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「それってさー。宍戸君が沙希に気があるんじゃない?」
数週間過ぎたお昼休みに友だちに宍戸君のことを話をすると彼女はそう言ってくる。
「いやいや、ありえないって。それ」
「そうかなー。あー、でもまあ、話しやすいからってのもありそうだけどさ」
「私が?」
「だって、沙希。イケメンとか全く興味ないじゃん」
いや、まったく興味がないわけではない。ただ、周りが騒ぐから落ち着いてしまうだけだし。
「……ねえ、入学式の時の夢の話覚えている?」
「ん?ああ、教室を回る夢?そういえば、最近は夢を見てないよ」
不意に夢の話をし始める。
あれって恋愛の夢だって言ってたよね?まあ、所詮は夢は夢。恋愛のれの字もなかった。
「あれってさ。もしかしたら、正夢かなって」
「はぁ?」
よくよく聞けば夢に出てきた花とモノがリアルすぎるという。
外は春、桜が咲いていたということは4月、入学式の日付も4月1日、クラスの席順が書かれていた一覧も本当になる。
「それに短冊の書き方って『すきな子にあえますように』って書いてあったしょ?それってさ小学生が書いたみたいな感じじゃなかった?」
「ちょっと、待って怖い」
なんだか友だちが怖い。いや、語り方が怖いし内容も怖い。
「——————ねぇ、何の話をしているの?」
不意に声が聞こえる。
びくっと肩を震わして横を見るときょとんとした顔で首を傾げている宍戸君がいた。
「あー、別に大したことないよ」
「う、うん。ただの夢の話だし」
「……夢?」
「う、うん、そう!!ただの夢がちょっとホラゲーみたいで怖かったって話だけ」
ふーんとなんだか含みがあるように言う彼。気にしすぎか?
その放課後、私はいつものように委員会活動で図書室の当番をしていた。
もう一人の担当の子は部活があるからと任されたので私、一人だ。
返却されていた本を元に戻す作業をしている中、ふいに友だちの話を思い出した。
確かによくよく考えてみると怖いし、リアルすぎた。
そして、花に関してももしかしたら何か意味があるのかな。
図書室には誰も来ないし、調べても問題ないだろう。
友だちが言っていた四葉のクローバーの意味は確か『わたしのものになって』、『幸福』だったか。
花言葉だっけ?確かその本はこの辺にあったな。
そして目的の本が見つかり夢に出てきた花を思い出しながら調べていく。
まず最初の花は紫のアネモネは『あなたを信じて待つ』
次のセンニチコウは『色褪せぬ恋』、『不朽』
3番目はペンタスは『希望がかなう』、『願い事』
4番目はマネッチアは…。
「『たくさん話ししましょう』って言ってもそんなにお話ししてないよね。俺たち」