえないし演技もうめぇしでガチモンのプロじゃんって何度も感心したわ。シーンの切り替わりかなんかかな? 途中で確認されることもあったけど、そこはななみさんの専業でもあるから任せたら意見が飛び交うし音響監督さんも素直に意見してより良いものに出来上がっていくのが身をもって体験できた。
こりゃあ何度来ても楽しいわ。でもさすがに一回目でなにか言えるかなどの意見があるわけないからこの一回で十分だぁね。台本あったとしても演技についてはさらさらわからんち。
まぁなにか回収できたかといえば音響スタジオそのものが始めてだからスタジオの様子や機材、収録ブースなどを目に焼き付けておくくらいかな? あとスタジオ関係者へのコネクション。
そのたもろもろ含めても一度は体験してみてよかった。
今回の話はあくまでイメージです。




