女社長、頑張ります。
で、昨日までは帰って明日のスケジュールを立てればよかったのですが…。
初めてのデートなので…どうしましょう?
明日は朝からなので、早めに起きて身体を起こさないと…それに服も決めて…あ、服はどうしましょう?
…あわわわ…デートのコーディネートとかドレスコードってあるんでしょうか? 検索検索…。
えっ!? 男性とデートがめんどくさいってあるんですか!? えっ、待ち合わせ場所に意味ってあったんですか!? で、デートって、こんなに恐ろしいものだったなんて…。
…あ、でもこれはよさそうですね…確か似たような服ありますし、雰囲気も私にあってそうですから、候補にしておきましょう。あ、こっちのシックなコートで攻める感じもいいですね。あ、これは康太君好きそう…。
―――3時間後―――
むふふ…。妄想がはかどっちゃいました。
でもやっぱり、私らしくが一番だなって思うので、いつもどおりに白黒で行きましょうか。冒険は…康太君と付き合えてからにしましょう。
…んぇ?
つ、つきあってないですよ! まだ! 明日はデート、デートなんです!
そうです。だから冒険はしないんです!
似合ってないって言われたら凹んじゃいますからね…、でも康太君なら気を使ってくれそうな。それはそれで優しい康太君なのでアリですね!
って、そうじゃないですね。
服は決まりましたし、髪も今日美容室を予約しましたから、外見は大丈夫…。内面は…諦めましょう! いつもの私で勝負です!
あ、もう良い時間ですね。早く寝て体調整えないと!
美容室で整えた私は準備万端です!
これで康太君の隣に並んでも違和感を覚えられないくらいには問題ないと思いますね。…って思ってもらえればいいんですけど…。
っと、今の時間は……15分前。うん、大丈夫ですね。
でも康太君は…あ、いました。って、やばばばば!
え、康太君ですよね? えっえっ? ちょっと…綺麗になってますね!?
いつものシンプルなラフスタイルも私は好きですが、今日みたいなカジュアル系だとちょっとだけ雰囲気が学生っぽい感じになりました。それにアクセント代わりについてるシルバーアクセはいつも以上に大人っぽさがあって、すごくやばいです。えっとなんでしょう。すごい、等身大のデートみたいです。
やばいです。
それに全体的にさわやかな印象です…もしかして、私のために? そうだったら…嬉しいな。康太君はどうなんでしょう……いえ、それを聞くのは野暮ですよね。
聖ちゃんにもさくらちゃんも、ふたりとも用事があるって言ってたし…たぶん尾行とかはできないし…。今だけは、お仕事もふたりのことも忘れて、康太君と楽しんできちゃいましょう!
ふふっ。
「康太君、お待たせしました」
-- side. 赤月ななみ End.--
-- side. 水鳥聖--
…はぁ。
あの子ってば…。
でもまぁそれだけ浮かれてるってことでしょう。最近のななみには目を向けられないですからね。空回りも酷いですし、周りも見えてないですから。
康太君を焚きつければ、何かしらの突破口くらいは開けてくれるとは思いましたが…まさかそのすぐ後にデートに誘われるとは思っていなかった。
……。
「ふふっ、今だけは女の子してくださいね、ななみ」
「なーんて言ってますけど、ボクたちがやってるの、完全に出歯亀なのですよ?」
「いいんです。それはそれ、これはこれです」
「はぁ…なのです」
隣でさくらが何かを言ってますが、知りませんね。
せっかくの参考なのですから、これを生かさずにいられません。
身近なデート参考なんて、想像で描くのにも限界はありますからね。
あ、企画遅れた分の責任は今日のデートで清算してもらおうかな?
-- side. 水鳥聖End.--
ななみさんの本気を見てから起動できるまで時間を要したところで、俺たちは歩いて移動。
まぁななみさんにとっては最寄りだし、俺もよく足を運んでるから見慣れた、といえば見慣れた駅前だ。とはいえ、さすがに男女という間柄を意識して二人きりで歩くというのは……。
「あの…えっと…康太君?」
「ん? どうかしました? あぁ、最初は気軽にウィンドウショッピングにしようかなって思いますけど…」
「はい、だ、大丈夫ですけど……」
……?
