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神絵師、参加する理由を言いました。

「三人とも顔を上げてください…」


 ななみさんが『美しょゲーアワード』で大賞を取りたいと、水鳥さんが『一緒に仕事をしたい』と、来宮さんが真摯に頭をさげている。

 みんなが俺の絵を認めてくれている、楽しんでくれているのは理解していた。だけど、ここまで誠実にお願いをされたのは二回目。


 小さい頃。航に「一緒に漫画を作ろう」と言われて初めて描いた同人誌。そこから航が漫画を描くことにハマりだして手伝いながらも見事に連載を勝ち取った、航は本物の天才だ。その天才から「一緒に漫画を作ってほしい」って言われたけど…、俺は逃げてしまった。


 自分がやっているのが「絵を描いていること」だけで、あいつは商業誌で。でもそんなの関係ないとばかりに、漫画のまの字すら知らない素人でも、絵を描くことしかできない人間でも、航は業界の戦場にともに来てほしいと言った。


 でも、全力で本気の漫画を創りたい航に、遊びの延長線上で「絵を描いていた」だけの俺。そう思った瞬間、漫画家としての航を見ることができなくなってしまった。


 恥ずかしいことこの上ない。そんな人間が商業誌で戦いに行く人間の足を引っ張るだけ。絵と漫画は違うし。ずぶの素人なんかよりプロのアシスタントを起用した方が良い漫画を作れるだろう。

 そんないろいろと適当に言い訳を述べては、本気の航から逃げてしまったんだ。


「あの会社を辞めて、細々と絵を描いていこうって思ってました…」


 俺が断ったとき…あの時の航はどんな目をしていたか。

 あの時が人生で一番怖かった。航は…すごく悔しそうな眼をしていた…。そして同時に、悲嘆そうな顔をしていたんだ。


「みなさんに…俺の力が必要だって…言ってくれて、すごく嬉しいです」


 それでも航たちは…俺の絵を好きだと言ってくれた。ファンの人たちは「もっと見たい」と言ってくれていた。

 そしてまた、俺を拾ってくれたななみさんと、受け入れてくれた水鳥さんと来宮さんが、ともにゲームを作りたいと言ってくれたんだ。


 またみんなが…「かや。」を望んでいる。

 それだけで十分だった。

 だから俺は。


「こちらこそ、よろしくお願いします!」


 だから俺は、逃げることをやめた。もう絵から逃げるのだけは、もう辞めだ。


「俺は…絵を描くことしかできませんし、それ以外は本当に役に立たないと思います。でも、絵だけは、誰にも負けるつもりありません」


 これは、仲間に対する誓いだ。


「絵と共に、みなさんとありたいって思います。今度こそ、俺は逃げないで皆さんと一緒に、ゲーム業界のトップに立って見せます!」


 昨日は明確に打倒すべき敵役へ、今日は共に背を預けながら戦う仲間へ。


「俺の目標は…らくがきそふとで覇権をとること。俺もこれから…本気を出しますので」


 優生さんには約束をし、みんなには宣誓を。


「らくがきそふとに、俺を入れてください!!!」


 これが俺の…、俺達『らくがきそふと』の第一歩だ。


――第一部、完――


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