【世界一美味しいケーキを家族と食べたい】その3
唇を噛み締める姿が未練だった。
「はぁああ~ぁあ………」
「………………あんのさー」
粉雪が舞うコメット国の上空を一台のソリが切り裂くように飛ぶ。僕の盛大な溜め息が静寂を破ると、ソリを運ぶシャープが頭上で不満そうに言った。時刻は夜の11時を回ったところで、本日2つ目の仕事を終えたばかりだった。
「そん溜め息やめてくんね?やる気削がれんよ」
「お前はいつもやる気ないだろ」
「お嬢てば、そんなにあのガキと遊びたかったん?初めてん友達だもんなー」
「はぁ!?そんなんじゃないから!ターニャは別に、と、友達なんかじゃないんだからね!」
何気無く言うシャープに慌てて反論する。確かに前世では友達なんて1人もいなかったし、聖サンタクロースの娘として生まれた今世でも、周りには何百歳も年上の従者ばかりで、同世代の友達はいなかった。だから同い年のターニャと意気投合したことに多少は心が踊った。だからって別れを寂しがるほど子供じゃないぞ!
「その通りですよ、ベファーナお嬢様。人間への感情移入など無用です。この上なく無駄で、仕事に差し支えます」
「お前は人間に冷たすぎんだよ。もうちょい優しくしてやれ」
僕の隣で本を読んでいたクランプスが顔をあげた(表紙には『おバカな人間の対処法100選・これでアナタも支配上手!上級編』と書いてあった。見なかったことにした』)。仕事を第一に考えるクランプスは一見親切そうに見えるが、人間とは一線を引いて接している。大抵の悪魔は人間を見下す傾向があるから、きっとクランプスも心のなかでは羽虫程度の認識ないのだろう。僕の周りをブンブン飛び回って気を散らす羽虫は、仕事の邪魔になるから早めに駆除しなければと思っている可能性は高い。笑顔で実力行使するクランプスが安易に想像出来た。恐ろしくて考えるのを止めた。
「あんれ?」
「何、どしたの?」
コメット国の高級住宅街近辺の上空に差し掛かった時、シャープが呟いた。クランプスも何かに気付いたようで下方を見つめている。ソリから身を乗り出すと、ちょうど真下にアイゼンバーグの屋敷があった。やはり屋敷の大きさが他の家屋とは桁違いだ。さすが金持ち。ぼんやり眺めていると数ある部屋のひとつに人影が見えた。目を凝らすと、それがターニャであることに気付く。広い居間に独りぼっちの小さな女主人。その背後には、手付かずのクリスマスケーキが置いてある。
「あ、ケーキ………」
「召し上がっていないのですね」
「つーか1人じゃん。親まだ帰ってないんかねー」
暢気な従者達の言葉に眉を顰める。心寂しげなターニャ・アイゼンバーグの姿。放ったらかしの手作りケーキ。人気のない大き過ぎる屋敷。嫌な予感に心がざわつく。
唇を噛み締める姿が未練だった。
「………シャープ、僕を屋敷の前で降ろせ」
「ベファーナお嬢様、寄り道なさるつもりですか?」
「違うよ」
クランプスが顔を顰める。僕がターニャに特別な思い入れがあると思っているのか、咎めるような口調だった。
勘違いしてもらっては困る。
僕だって社会人の端くれだ。家業の手伝いとはいえ、仕事を任されたからにはきちんと働く。一時的な感情に流されて次の仕事に支障をきたすようなことはしない。
これは同情でも、私情でもない。
例えば、気になって確認したら大事なプレゼンの資料に抜け漏れがあるのを発見した時のような。何となく引っ掛かりを感じてデータを見直したら数字の入力ミスが発覚した時のような。小さな失敗が後々に大きな損害を出すような感覚。
つまり、社畜の直感というやつだ。
「まだやり残した仕事がある気がしてね」
