【世界一美味しいケーキを家族と食べたい】その2
惨劇は厨房で起こった。
それは作業台のすぐそばに横たわっていた。
指のない左手。五指がへし折れた右手。血の海に伏して微動だにしないシャープ。赤く塗れた背中には包丁が突き刺さっている。
「無理………私には、無理ですわ………」
可哀想なくらい震えるターニャは、恐怖から歯をカチカチと鳴らしている。小さなからだをさらに縮ませて、食器棚と食器棚の間に隠れていた。
「シャープ………お前の死は、決して無駄にしない………!」
転がる従者のために、涙を流す暇はない。深呼吸して乱れた心を落ち着かせた。ターニャはもう立てないだろう、完全に心が折れている。ならば選択肢はひとつ。
逃げちゃだめだ、
逃げちゃだめだ。
逃げちゃだめだ!
「ッ僕がやるよ!」
踏ん張るようにして立ち上がり、残忍酷薄な男を正面から見据える。ナイフを片手に持つクランプスが僕を見下ろした。その眼光は冷たい。
「お嬢様、宜しいのですね?」
「覚悟はできてる………!」
力強く頷くと、クランプスが悪悪しい笑みを浮かべた。差し出された両手には、果物ナイフと林檎が乗っていた。
それは数時間前に遡る。
「あのさ、知ってるんだよね………………?」
視界が悪かった。厨房内に白い粒子が煙のように立ち込めている。ターニャ・アイゼンバーグが小麦粉の入った紙袋をひっくり返したせいだった。作業台を苛立ち任せに叩くと、隣にいたターニャが噎せて咳き込んだ。割れて中身が散乱する卵。零れて川を作る牛乳。用意された材料はすべて最高級品質のものばかり。しかしそれが今、ゴミになろうとしている。
「ケーキの作り方、知ってるんだよね?」
恐る恐る訊いた僕にターニャはきょとんとした。
「さっぱりですわ」
両手で顔を覆う。
絶望した。
「なんでだよ!女の子なのに!女子って普通、お菓子作りとか得意なんじゃないの!?」
僕の絶叫を聞いて、クランプスとシャープが首を横に振った。
「ベファーナお嬢様、その偏見まみれの発言は少々不適切かと」
「しかもブーメラン的なかんじで、お嬢にも刺さるやつなー」
「それに厨房に立ったことがないと仰っていました。ならば手順を知らないのも
納得かと」
「食べ専のお嬢には言われたくねーわな」
「はいセクハラ案件でした!言い過ぎました!すんませんっした!」
ここぞとばかりに浴びせられる正論にぐうの音も出ない。
「もしかしてベファーナ様も作り方をご存知ないのですか?全知全能のサンタクロース様なのに?」
「……………………………………………知らないです」
「まあ!大変ですわ!どうしましょう?」
「……………………………………どうしましょうね」
ターニャの言葉のナイフがぐさぐさと刺さる。くそう、この生意気なクソガキめ。悪気なくガンガン殴ってくるスタイルか。空っぽの紙袋をシンク内に捨てたターニャが不安げに顔を曇らせた。言っとくけどシンクはごみ箱じゃないからな。ていうかお前知らないくせに手当たり次第に食材ぶちまけるんじゃないよ。もったいないだろうが。金持ちのガキンチョには、無駄にするのは生産者に申し訳ないという感覚がないのだろうけれど。
「クックパッドは!?楽天レシピは!?くっそ………パソコンがあればグーグル先生が作り方を教えてくれるのに………!」
「誰それ?まぁた空想んなかの友達?」
「今回はヤフーさんではないのですね」
時折僕がこの世界に存在しない単語を口にするたび、従者達は憐れむような目を向けてくる。大方サンタクロースの仕事が嫌すぎて現実逃避していると思っているのだろう。
「いっそのこと魔法でパソコンを作って………いやダメだ、そもそもインターネットが存在しないから意味ねぇわ………」
「ベファーナお嬢様、空想に耽るのも程々に」
「ほっとけ!」