あー……もしかして人込みが多いのを気にしてるのか? うーむ…それなら手を引いてあげるのが一番なんだろうけども…いきなり手をつないでも良いものなのか…。
エロゲとかなら選択肢があったり手をつないでいく描写があったりしたけども…現実でそれをやるのも…。拒否されたら凹むなぁ…。
…いや、ここはデートに誘ったものとしてちゃんとリードしてあげないといけないよな…。
「ななみさん、ちょっと失礼」
「ふぇ? ひゃぁっ!?」
ななみさんの小さな手を握ってちょっとだけ引き、近くに抱き寄せる。
「人も多いですし、こっちのほうが迷わずに済みますからね」
「あわ…あばばば…」
「もし嫌だったりしたら離しますので、言ってくださいね?」
「あ、そんな、ことない、です! ま、迷っちゃうと思いますのでこのままでお願いしますっっ!!」
最寄り駅で迷うん?
って、さすがにそんなことないよな。ななみさんだって緊張してるんだろう、相方が俺みたいなので申し訳ないけども、今日ばっかりは彼氏ヅラさせてもらうぞ。
じゃないと、隣で顔を真っ赤にしているななみさんに失礼だもんな。
「わかりました、ではこのまま行きましょう」
「はいっ!」
そして俺たちのデートが始まった。
-- side. さくら--
はぁ~…。
「羨ましいのです…」
「どうしたのさくら? 珍しいことを言うなんて」
「どうしたもこうしたもないのですよ。ボクだって女の子なのですから、デートの一つや二つもしてみたいのです…」
「あら、あなたならそこら辺の男を引っかければできると思うけれど」
「そういう意味じゃないのです」
「なら早く特別な異性を作ることね」
「それはわかっているのです……」
それはわかってるのですよ…問題はその異性に相手がいるかもしれない、ってことなのですよ…。
はぁ…。
今も目の前でイチャイチャしてる二人がとっても羨ましいのです…。ボクだってかぎやさんとお出かけしてみたいです、あんな感じでボクに似合いそうな服とかかぎやさんの服とか見て回りたいのです。あとはゲームも一緒にやりたいのです。
でもそれが叶うことはなさそうなのですよ…。
はぁ~……。
こればっかりは…仕方ないのです。
「……うーん、これはアレですね。リア充爆発しろって感情ですね」
「いきなりどうしたのですか? すごく物騒なのですよ?」
「いえ、無自覚なボーイがどれくらいの女の子を引っかけているものなのかなと」
「…??」
話の流れ的にはきっとかぎやさんのことを言ってるのだとは思うのです。
でもどうしてそんな考えに至るのかは……。
……あれ?
「もしかして…ボクのことも、バレてるのです?」
「確信できたのはこの間ですけどね。さくらのその気持ちが尊敬と恋情どちらの比率が大きいかまでは推測できかねてますが…」
「ふぐぉ…」
ぬぅぉ…かなり恥ずかしいのです…。
で、でもななみさんほどわかりやすくはなかったはずなのです!
「そうですね、あのぽんこつほどではありませんが、彼への態度とか視線とか…ちょっと気を向ければさくらさんもわかりやすい部類ですよ?」
むむむ…。
ボクはあくまで尊敬しているというポーズをとっていたのですが…。
「まぁかぎやさんにバレていないのであれば問題はないのです」
「そういう問題ですかね…?」
ボクのなかではそうなのです!
あの幸せそうなななみさんからかぎやさんを奪おうだなんて思えないのです。やっちゃったら最後なのですよ…。
なのでボクは翼を広げてくーるにさるしかないのです。
…あ、そこのパンケーキ美味しそうなのですー! 突撃するのですー!
やー!
-- side. さくら End.--
デート編の序章ではございますが、現在起承転結でいうと転の部分です。