「ターニャ、お前1人で何してんの?」
「ベファーナ様!」
僕達の2度目の訪問を、小さな女主人は笑顔で迎えた。駆け寄ってきたターニャは安心したように息をついた。両手を組んで、まるで神に祈っているようにも見える。
「やはり戻って来てくださると思っていました!私の願い事を叶えてくださるって!」
「はあ?願い事はもう叶えた、ろ………」
目にうっすら涙が浮かべるターニャの言葉に違和感を覚えた。
クランプスとシャープも思うところがあるようで、静かに僕を見つめた。従者達の視線に促されるように無言で羊皮紙を取り出す。良い子のお願い事リストの、ターニャ・アイゼンバーグの項目に目を通す。彼女の願いは至ってシンプルだ。
【世界一美味しいケーキを家族と食べたい】
しかし忘れてはならない。
サンタクロースに寄せられる良い子のお願い事は、自分のちからでは叶えることが出来ないものばかり。つまりターニャ・アイゼンバーグの簡単な願望はその実、サンタクロースの御業に頼る他ない、叶えるのが困難なものというわけで。
「………ちょっと待て」
冷や汗が頬を伝った。
僕の顔は、着ているワンピースよりも真っ青だったに違いない。
資産家のアイゼンバーグ夫妻は多忙な身の上だ。毎日商談のために世界各地を飛び回っている。「ごめんね、パパとママはお仕事だから」を免罪符代わりにして、屋敷のことは小さな女主人に任せきり。帰りたくても帰れない日が続いていた。
しかし今日はクリスマス。
大切な人と過ごし、絶対的存在である聖人達の誕生を祝う聖日。アイゼンバーグ夫妻は可愛い一人娘とクリスマスを過ごすために仕事を切り上げ、なんとしてもコメット国に帰ってくる予定だった。去年も、一昨年も、急な仕事のせいで帰れなかったのだ。数日後、唇を尖らせるターニャに謝ったことを夫妻はよく覚えている。お詫びにと豪華な食事やケーキを用意しても愛娘の表情は暗いままだった。だから今年こそは!と意気込んでいた。愛娘へのクリスマスプレゼントもたくさん用意していたのだ。
しかし、そこで悲劇が起こる。
クリスマスの3日前、訪問した国で記録的な大雪に見舞われたのだ。そのせいで馬車を走らせることが出来ず、夫妻は帰路に着けなくなった。
憐れなターニャ・アイゼンバーグ。
大きな屋敷で独りぼっちのお留守番。富も権力もあるのに、「ただいま」と抱き締めてくれる両親のぬくもりだけがそこに無い。お父様とお母様に会いたい。大好きなケーキを一緒に食べたい。けれど自分のちからではどうにもならない。だからターニャはサンタクロースに願ったのだ。
「世界一美味しいケーキを家族と食べたい」
「それを先に言えよ!普通にケーキ作って終わりだと思ったじゃん!」
ターニャの話を聞き終えた直後、堪らず叫んだ僕に、シャープとクランプスは呆れ顔をした。
「いんやー、今回は依頼人の真意を汲み取れなんだお嬢の落ち度じゃんね?」
「確かにお願い事の確認もしてませんでしたね。此方の不手際です、ベファーナお嬢様」
「はい逆ギレでした!理不尽でした!すんませんっした!!」
「しかも依頼人差し置いてケーキ作りちょー楽しんでたじゃんね。嫌がってたわりにはノリノリでさー」
「お願い事を勝手に解釈して、勝手に厨房を使用して、勝手に菓子を製造して、自分が楽しんだら颯爽と立ち去る。いくらサンタクロースといえど勝手が過ぎますよ」
「だから謝ってんだろ!?それ以上言うのは止めて!僕のライフはもうゼロだよ!!」
「自由気儘かよー。まるでマローズ様じゃんねー」
「勝手気儘ですね。まさにマローズ様のようです」
「あの暴君と同列扱いはマジで止めろ」