万策尽きて項垂れる僕を励ますようにクランプスが肩を叩いた。同情するなら無線LANをくれ。
どれだけ人々にサンタクロース様万歳と崇められようが、魔法が使える聖女様万歳と奉られようが、僕ひとりだけのちからではどうにもならない状況に陥ると、自分がいかに無力かを思い知らされる。魔法が使えたって役に立たなければ意味がないのだ。そして、検索エンジンにワードを入力するだけで知識を与える文明の利器に、どれだけ依存していたのか痛感する。
「あの、サンタクロース様………」
悔しがる僕の背中におずおずと声が掛かる。アイゼンバーグ家のメイド長だった。あ、本物のメイドさん。自然と背筋が伸びた。
「僭越ながら私共がお手伝い致しましょうか?」
さすが出来る女は違う。空気が読める。願ってもない申し出に心が軽くなった。
「マジで!?助かる、」
「ダメよ!ベファーナ様と作るのは私なの、お前達は下がってなさい!」
「申し訳ありません、ターニャ様」
小さな女主人が間髪を入れずに噛み付く。メイド長は深々と頭を下げると、他の給仕係を引き連れて厨房を出ていった。垂らされた蜘蛛の糸が、一瞬にして千切れて地に落ちた感覚だ。余計な事をしてくれやがったターニャは、誉めてくれと言わんばかりに鼻息を荒くして僕を見た。
「ベファーナ様!お邪魔虫は排除しましたわ!さぁ、2人で頑張りましょう!」
「こ、この………ッこの、小娘が!!」
「同い年ですよ、ベファーナお嬢様」
ショックで頭が回らない。僕が吐いた精一杯の悪態に、クランプスが呆れ顔をした。
ターニャは好奇心に手足が生えたような子供だ。何でも自分でやりたがる。たとえば、心配した親が手を出そうとすると「ママは見てて!私がやるの!」と猛烈に怒り出すような。何事も経験させることが子供の成長に繋がるし、ある程度自由にさせる事は大いに賛成だ。しかし今回はそうもいかない。僕もターニャもケーキの調理手順がちっとも分からないのだを。知識のない者が何人集まったところで何も生まれない。経験どころの話ではない。つまり今の僕らに必要なのは熱意や意欲ではなく、グーグル先生の代わりになる指導者なのだ。
「宜しければ、私が御手伝いしましょうか?」
途方に暮れる僕達に助け船を出したのはクランプスだった。先ほど物凄い剣幕で給仕係達を追い出したのが嘘のように、ターニャはクランプスの申し出を二つ返事で受けた。メイドが手を貸すのは許せないが、サンタクロースの従者に教えを乞うのは許容範囲らしい。
斯くして、クランプスお兄さんの楽しいクッキング教室が開講されたのだった。
「レディ、まずはボールに卵黄を溶きほぐして下さい。砂糖の半量と牛乳を加えたらよく混ぜ合わせて。嗚呼ベファーナお嬢様、生クリームはツノが立つまで泡立てて下さい。生地に塗るのでもう少し堅く………腕が疲れた?四の五の言わずにやりなさい。それからシャープ、次に果物をつまみ食いしたら指をへし折りますので。それか、引き千切って蝋燭の代わりにスポンジに挿します」
「………そんなグロいケーキ、誰も食いたくねぇわ」
「そこ、無駄口を叩く暇があるなら集中なさい」
「イエッサー!」
黒いハーフエプロンを腰に巻いたクランプスがてきぱきと指示を出す。少しでも手を抜こうとすると、叱咤が飛んでくるので気が抜けない。必死に泡立て器を動かす僕の隣では、ターニャが震える手で牛乳をボールに注いでいた。完璧主義のクランプスの前で失敗してみろ、指が蝋燭に早変わりしてしまうぞ。緊張感と静寂に包まれた厨房内では、余計なお喋りすら許されないのだ。
「クランプス先生!発言の許可を!」
「生クリームは?」
「言われた通りの堅さに仕上げました!」
「よろしい。では特別に許可します。どうぞ、ベファーナお嬢様」
