表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/48

神絵師、らくがきそふとに紹介しました。

ねっ☆

 あのあとなんやかんやで収束した。


「じゃあ改めまして、あたしは沢村萌衣菜って言います! 先輩とは大学の同じ学年なので気軽にため口聞いちゃってください!」

「あ、あー…。沢村さんでしたか。お噂はかねがね…私は赤月ななみと申します。よろしくお願いいたしますね」

「赤月さん! やだー有名人じゃないですかー! そんなに引かないでくださいよ~というかこれからよろしくお願いしますねっ☆!」

「はっ、はい。お願いします…ね?」


 そして名前を名乗ったのは良いけど片方はハイテンションなのに対してもう片方は割と引いている。陰のモノに絡む陽キャみたいな構図ができあがっているのが意外や意外。

 ななみさんのことだから受け流してニコニコするのかと思ってたけど、なんか押し切られているように見える。


「ふたりとも大学じゃ有名だしな、お互いに聞いたことあるかもしれないな。ってことで、ななみさん」

「あ、はい。そういうことですよね?」


 間に割って入るとななみさんは調子をとりもどしてくれた。


「ですね。人格以外のスペックは保証しますし信用っていう点においても問題ないと思いますよ。責任って点においては…ええ、手綱をちゃんと握れれば忠実にやってくれますから」

「犬ですか?」

「えっと…沢村さんは他のお仕事も…その…たくさんされてますよね?」

「言葉を濁してくれる赤月さんやっさすぃ~」

「早朝深夜で固定はあるらしいけど、昼夕方は要相談じゃないかな」

「いやんそれあたしのプライバシーですよぅ?」

「いえ、それでも十分に……いえなんでもないです」

「え、なんで今引き攣ったんですか?」


 笑顔が取り繕えなかったようで言葉に切れがなく、容赦なく萌衣菜のツッコミをもらっているななみさん。


「というかせんぱぁい? そろそろ話にまぜてくださいよ~ぅ」


 ポスポスと軽く小突いてくる体力バカ。


「悪いな。そういうわけでななみさん、コイツを紹介させてもらうんだけど…どうかな?」

「そう、ですね。康太君の推薦ということであれば大丈夫、と言いたいのですが…」


 ちらっと萌衣菜を見る。それにつられて彼女をみると不思議そうな顔をしていた。


「あい? 面接ですか?」


 間違ってはいない。


「もちろんですが、他のお仕事のこともありますので、その件に関してもご相談をさせて頂ければと。従業員は私以外にもいますから」

「でっすよねー! いつにしますか? あたしはいつでも大丈夫でっす!」

「そう…ですね。では今からお話しましょう。面接ではなく雑談ベースで大丈夫ですので」

「はーい☆」


 にぱっと笑顔に切り替える萌衣菜と表情を崩さなくなったななみさん。だんだんこいつに慣れてきたのかな。さすがだなぁ。


「って、時間やべぇな。ななみさん、あとは任せちゃってもいいかな?」

「ドローイングの時間ですよね? こちらはもう大丈夫ですので、どんと任せちゃってください」

「あはは、それじゃ後はお願いね」

「はい。ありがとうございました、康太君」


 ななみさんにニコニコと手を振りながら送り出されるのを新鮮に感じながら、ちぇりぶろのブースを後にした。

 ……戻ってギリギリかなぁ。








-- side. ななみ—


 手を振って送り出すのは…すごく新鮮ですね。

 なんだか…その……もにょもにょ……みたいな関係みたいで……えへへ……。


「赤月さん? おーい?」

「はいなんでしょうか?」


 忘れていませんよ。ええもちろん忘れていません。

 私が康太君の横に並び立つにあたって障害になりそうな壁の一人ですからね。


「赤月さんって、先輩のこと好きなんですか?」


 ……。

 おっふ……これはどう答えるべきものでしょうか?

 疑われているのでしょうか。間違いなく疑われていますね。


 大学生活で康太君の話を聞くことはあまりありません。それどころか話題に上がることはめったになく、あがったときも三谷先生…ではなく大谷さんの話題になったときか、目の前の沢村さんとのありもしない噂話(・・・・・・・・)に出てくるだけ。それもあの平凡な容姿だとか地味な外見やら、まるで死んだ魚の目みたいだとか。まったくもって失礼しちゃいますね! 最後のはやや否定しづらかったのですが……それでも今は死んだ魚ではなく生き生きとした魚の目です。


 誠に遺憾の意を唱えさせていただきたいのですが、康太君の場合は着飾らないありのままが一番ですし、きちんとおしゃれをすれば整うのですから、外聞の意見は知ったことではありませんし、私を含めた身近な人だけが知っていれば良いのですよ。


 ちょっと逸れましたが……誤魔化してもあまりよいとは思えない気がします。噂話程度でも牽制しなければなりません。

 それ以上に康太君が紹介してくれたのですから、信用しても大丈夫でしょう。


「そうですね…。少なくとも好意はもっております」


 本当は好意以上なのですが、それを素直に伝えちゃいますといろいろ問題がありますからね。嘘はついていないです。


「あはっ☆ よかったー!」


 ……あれ?


「先輩のことをちゃんと好きって言ってくれるひとがほかにもいてくれて、あたし嬉しいです!」


 この方、良い人なのでは?