耳が痛い。ついでに心も痛い。言葉のナイフで滅多刺しだ。後ろから飛んでくる野次から逃れるようにテーブルに突っ伏した。
向い側に座るターニャが心配そうに僕を見つめる。出された紅茶はすっかり冷めてしまった。
「どうしよ………!どうする僕………!?」
現在の時刻は午後11時を半分過ぎた頃。
ベファーナの両親が滞在している国は、コメット国から反対の位置にある。日本とブラジルぐらいの距離だ。飛行機なら30時間はかかる場所にいる人間を、あと30分でどうにかして連れて来なければならない。でなければクリスマスが終わってしまう。けれど、シャープが全速力でひとっ飛びしても5時間は必要だ。結論は考えるまでもなかった。無理、これは詰んだな。
頭を抱えて嘆く僕の隣で、シャープが同情するように頷く。他人事だと思っているのだろう。軽い調子でバシバシと肩を叩かれた。
「お嬢どんまーい。心配よな、リスト消化せんとマローズ様にぶっ殺されんもんね。あん人、仕事だけはちゃんとするし」
「バカ野郎!そんなことはどうでもいいんだよ!!」
「べはぁッ!!?」
利己的な考え方の従者の手を振り払い、その勢いで形のいい顎にアッパーを食らわせる。殴った拍子にバカでかい丸眼鏡がぶっ飛んだ。へなへなと崩れ落ちたシャープを見下ろす。
「ええ………?急にキレるとか情緒どうなってん?」
「いいかシャープ、僕はサンタクロースの仕事が嫌いだ、大嫌いだ!でもどんなに嫌いでも一度引き受けた仕事はきちんとやり遂げる!出来ませんでしたなんて泣き言は言いたくない!僕の感情はともかく、責任を全うしたい、それだけなんだ!!やると決めたからには、僕はやるぞ!男に二言はないんだからな!!」
「お嬢………」
シャープの胸ぐらを掴んで引き寄せて、鼻と鼻がくっつきそうな距離まで詰める。僕の剣幕に気圧されたのか、シャープの目玉が真ん丸になった。
「?ベファーナお嬢様は女の子ですよ。一言も二言もないでしょうに」
「クランプス、お前………台無し感がすごい………」
僕の背後に控えていたクランプスが冷静に訂正した。そういう意味じゃない。この従者は空気を読まなくて困る。偉そうに啖呵を切ったのが恥ずかしくなった。
「女の子と違っ………わなくない、けど!僕が言いたいのはまだ出来ることはあるってこと!」
「………おーよ。無茶を通してこそサンタクロース様々だもんな」
シャープの細い体を力いっぱい揺さぶる。赤べこのように首を振りながらシャープが同意した。僕の必死な訴えは従者の心を動かしたらしい。
「ってわけで、何かいい案を考えて!」
「人任せかーい」
「だって解決策が思い付かないんだよ、ちからを貸して!」
パニックになると視野が狭くなり、思考が単調になる。僕の悪いところだ。こんな状態で最適解を導き出せる自信がない。この従者は仕事へのやる気は皆無だが、頭の回転は速い。縋るようにもう一度シャープを引き寄せると、厄介事に巻き込まれると察したシャープが顰め面をする。応援はするが自分は参加したくないと目が語っていた。
「えーめんど、ごぱぁあっ!?」
突如、シャープが消えた。目の前を茶と黒の板が通り過ぎ、下方でグチャリと何かが潰れる音がした。
それは靴底だった。
2色のトーンで仕上げたレザーソール。ウエスト部分のみが黒く、エレガントでお洒落な見た目の高級靴。それがクランプスの履いている革靴だと気付いたのは、僕の手から離れたシャープが大理石の床に減り込んでいたからだ。畑に生えた人参のように垂直に突き刺さり、辛うじて見えている頭の天辺からは血が吹き出ている。まるで噴水みたいだなぁ。