僕が持っていたボールのなかを覗いたクランプスが満足げに頷いた。ボールを受け取ると、さりげなく小麦粉とこし器を押し付けられた。ダマにならないようにふるっておくらしい。
「そもそもさ、クランプスがケーキの作り方を知ってるのが謎なんだけど。女子力高くね?スイーツ男子ってやつ?」
この従者は要領が良く、初めてのことでも器用に熟す。その器用さを抜きにしても、その手際の良さからクランプスが菓子を作り慣れていることが分かった。僕の世話役だった時は厨房に出入りしているところを見たこともなかったのに。実は甘党で、夜な夜なこっそり作っていたのだろうか。
「いえ、私は甘味の類いは摂取しません」
「そのわりには随分と詳しいよな」
「マローズ様が幼少の頃、よく作っていましたので」
クランプスがオーブンの温度を調整しながら答えた。まさか長兄の名前が出てくるとは予想だにせず、驚いて思わず小麦粉をふるう手を止めそうになった。あの暴君が甘党?意外すぎるんですけど。応援していた強面の格闘家が、実はスイーツ好きだったと暴露した時以上の衝撃だ。
「マジで?全然ギャップ萌えしない事実だな………」
「マローズ様は狂暴な内面に似合わず甘い物がお好きですよ。あの方は小腹が空くとすぐ暴れて大変でしたが、単純なので菓子を与えておけば大人しくなりますから」
「本人いないとボロクソ言うじゃん」
散々な言われようだ。全面的に長兄に非があるだろうから、仕方ないのだが。
腹が減ったと大暴れして城内のあちこちを破壊する長兄の姿が容易に想像できる。マローズは兄弟いちの暴君だ。被害者の僕がいうのだから間違いないので、世話役だったクランプスは嘸かし手を焼いただろう。それなのに良い思い出のように懐かしんで笑うのだから大したものだ。僕だったら苦労した日々を思い出すだけで胃に穴が開いちゃいそう。さすがクランプス。伊達にノエル兄弟の世話役を何百年も担っていただけはある。200歳を越える暴君マローズですら、未だにちょっとヤンチャな坊っちゃん程度の認識なのだろう。
「あっ!」
生地を混ぜることに没頭していたターニャが突然声を上げた。何事だと隣を見れば、ターニャが厨房の入口付近の食材置き場を指差していて、シャープがかごに入った苺をつまみ食いしているところだった。
「………お前何してんの?」
「………………えーとぉ………」
僕とシャープの目が合う。数秒見つめ合った後、無言で回れ右したシャープは、脱兎の如く入口へと走り出した。かごから盗んだブルーベリーをポケットに突っ込むのを忘れずに。
「逃がしません」
微笑を浮かべたままクランプスが包丁を放つと、逃げ出すシャープの背中に包丁が深々と刺さった。つまみ食い犯の方を少しも見ずに命中させるとは流石である。
「ぎゃんっ」
シャープの断末魔の叫びが厨房に響く。
「ひぃいいっ!!?」
厨房の入口を遮るように倒れたシャープを見て、ターニャが悲鳴をあげた。腰が抜けたのか、泡立て器を持ったままへなへなと座り込んだ。
「そんな!シャープ!!」
瞬く間に殺人現場と化した厨房に僕の悲痛な声が響いた。
「お前ッ………そんなとこで寝てたら邪魔になるだろ、早く退け」
「心配せんのかーい………お嬢の薄情もん」
「自業自得じゃん」
「果実は好物なんよ………!見ると自制心が利かんなるんよ………!」
「ヤバい薬の禁断症状みたく言うな」
何事もなかったように会話する僕達にターニャは驚愕に満ちた顔をした。未知の生き物を発見したかのような眼差しをシャープに向けた。
「い、生きてますの………!?」
「僕の従者は悪魔だから。この程度で死にゃしないさ」
「死にはしませんが、痛覚はありますよ」
クランプスは倒れたままのシャープの元へと行くと、右手を持ち上げて5本の指をまとめてへし折った。まさに有言実行。情け容赦もねぇな。涼しい顔してやる事がえげつない。
