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女社長、裏側では…

--side. 赤月ななみ--


 少し前から康太君とお父さんの会話を外で聞いていました。

 へぇほぉ。

 お父さん、そうだったんだぁ。


「ふむ、男同士…仲を認められた父と娘の彼氏との会話…参考になりますね」

「ち、違うよ(汗) まだ康太君が認めてくれてないですから(汗)」

「わかっているのですよ! そんなことよりも話を聞かないとなのです!!」


 両隣で私と同じように会話を盗み聞…ではなく拝聴している二人。

 さくらちゃんは小声で叫ぶという器用な真似をしていますが、今その技術はいらないと思う。


「…ふふ、懐かしいね。ななみの初めてのサマコミ」

「えへへ…あの時初めてかぎっ子に行ったけど…かぎっ子の、かや。さんの絵に一目ぼれしちゃいましたから…」

「ほぇ~…。ななみさん、その時から初恋なのですか~」

「うん…えへへ…///」


 あの時はお手伝いだと思っていた人たちが同年代ということを知り、私は描いた人とお話ししたいなと思ってサークルを覗いてましたが…同年代でいたのは康太君ではなく、確かあの時は紫咲さんしかいませんでしたね。


 康太君は当日に発熱で来れなかったと、当時の紫咲さんから聞きました。昔のことを私は覚えていましたが…この間の紫咲さんを見る限りだと、あの頃のことは覚えてなさそうでしたね…。

 でも、そう考えると私と聖ちゃんって…なんだかんだでかぎっ子の最古参なんですよね。最古参…ふふふ。


「若い世代、か…」


 お父さんが康太君に言った言葉を聖ちゃんが復唱して、ハッとしました。

 起業するにあたって私たちがお父さんに言われていたことでしたが…、世代交代はもっと後の話だと思っていました。


 私は美少女ゲームが作りたいと起業したのであって…まず1本目を作って当てて、生き残ることを最優先にしていたので、お父さんたちを追い越したいという目標はかなり優先が低く、数年後か10年…下手したらできないかも? とすら思っていましたから。


「うーん、ボクたちもいつかは取りたいって…そんな夢のお話しはしてたのですけど…」

「さすがに今は考えられない、ですね…」

「ですね…。なので今…私たちにできることを少しずつ進めていきましょう」

「そうですね」

「はいなのです!」


 私たちは扉から離れて仕事に戻ることにしました。

 でも少しずつ進める、とは言いますか…月間賞や大賞などを取ったこともあるお父さんたちに…自分たちが叶うとは到底……―――。


「次の覇権はらくがきそふとが頂きますよ」


 ―――……。


 康太君の言葉に、私たち全員足が止まります。

 その言葉には私たちにはない堂々とした強さがあり…そして頼もしさで溢れていました。ただ…ほかの二人がどう思ったかはわかりませんが、康太君が発言をした、その事実に社長として恥ずかしさを覚えました。


 社長が…社長の私が、みんなを引っ張らないでどうするのか、と。

 康太君にはのびのびと好きなように描かせたい、その思いをさせたいにも関わらず、覇権を取ると言わせてしまったのは誰なのか…。


 私は…覚悟が足りていませんでした…。

 すごく悔しいです…。


「俺も…ななみのために本気を出しますから」


 ……。

 …!?!?!?


「ほぇ!?」

「…あら?」

「ぴゃぁ…」


 康太君…!? い、い、い、いったい何を!?


「ふふ、よかったですね、代表?」

「な、なな、何をでございまするか!?」

「ななみちゃん、すごく慌ててるのです♪ とっても可愛いのです♪」

「あわわわわわあわわてててなんかないですからからね!?」


 あぁぁぁぁ…顔がすごく赤い…。


(でも…)


 私たちが諦めていたことを…康太君は誓ってくれました…。

 折れかけていた心は…康太君の言葉で立ち直ることができました…。


(康太君は…やっぱりカッコイイです…)


 今まで自分の気持ちには我慢して…いつか同じ立場になったら…なんて遠回りしてきましたが…。康太君は容易く壁を破ってくれました。


「これは宣戦布告です。いつか俺たちが、業界を背負ってみせますよ」

「ぁ…ぅ…」

「あらあら…これは…♪」

「あふ、だめなのです♪」


 あ…あぁ…。感情が爆発しそう…。

 康太君に…トドメを刺された…そんな気持ちで…。

 だめ…わかっちゃいました…。


 でも…ずっと憧れていた人にこんなこと言われたらぁ…落ちちゃうに決まってるじゃないですかぁ…。

 今までは憧れでしたが……今感じているのは…全く別の感情で…。

 あぅぅ…。康太君のばかぁ…。

 私も…康太君に負けない女に…なります!


--side. 赤月ななみ End.--

ななみさんどこかに落ちてねぇかな……。

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