「ぎゃー!?シャープがスプラッタ!!」
「仔細ありません、ベファーナお嬢様」
「問題しかないよ!?人ん家に悪魔を埋めるな!」
「シャープ、お前というやつは………主人に口答えするとは何事ですか。殴りますよ」
「殴るより惨いことになってるけど」
クランプスの踵落としで地面に減り込んだシャープは白目を剥いて、ピクリともしない。新手の拷問だろうか。向い側でシャープが植えられるさまを一部始終見ていたターニャは短く悲鳴をあげると、そのまま失神した。メイド長が慌てて駆け寄り、小さな女主人を支えた。
「サンタクロースの手足となって憂いを払い、及ばずながら助力するのが従者である我ら眷属悪魔の使命。御命令とあらば、全力で応えなさい」
「その従者を使い物にならなくしたのお前だけどね」
「監視役のつもりで随伴しましたが………仕方ありません。サンタクロースの顔に泥を塗るわけにはいきませんので、今回は私が御手伝い致しましょう」
「えっ!マジで!?」
クランプスの申し出に思わず飛び上がる。願ってもないことだ。さすがクランプス。グーグル先生の何百倍も頼りになる従者。クランプスの知恵があれば百人力だ。
「でもどうするの?」
「簡単なことです。間に合わせれば良いのです」
「いやでも時間が………」
今に飾られた柱時計をチラリと見る。あと20分で今日が終わってしまうことを教えてくれた。焦る僕の心を見透かしたように、クランプスは優しく微笑んだ。
「まだクリスマスは終わっていませんよ?ベファーナお嬢様」
客室の窓から見える景色は、一面の銀世界だった。けれど、外を眺めるアイゼンバーグ夫婦の目には吹雪く空はこれっぽっちも映っていない。コメット国に残してきた愛娘のことで頭がいっぱいで、他に何も考えられないのだ。そばに置いてある大きなテディベアもどこか寂しげに見える。せっかく用意したクリスマスプレゼントも渡せなければ意味がない。悪天候のせいで通信が乱れて連絡が取れず、画面越しに顔を見るどころか声を聞くことすら叶わなかった。
「可愛いターニャに会いたいわ………」
「僕もだよ………」
室内に哀愁が漂う。悲しみを分かち合うようにアイゼンバーグ夫婦が手を取り合った。壁時計は11時41分を示していた。
その時。
「何かしら………?」
「どうかしたのかい?」
「ねぇあなた、何か聞こえない?」
「………言われてみれば。一体何の音だ?」
最初は風を切り裂くような音だった。次いで辺り一面に轟音が響き、滞在している館から少し離れた場所に積もった雪の山が、爆発したように四方に飛び散った。その衝撃で館は大きく揺れ、夫婦は椅子から転げ落ちた。慌てて窓の外を覗くと、平地になった雪の上に降り立った巨大な生き物を見つけた。巨大な角と鋭い爪、闇より黒い毛艶の巨大な山羊の姿に、アイゼンバーグ夫婦は恐れ戦いた。漆黒の山羊が一歩進むごとに影が揺らぎ、館の前に辿り着く頃には美しい青年の姿に為っていた。青年は運んできたソリを玄関先に付けると、乗っていた主人を振り返り、手を差し伸べた。
ソリから降り立ったのは小柄な少女で、青いナイトキャップとワンピースを身に纏っている。その佳麗な貌は肖像画で何度も見ているものだった。
「あなた、あの御方って………!」
「まさか………!何故此処に!?」
騒めく夫婦の姿を窓越しに見つけると、少女はにこりと笑った。
「………………速すぎて酔った」
僕の胃は、すでに限界を迎えようとしている。
クランプスの解決案は実に簡単だった。
僕を乗せたソリをクランプスが運び、アイゼンバーグ夫婦をターニャのもとへと送り届ける。しかも1分で。光速の脚を持つクランプスだからこそ出来る至難の業だ。あまりにも速すぎてソリに乗っている間、風圧のせいで息も出来なかった。一瞬で内臓をシャッフルされた気分だ。