トラウマ確定の光景に、手を翳してターニャの視界を遮る。子供には少し刺激が強いだろう。のたうち回るシャープは、あまりの激痛に声も出ないらしい。
最初からそういう形だったかのように、五指が根元から綺麗に反り返っている。爪が手首にくっついていて、一昔前の折り畳み式の携帯みたいだと思った。
「次は左の手指を引き千切りますので」
ドスの利いた声に背筋が凍る。
何故か僕まで怒られた気になった。
しかし、このシャープという従者は、反省することをまるで知らない悪魔なので。
飾り切り用に置いてあった林檎を片っ端から頬張っていたシャープの左手が切断されたのは、数分後のことだった。
「食い過ぎだよバカラス!もう林檎1個しか残ってないじゃん!」
「困りました。余分にないので、失敗するとやり直せませんね」
「もし失敗したらどうなりますの………?」
ターニャが震える声で聞いた。クランプス先生のスパルタ指導によって、
すっかり恐怖意識を抱いているようだ。
「これ以上飾りが減るとバランスが悪くなりますし………代わりに失敗した者の指でも飾りましょうか?」
ターニャの小さな指を手に取ったクランプスが微笑を浮かべた。掬うようにターニャの手を取り指先に口付けるさまはおとぎ話に出てくる王子様みたいなのに、発言が極悪人寄りなのでちっともときめかない。顔を真っ青にしたターニャが助けを求めるように僕を見た。
いくら毛嫌いする人種だからといって、ここで見捨てるほど僕は性根が腐っていない。
クランプスとターニャの間に割って入ると、僕の背中に隠れるようにターニャは身を屈めた。
「ベ、ベファーナ様!私、貴女の従者に殺されてしまいます………!」
「おい、スプラッタジョークはやめろ。ガキを怖がらせんな」
「これは失礼しました。場を和ませようと思ったのですが」
「お前の冗談はいちいちグロいんだよ」
少しズレたクランプスの感性にため息を吐く。
「あのさぁああ!?」
僕のため息を掻き消すように、鼓膜を劈く絶叫が足元から聞こえた。床に腹這いになったシャープの声だった。逃げれないようにとクランプスに背中を踏まれているので身動き出来ないようだ。なんとか首だけで僕達を見上げたシャープの目には涙が溜まっている。これから自分の身に起こる惨事を十分理解しているとみた。シャープの左手を掴んだクランプスが、道端に転がる塵を見るような目をした。
「何ですか?このつまみ食い野郎」
「お喋りんついでに指もぎ取るんやめてくんない!?」
「お前如きが私に指図するな」
「ごめんってばぁああ!痛でぇええ!!」
「お仕置きは必要ですから」
ブチブチと肉が千切れる音がした。教育上よろしくないので、慌ててターニャの耳を塞ぐ。母指側から順番に引き千切られてゆく間、シャープは逃げ出そうと身を捻り暴れていたが、小指に差し掛かる頃にはうんともすんとも言わなくなった。あまりの激痛に気絶したようだ。
「さすがに不衛生なので、蝋燭にするのは止めましょう」
「だからって焚付け代わりにすんな」
クランプスが千切った指を竈に放り込む。瞬く間に燃えた指からどす黒い煙が漂い、肉の焦げたにおいが鼻をつく。明らかに環境を汚染する煙だ。地球に優しくないものを燃やすんじゃない。
「ところで」
血で汚れた手を布巾で拭き取りながらクランプスが言った。僕とターニャを見比べると、作業台に置いてあった果物ナイフを持った。
「もう失敗の許されない林檎の飾り切りですが………………ベファーナお嬢様とレディ、どちらが挑戦されます?」
「これさ………………結構いいんじゃない?」
漂う甘いにおい。熱気がこもる厨房。頬を伝う汗を拭うと、指についていた生クリームが鼻先に付着した。すかさずクランプスが布巾で拭き取ってくれた。でもそれ、さっき血を拭いたやつじゃね?
