お手紙、ひとひら
ふぅわり、と
丸く淡い紅色の花びらが、ベランダに1枚
――もしかして、隣のお庭から届いたお手紙とか?
眼下に見える(推定)杏の木は、今を盛りと咲き誇り
こっちを見てと言わんばかりに薄紅一色
そんな杏が気まぐれに、手紙をひとひら、送って寄こしても不思議じゃない
誰宛かな?
去年からプランターで頑張り続けるネギ?
主不在の鉢植えに、ちゃっかり葉を広げてるタンポポ?
それとも我が家の小さな娘?
杏からの手紙が、私に読めたらいいのに
足元の花びらにホッコリしつつ
5才の娘に尋ねると、彼女はすぐに答えをくれた
「これはアオちゃん宛。"いつも見てくれてありがとう"って書いてたよ」
アオちゃん!
いつの間にか住み着いてた
ベランダ暮らしの小さなカエル
勝手につけた、名前はアオちゃん
今年はまだ会ってなかったけど……
なぁんだ、アオちゃん宛だったのかぁ
春のお知らせが届いたアオちゃん
冬眠から、もう目覚めたのかな?
素敵だなぁ
ふいに舞い来る花びらも
花の手紙が読める幼子も
優しい紅色 かわいい杏花
明日は誰にお便り出すの?