「本気を出せば数十秒で到着しますが………ソリのなかが吐瀉物まみれになっては困りますのでやめましょう」
僕の乗り物酔いを考慮して多少は減速したようだが、速すぎることに変わりはなく。結局ソリ酔いしてしまった。アイゼンバーグ夫婦が見ている手前、辛うじて笑顔を崩さずに言えば、僕の手を掴んでいたクランプスが黙殺した。
「吐きたい………」
「お止めなさい」
「生理現象だよ………」
「人間の前で醜態を晒すなど言語道断。サンタクロースとしての尊厳を保ちたければ我慢なさい」
「幻滅されてもいい………おえっ」
「させません」
ポーチにしゃがみ込み、積もった雪の上に顔を突っ込む。さぁ吐くぞ!と口を大きく開くが、すかさずクランプスの手に口を塞がれて出かかった胃液を飲み込む羽目になった。ツンとした不快感が喉を刺激する。
「ゲロ飲んじゃったじゃねーか………!」
「ぐったりしている暇はありませんよ。アイゼンバーグ夫妻に説明して、直ぐにコメット国へ戻らなければならないのですから」
「少しは主人に優しくしろよ!何なの?クネヒト属の悪魔って気遣いの心がない種族なの?」
「さて、手早く済ませましょう」
「聞けよ」
立ち上がれない僕の首根っこをクランプスがむんずと掴む。従者に引き摺られるサンタクロースに、果たして尊厳はあるのだろうか。乗り物酔いでグロッキーになっている姿を晒す方が幾分かましな気がするけれど、口論する気力は今の僕になかった。
「時間が惜しいので戻りは本気で跳びます」
「僕を殺す気か」
ターニャ・アイゼンバーグは流れる涙を止める術を知らなかった。昂る感情は抑えられず、何度拭っても溢れる涙は頬を濡らした。
「そんなに擦ると赤くなってしまうよ」
目元をごしごしと力強く擦るターニャの手を優しく掴んで止めたのは、彼女よりも二回りも大きな父親の掌だった。胸ポケットから取り出したハンカチで娘の涙を拭いてやり、小さな頭を愛おしげに撫でた。
「ただいま、ターニャ。会いたかったわ」
娘に負けず劣らず涙を流す母親が、小さな体をそっと抱き寄せた。もう離すものかというように力いっぱい抱き締めるものだから、ターニャは止まりかけた嬉し涙を再び流した。
「このケーキは私が作ったんですの!」
「まあ!すごいわターニャ」
「お父様とお母様に世界一美味しいケーキを食べてほしくて、一生懸命作りましたの!ベファーナ様も手伝ってくださって、とっても楽しかったんですの!」
「うん、すごく美味しいよ。ターニャのケーキは世界一だな」
居間の柱時計が夜の11時45分を示す頃。切り分けられたクリスマスケーキを指差したターニャが胸を張る。娘の誇らしげな表情にアイゼンバーグ夫婦は顔を綻ばせた。
「良かったな、ターニャ」
屋敷から遠ざかってゆくソリのなか、アイゼンバーグ親子のほのぼのとした光景に自然と笑みがこぼれた。ソリの背凭れから乗り出していた体を元に戻すと、ふと視線を感じて隣を見る。穴があくほど凝視するクランプスと目があった。顔に何かついているのだろうか。きょとんとする僕に、クランプスが同情するように目を細めた。あ、なんか嫌な予感がする。思わず顰め面をすると、シャープが面白がるように頭上で笑った。
「今度、ニコラウス様に手料理を振る舞って差し上げては如何です?」
「いや別に羨ましくて見てたわけじゃないから」
「恥ずかしがらんでも大丈夫だって。お嬢の作った物ならどんな下手物でも、ニコラウス様は泣いて喜んでくれんよ」
「だから違うってば!」