「ッはい!とっても良いと思いますわ!」
両手を生クリームでべたべたに汚したターニャが何度も頷いた。
何段にも重ねられて歪んだフワフワのスポンジ。塗りたくられた純白の生クリーム。菓子製造初心者の2人によって切り刻まれた
不揃いな大きさの果物の数々。見た目は不恰好だけれど、ようやく完成したケーキを前に達成感が胸を占める。
「初めて作ったにしては、いい出来じゃない!?」
「すごいですわ………!私、こんな素敵なケーキを自分で作ったなんて、今でも信じられません!」
声を弾ませるターニャとハイタッチする。この半日で僕はすっかりターニャ・アイゼンバーグに絆されていた。最初は「クソガキの為にケーキ作りとかやなこった!ホットケーキ焼いて重ねて出してやらぁ!」と大人げないことを考えていたが、やってみるとお菓子作りは中々奥が深く、つい夢中になってしまった。しかも、ド素人同士がウェディングケーキレベルの大きなクリスマスケーキを作るという偉業を成し遂げたのだ。妙な仲間意識が芽生えるのも仕方ないだろう。手を叩いた拍子に生クリームが四方に飛び散ったが、興奮する僕とターニャにとっては些細な事だ。
「俺も信じらんね………クランプスさんてばマジで指へし折んだもん。千切った指は燃やして捨てるし………」
「警告はしました。それにあの程度の怪我、すぐに治るでしょうに」
「それでも痛いもんは痛いんよ………」
不貞腐れたようにシャープが言った。両手指はすっかり元に戻っているが、余程痛かったのだろう。新しく生えてきた左手指の動作を確認しながら、隣にいるクランプスを恨みがましく見上げた。どうでもよさそうに鼻で嗤ったクランプスに一蹴されていた。
「親御さんが帰ってきたら驚かせてやりな、このケーキは私が作ったんだよ!ってさ」
我が子が丹精込めて作ったクリスマスケーキに勝るもの無し。これこそ世界一美味しいケーキと言える。形は崩壊寸前の廃墟のようだが、クランプス監修なので味はばっちり保証付き。大事なのは見た目より、中身。高い金を出して買った既製品より、込められた愛情。家族愛マジでプライスレス。やっぱりクリスマスは家族で祝うべきだよな~、うんうん、恋人と過ごすヤツは地獄に堕ちろ!
「そんじゃ、あとは家族でごゆっくり」
外したエプロンを作業台の上に畳んで置くと、ターニャが目を丸くした。
「えっ!?もう出発されるのですか?」
「レディ、ベファーナお嬢様はご多忙の身。此処での仕事はもう一件入っているのです」
引き止めようとするターニャをクランプスが遮った。豪華な装飾が施された壁時計は16時を示している。
どうせならターニャの両親が驚く顔を見てみたいものだが、次の依頼人が待っているのだ。あまり遅くなっても悪いだろう。それに万人の為に存在するサンタクロースが個人に過干渉するのは御法度。公平を期すためにも願い事を叶えたら、
ソリに乗って颯爽と立ち去るのがセオリーなのだ。
「早く行かないとクリスマスが終わっちゃうからな」
「………そうですか」
独りでの留守番は心細いのだろう。話し相手がいなくなることにターニャはしょんぼりした。振り払うように背を向けると、寂しそうな声が聞こえた。
「私は、ベファーナ様を信じていますわ」