「ただでさえ誤解されやすい人なのに、訂正しようとしませんからね、先輩ってば」

「わかります。そのくせ他人には優しいのですから心配になってしまうのですよね」

「そうなんですよー! もー、先輩ってば罪づくりなんですからー」


 仕方ない人だなー、とつぶやく沢村さんは楽しそうでした。

 さっきまでは壁とか言ってしまいましたが、沢村さん普通に良い人ですね。


「でもちょーっとほかの人に優しすぎっていうか」

「身内には特段甘いお方ですよね」

「そのくせ許容ラインは低いですし」

「甘やかされないか心配です」

「あと鈍感」

「もうちょっと私たちの気持ちに気づいてもいいと思います」


 ・・・・・・。


「「そこまでいう必要はないんじゃない(のでしょうか)?」」


 なんとなく私たちの気持ちは通じたような気がします。


「やー、ななみさんノリいいっスね~」

「ふふ。お堅いだけじゃありませんよ? 沢村さん」

「あたしのことは萌衣菜でもなんでもいいよ? あたしも敬語とか使うの面倒なんで」

「わかりました、メイちゃん。私のは癖のようなものなので気にしないでください」

「うぃ~ス」


 たぶんこれが彼女の処世術なのでしょう。でも悪い気はしません。康太君が気に入る気持ちが少しだけわかりました。

 恋愛としてのアレではとってもアレな気持ちになるのですが…。


「ところで…、あたし事務スタッフって聞きてるんスけど…なんの事務なんですかねぇ?」

「あれ? 康太君からは何も聞いてないのでしょうか?」

「いえ全く(‘ω’)」


 そんな「醤油か」みたいな顔で言わないでください…。


「それでは会社のお話から説明しますね」

「おす! よろしくおねがいしゃーす!」


 ということで、美少女ゲームブランド「らくがきそふと」の説明をします。現地にきてるのですからそこあたりのハードルは低いかと思いますが、ちょっとだけ緊張します。

 ただ予想とは外れて……何と言えばよいのでしょうか。説明を進める度にメイちゃんから「楽しそう」とか「やってみたい」という、前向きな挑戦心が伝わってきます。康太君を見ているみたいで、羨ましいというか頼もしいというか。


「―――という感じで、弊社の規模ではスタッフの手が足りないというところで人材を募集していたのです」

「ほへぇー。いやー…まさかこんな美人が社長やってたなんて…びっくりっスわ」

「大学の方には伏せてますからね」

「知ってるのは…先輩たちだけ?」


 聞かれて交友関係を思い出します。


「そうですね。聖ちゃん…うちのもう一人の代表と康太君、それと紫咲さんに大谷さんくらいでしょうか」

「……あれ?」


 どういうわけか不思議そうな顔をする


「えっと…どうしました?」

「あ、いえ…うーん? ま、いっか! 問題解決したので大丈夫でっす」

「……?」


 よくわかりませんが、解決したのなら大丈夫ですかね。


「えっと…続けますね? メイちゃんにはほかのお仕事もあるかと思いますし、毎日…と言うのは難しいと思いますが、事務スタッフを受けてくれるということで間違いは…」

「ないっスね。先輩からの紹介ですし、こーいう仕事はあたしもやったことないですけど」


 自信なさそうに答えるメイちゃん。ですが…。


「それは大丈夫ですよ。私たちはどちらかと言えば信用のほうを重要視してましたから、未経験でも問題ありません」


 です。康太君からなのでその点は心配なく、康太君に好意がある以外の問題は何一つない好条件。せっかくなので囲ってしまいたいところですが、それは追々としましょう。


「意思確認が取れたので、このまま進めさせてもらいますね。この後聖ちゃんも交えて軽く面談して本決定という形にしようかと思います」

「ありがとうございまっす! というか……、こんな簡単に決めていいのん?」

「大丈夫ですよ。少なくとも私がそう判断しましたから」

「うん? まあそういうことなら…?」


 私が判断をするので、そこは自信をもって言わせていただきますよ。ええ、もちろんです。


「ということなので、もう少しだけ私とお話しましょう?」

「うーす! 代表!」


 代表と呼ばれるのは少しくすぐったいですね。でも…悪くありません。できればお友達にもなりたいですが…努力します。


「そういえば噂話で聞いたのですが…康太君に婚約を申し込んでるというのは本当でしょうか?」

「ほへ? ガチだよん?」

「へ?」

「ん?」

「……」

「……」


 ……あれ? 私…判断間違えちゃいましたかね?



-- side. ななみ End.--

某柑橘系のブランドで初めて購入したのは『PRIMAL×HEARTS』なんですよね。

金賞になった(発売時はPC未プレイ勢)という話題もそうですが、個人的には話題構成が好きだったりします。シンプルイズベストって感じの展開はやはりブランドならではの特色ですね。

あとはテンプレと化したあのやり取りは初回でも面白いですし、シリーズ毎で登場するたびに「やってること変わらねぇな。でも今回もやってくれて嬉しいですわ。ゲラゲラ」って感じで楽しんでました。


物語を楽しみつつ安定したドスケベ成分がほしいってことなら間違いなくこちらのブランドを推させて頂きます。もちろんドスケベなしでも面白いですよ。


追記

ジュエハはいいぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